風見鶏 負けに不思議の負けなし 2017/12/10 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の面にある「風見鶏 負けに不思議の負けなし」です。





 いま外相の自民党の河野太郎氏に、かつて友人が尋ねた。「なぜ左寄りの主張をするの」。河野氏は何と答えたか。「そもそも自民党支持者は保守の人が多い。もっと支持を広げるなら、左に伸ばすのは当然でしょ」。河野氏は小選挙区制が導入された1996年衆院選での初出馬から8期連続当選。「選挙に強い議員」として知られる。

 同党の小泉進次郎氏にも似た発言がある。10月の衆院選の選挙戦最終日、地元・神奈川県横須賀市での最後の街頭演説。「1億2千万通りの生き方、価値観がある。多くの人が『自民党は分かってくれる』と思う政党が真の国民政党だ」

 共通するのは「右から左まで、広く国民の支持を得たい」という考え方だ。「タカ派的」「右寄り」ともいわれる安倍晋三総裁(首相)を担ぐ自民党だが、リベラル寄りの議員も多い。国民各層の幅広い支持を得る「包括政党」「国民政党」を目指す政党でもある。

 10月の衆院選で、2人の考え方とは対照的な道を選んだ政党があった。政権選択を掲げた希望の党だ。

 同党の小池百合子代表(当時)は、理念や政策が異なる人物を「排除します」と表明した。合流希望者には、安全保障関連法や憲法改正への賛成を求め、左派やリベラルを拒んだ。自民党より保守に純化した結果、公示前勢力割れの50議席しかとれず、惨敗した。

 希望の党の敗因を「排除の論理が世論の反発を招いた」と分析する声もあったが、政治の理論ではどう映るのだろう。政党の競争や連立を研究する東大教授の加藤淳子氏に聞いてみた。

 「自民党を上回る支持を得て政権を目指すなら、自民党より狭い保守の立場をとる戦略は非現実的」。明快な答えが返ってきた。

 小選挙区制の当選者は1選挙区で1人だけ。加藤氏は「保守の自民党とは異なる位置で、多くの支持を得られる『中道』を含む位置が有利」と話す。理論上は保守で競合するより真ん中辺りの厚い「中道」を挟んで有権者に訴えた方が多くの支持が得やすいとみる。

 希望の党の失速は過去の政党再編からも予見できた、という。「自民党より右寄り」ともいわれた新進党の失敗だ。自民党と競う「保守二大政党」を目指したが、96年衆院選で議席を増やせなかった。翌97年には当時の小沢一郎党首が「保・保連合」に傾斜し、同氏に近い議員との「純化路線」をとって解党した。

 その新進党と対照的だったのは、政権交代前の民主党だ。「中道寄りで、所属議員の立場が左右に広かったことが支持獲得に有利に働いたことは間違いない」と加藤氏は説く。もちろん、立ち位置だけで勝てるわけではない。民進党は民主党と同じような立ち位置だったが党勢は低調だった。

 とはいっても、小選挙区制での選挙は続く。野党が複数に割れて、与党に挑むのは、明らかに悪手だ。元民進党の衆院勢力は、右寄りに希望の党、左寄りに立憲民主党に割れたままだ。しかも、希望の党と立憲民主党の政策の幅は、純化路線の結果、民進党よりも狭い。

 まだ野党再編の機運は乏しい。政策が一致しない政党は確かに骨が折れるからだ。だが政権選択をいくら唱えても選挙に勝てなければ意味はない。

 自民党は小選挙区制導入後の衆院選で7勝1敗。それなりに適応してきた。「真ん中の票を取らないと当選できないよ」。河野氏は党内で話すこともある。

 「負けに不思議の負けなし」といわれる。負けが続く野党はもう一度、小選挙区制での戦い方を見つめ直すべきかもしれない。(政治部次長 佐藤理)



プーチン帝国の行方(下)ロシア、対外強硬策を継続求心力に利用誤算も 2017/12/9 本日の日本経済新聞より

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 「テロリストを完全に壊滅した」。プーチン大統領は6日に大統領選への出馬を表明した直後、シリアに派遣したロシア軍による過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦の勝利を宣言した。米軍はなお数千人のIS勢がシリアやイラクで活動中としている。プーチン氏が大統領選に向けて国民への成果アピールを急いだ可能性がある。

 プーチン政権は「強いロシア」を誇示し、国民の愛国心に訴えて求心力を高めてきた。2014年、ウクライナで親ロ派政権が倒れた政変を機にクリミア半島の武力併合を強行。同国東部にも軍事介入した。「政変は米国の陰謀」と主張し、米国に対抗する姿勢を押し出して支持率を上げた。

 15年にはシリア内戦への介入に踏み切った。IS掃討の口実で、欧米と敵対するアサド政権を支え、反体制勢力への空爆で欧米を圧倒した。ウクライナ侵攻を巡りロシアに制裁を発動した欧米を交渉のテーブルに着かせる狙いもあった。

 誤算も目立つ。シリアではアサド政権の勝利が固まり、ISが衰退するにつれ米などとの取引材料としての効果が薄れた。敵対するイランとサウジアラビアも絡むシリア和平交渉を背負わされる構図だ。ロシア国民のシリア介入への支持は下がり、世論調査では半数が軍事作戦停止を求める。だが「軍撤退のメドは立っていない」(政府筋)

 ウクライナ介入も出口が見えない。同地の親ロ派武装勢力を支援する戦争はすでに4年目に入った。「ロシア人を守る」との口実で侵攻しただけに、介入の成否は政権の求心力に直結する。

 クリミアをロシア領と承認する可能性に言及したトランプ米大統領の対ロ融和策に期待したが、16年の米大統領選への介入が裏目に出た。ロシアとトランプ陣営の共謀疑惑への追及が強まり、制裁解除の望みは消えた。ティラーソン米国務長官は7日「(ウクライナへの)侵略は見逃せない」とロシア非難を強めた。

 一連の対外強硬策はプーチン氏の求心力の源であると同時に、「おびえ」の反映だとの見方がある。ウクライナ政変は「米国の陰謀」と疑わず、米はロシアの「政権転覆」を狙っていると思い込んでいるフシがある。オバマ米政権時代に駐ロシア大使を務めたマクフォール米スタンフォード大教授は「プーチン氏と会う度に米国はどの国の政変にも関与していないと訴えたが固定観念は変わらなかった」と明かす。

 プーチン氏は最近も北朝鮮制裁に否定的な発言を繰り返し、北朝鮮問題を新たな対米カードにすることを画策する。サイバー攻撃やSNSを通じた偽ニュースの拡散など米欧社会の分断工作にも拍車が掛かる。生き残りをかけたプーチン氏の強硬策に欧米は身構える。

 モスクワ支局の古川英治、小川知世が担当しました。



中国ネット遮断日本企業にも「VPN」規制、業務に支障 専用線 に誘導、迫る監視 2017/12/8 本日の日本経済新聞より

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 【広州=中村裕】中国が海外との自由なつながりを保っていたVPN(仮想私設網)の遮断を進めている。これにより、日本や欧米の企業の中国法人で通信トラブルが頻発している。当局の情報監視を容認するか、撤退しかないのか。日本企業は究極の選択を迫られている。

日系大手通信会社の幹部は監視への危機感を訴える

 「これでは仕事にならない」。10月12日、広東省で日系サービス関連企業に勤務する駐在員は朝からいら立っていた。

9月以降頻発

 何をやっても日本との通信ができない。中国駐在の日本企業に聞くと日本のサーバーにアクセスができなくなったり、社内のイントラネットにつながらなかったりするトラブルが続発していた。

 中国政府は今年1月、中国と海外を結ぶVPNを規制する方針を示した。VPNは、インターネットや公衆ネットワークを使って拠点間に仮想的に専用線を引く技術。コストが高い国際専用線の代替として多くの中国駐在企業が使ってきた。

 通信を暗号化して検閲を回避でき、中国のネットユーザーが政府への不満を海外の交流サイト(SNS)に書き込む際にも使われてきた。当局が目を光らせてきたが外国企業が日常業務に使うVPNは取り締まりの対象外。当局は「グローバル企業の運営に影響を与えない」としていた。

 それなのに9月以降、通信遮断のトラブルが表面化した。「中国当局がVPNを次々と使用不能にし、日系企業で頻発する通信トラブルの原因となっている」(日本の通信会社の幹部)。9月は中国のネット規制のターニングポイントだったようだ。米グーグルの検索に続きヤフーの検索も遮断されたのは9月末だ。

 ネット上に残された唯一の通気口ともいえるVPNを遮断するのはなぜか。日本企業のその後の動きから中国当局の狙いが浮き上がってきた。

 広東省深?市。電子部品商社の日本人経営者は「VPN規制が厳しく仕事にならない」として国際専用線への切り替えを9月に決断し、11月に工事が完了した。専用線は中国と日本の拠点を直接結ぶ。プライベート回線として使える安定性が売りだ。中国電信(チャイナテレコム)などの国営通信会社も「日本との通信速度が上がり快適なビジネス環境を構築できる」としきりに売り込む。

「傍受も可能」

 しかし日本の大手通信会社の幹部は「専用線は、その気になれば通信の傍受や情報の抜き取りは可能」と話す。国際専用線のサービス主体は日本の通信会社だが中国の通信会社が介在している。通常は厳しいセキュリティー対策を施すが中国ではグレー。中国の通信会社に任せ日本側が関与できない部分があるためだ。それでも「専用線という言葉の響きでリスクを考えず導入する日本企業は少なくない」という。

 11月20日に中国を訪問した経団連などの訪中団も強まるネット規制に懸念を示した。参加した日系メーカーの幹部は「日本の情報が何でも盗み取られてしまう。今回は中国の国家としての強い意志を感じる」と話した。

 VPNが遮断され、専用線へと誘導される。まるで追い込み漁のように日本企業は中国のグレートファイアウオール(ネットの長城)の内側に引き込まれる。誰もがその可能性をうすうす感じながら、立証はできない。

 「中国で重要な情報をやり取りするならスマートフォンの電源を切れ」。広東省で通信機器の民間企業を経営する40代の中国人男性は言う。3時間ほど間をとり相手との待ち合わせ場所に向かう。

 GPSがオフでも電源が入っていればアウトだ。街中に張り巡らしたアンテナとカメラで個人が特定される。彼はこうも助言してくれた。「待ち合わせ場所で落ち合ったら1カ所にとどまらず、歩きながら会話する。今はこれが一番安全だ」



真相深層 「クロヨン」棚上げゆがむ税 自営業・農業者の 所得捕捉率なお低く 高所得会社員にしわ寄せ 2017/12/8 本日の 日本経済新聞より

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 政府・与党が2018年度税制改正で、所得が高めの会社員に負担増を求め、自営業者やフリーランスの所得税を減税する案を検討している。だがガラス張りの給与所得に比べ、事業所得や農業所得の透明性が低い「クロヨン問題」の解消は遠い。所得の捕捉率を高めないと、新たな課税のゆがみを生む恐れがある。

給与控除見直し

 「現行制度は特定の働き方による収入にのみ手厚い」。政府税制調査会(首相の諮問機関)が11月に出した報告書は会社員に厳しい見直しの方向性を示した。やり玉に挙げたのは会社員が課税所得を計算する際に一定額を経費とみなして差し引く給与所得控除だ。主要国と比べて「相当手厚い」と引き下げを求めた。

 給与控除は13年に245万円を上限とし、16年に230万円、17年は220万円と下げてきた。18年度改正でさらに減らし、全ての人が使える基礎控除を増やす。中低所得層は増減税なしだが、年収800万円超の人は増税にする案が軸だ。

 給与控除はスーツや文具など仕事に必要な経費の概算控除のほか、他の所得との負担調整という性格があるといわれてきた。源泉徴収の会社員は所得をごまかしようがないのに対し、自営業者や農業者は税務当局に所得を把握されにくい。給与控除はこの不公平感を調整する役割を担ってきた。

 ところが政府税調は給与控除を「基本的に勤務経費の概算控除」と位置づけ、実際にかかった経費より過大だと指摘。財務省によると平均的な会社員の経費は年25万2千円。計算通りなら給与控除の大幅カットは避けがたい。

 一方、かつて給与所得、事業所得、農業所得の捕捉率は「クロヨン(9割・6割・4割)」とも「トーゴーサン(10割・5割・3割)」ともささやかれた。本当にこの不公平感が解消したといえるのかは微妙だ。

 クロヨンを初めてデータで裏付けたのは政府税調会長などを歴任した石弘光氏だ。1981年に発表した論文で、国民経済計算(GDP統計)や税務統計を使って捕捉率を推計し、実際にクロヨンに近い格差があると指摘した。

 その後、多くの研究が発表される中で注目を集めたのは経済財政相を務めた大田弘子氏らの03年の推計だ。77年に69%だった自営業の所得捕捉率が97年に95%に高まるなど、捕捉率の格差が80~90年代に大幅に縮小したと結論づけた。農業経営が大規模化し、消費税の導入によって税務署に提出する書類も増えた。税務当局が農家や自営業者の所得を把握しやすい環境が整ってきたという。

 だがクロヨンが解消したという主張には複数の反論も出ている。日本総合研究所の立岡健二郎氏が発表した14年の推計では事業所得の捕捉率は約69%にとどまった。複数の統計から推計した国民経済計算ではなく、全国消費実態調査などを使ったのが特徴だ。

格差の是正必要

 立岡氏は「いまでも課税の公平性が著しく損なわれている可能性がある」と指摘。様々なデータが完全にそろうわけではなく、クロヨン推計のバラツキは大きい。「米国やスウェーデンのように政府が実態を調べて公表すべきだ」という。

 児童手当や保育料、介護や医療の保険料なども所得に応じて変わる。所得の捕捉率に格差があると、社会保障制度の公平性も保てない。社会保障を負担能力に応じた制度に変えていくためにも捕捉率向上が欠かせない。

 新たなクロヨン問題もある。「シェアリングエコノミーの所得は誰が捕捉するのか」。政府税調の会合ではこんな声が出た。民泊経営やユーチューバーなど会社に属さない働き方が広がると、税務当局の所得把握が一段と難しくなる。18年度改正ではクロヨンへの対応に踏み込んだ議論はなかった。課税の公平性を高める切り札と期待されたマイナンバーの活用も広がっていない。

 所得税は20年以上も抜本見直しをせず、社会の変化に立ち遅れている。税の大原則は公平・中立・簡素。所得の捕捉率ができるだけ高く、働き方で大きく税負担が変わらないしくみが理想だ。クロヨン問題を放置して高所得の会社員に負担をしわ寄せするだけでは、経済の活力は高まらない。

(木原雄士)



ミサワが宿泊施設事業マンション改築民泊法にらむ 2017/12/6 本 日の日本経済新聞より

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 ミサワホームは宿泊施設事業に参入する。築33年のマンションを改築し、12月中にホテルとしての運営を始める。集合住宅を所有する不動産オーナーに対し、建物を宿泊施設にして再活用することを提案していく。2018年6月に施行される住宅宿泊事業法(民泊法)に備え、自社グループが保有する不動産も宿泊施設として対応できるようにする。

 不動産オーナーから建物を一括して借り上げ、宿泊施設にする。ミサワホームが企画から施工、運営までを担う。ホテル従業員の管理などは社外の運営会社に委託する。

 第1弾として京都・嵐山に宿泊施設を開業する。鉄筋コンクリート造の3階建ての集合住宅を約6カ月かけて改築した。1階部分にフロントを造ったほか、エレベーターを新設した。部屋数を約半分に減らし、1部屋あたりの大きさを広げて3~4人での宿泊客の需要を取り込む。民泊仲介サイト上で集客し、民泊需要も見込む。

 ミサワホームは1987年から05年にかけて、関連会社が全国で約10カ所のホテル施設を運営・管理していた。だが経営が悪化し、リゾート事業からは完全撤退した。



世論調査考(中)深掘り「列島民意」 自民、学生人気 高く 支持層の裾野広げる 2017/12/6 本日の日本経済新聞より

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 日本経済新聞社が実施する世論調査では、回答者に6種類の職業からいずれかを答えてもらう。定例調査では農林水産業や学生などの対象者が少ないため、誤差幅が大きく比較が難しい場合が多い。しかし、7万人以上の回答を集める衆院選時の情勢調査を使うと、職業の違いによる内閣や政党支持の動向がより正確にみえてくる。

 各政党がどんな職業の人に支持されているのか分析すると、2012年12月に第2次安倍内閣が発足してから、自民党が支持層の裾野を広げたことが浮かび上がる。

 10月の衆院選時の情勢調査で全体の自民党支持率は39%。職業ごとにみると大きな差がある。

 農林水産業が53%で最も高く、学生が49%で続く。自営業が42%、無職が39%、サラリーマンや公務員を含む「お勤め」が38%、専業主婦が36%となった。09年衆院選時と比べると、農林水産業以外の5業種に支持が広がったことがわかる。

 なかでも特徴的な動きを見せるのが学生だ。今年の衆院選では14年衆院選時と比較すると自営業や「お勤め」、専業主婦は支持率を落とした。だが学生は14年の48%から49%とほぼ横ばいを保った。09年衆院選時の34%と比べると15ポイントも上昇した。

 さらに地域を絞って比較してみよう。東京の学生に限ると自民党の支持率は50%で、09年の39%から11ポイント上昇した。一方、北海道の農林水産業の支持率は09年も今年も40%で横ばい。従来型の地方の農村の支持に加え、都市部の学生など異なる層が自民党に目を向けるようになったといえる。

 年代別の支持率をみると、さらに近年の傾向が顕著だ。09年衆院選では20~50代の自民党支持率は20%台だが、60代が32%、70歳以上が40%となり、高齢層ほど支持率が高かった。今年の衆院選では18~19歳が45%、20代が46%、30代が42%と若年層が40%台で、40~60代は30%台になり、高齢になるほど支持率が落ちる傾向がみてとれる。

 なぜ学生の自民党支持が厚いのか。多くの議員が実感を持つのが就職環境の改善だ。大学生の就職内定率は過去最高の水準で推移する。佐藤正久外務副大臣は衆院選の演説で「この前、女子高生に囲まれて『就職が良くなったので政権を応援したい』と言われた」と自らの体験を披露した。

 埼玉大の松本正生教授(社会調査)は「社会に違和感を持たず、無意識に現状維持志向を持つ学生が多い」と分析する。北朝鮮情勢の緊迫や中国の海洋進出、歴史問題で関係がぎくしゃくする韓国の対応を受け、北朝鮮や中韓に毅然とした態度を取る安倍政権の姿勢に若者が共感を得やすいという見方もある。

 情報収集の手法の変化が影響している可能性もある。自民党ネットメディア局長の平将明衆院議員は「テレビよりネットの方が政権の評価が高い情報が多く、その情報に接する若者は政権寄りになるのではないか」と話す。支持構造の変化は自民1強の源泉にもなっている。



迫真 もう「メガ」じゃない(2)「これまでの仕事は一体…」 2 017/12/6 本日の日本経済新聞より

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 関東の地銀に勤めていた加藤久美子(仮名、31)は入行8年目の昨年、退職した。地元出身で周囲もうらやむ就職先。総合職として自由な発想で仕事ができる。こう考えたが現実は違った。住宅ローンを担当したが「目標への執着度合いが高すぎて顧客対応がおかしくなっていった」。加藤は少し寂しそうだ。「裁量が少なく縦社会。銀行はもういいかなって思った」

銀行の支店が「駅前一等地」からなくなる日がくるかもしれない(東京・豊洲)

 銀行は新卒採用数、人気ランキングとも常に上位の常連だ。2018年4月に1000人以上の大卒者を採用するのは5社のみで、うち2社はみずほフィナンシャルグループと三菱東京UFJ銀行。国公立や有力私大卒業者の上澄みを、巨鯨のごとくのみ込んでいく。

 そんな有能な人材を店舗に張り付かせ、膨大な事務作業に駆り立てる。わざわざ人が手作業でこなす必要があるのか。これだけ労働力が逼迫する中で、こんな疑問を持つ行員は増える一方だ。メガバンク首脳も「人材の価値を最大限、引き出さないとダメだ」と自戒を込める。

 「駅前の一等地に午後3時に閉まる店があるのは日本の都市計画上、とても困ります」。三菱UFJ銀幹部は、大手不動産デベロッパー幹部から言われた言葉が胸に焼き付いている。目抜き通りの四つ角にメガバンクや地銀が店舗を構えるのはありふれた光景だ。

 三菱UFJ銀の実店舗の来客数は10年で4割減少し、逆にインターネットバンキング利用者は5年で4割も増えた。重装備の店舗は今やお荷物。みずほ社長の佐藤康博(65)は「店舗が駅前の必要はなく、住宅地でもいい」と割り切る。「従業員や店舗数は需要対比で過剰状態だ」。日銀は金融システムリポートで、日本の金融機関の店舗数は欧米と比べて突出して多く、収益性低下の原因だとした。

 「このままでは仕事が機械に置き換えられる」。三井住友銀行に勤める30代の中堅行員は焦っている。自動化が進めば無駄な作業が減る一方で、「真の実力が問われる」。

 翌日訪ねる企業の信用情報や財務状況、プレスリリース、過去の新聞記事……。最近始まったRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)が手作業を漏れなく代替してくれる。「自分たちがしてきた作業はなんだったのか……」。三井住友銀はRPA活用で人数に換算で1500人分の業務を減らせるとみる。テクノロジーがムダの棚卸しを迫る。

(敬称略)



インド、28年にGDP6兆ドル突破、日本超え 日経センタ ー中期予測、中国の成長は鈍化 2017/12/5 本日の日本経済新聞より

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 日本経済研究センターは、アジアの主要11カ国について2030年までの中期の経済成長率の見通しをまとめた。インドやフィリピン、ベトナムなどで人口の増加や投資の拡大により高成長が続くとみる。28年時点ではインドの名目国内総生産(GDP)が6兆ドル(約675兆円)を突破し、経済規模で日本を上回る世界3位の大国になると予測した。

 中国の実質GDP成長率は緩やかに減速し、30年にかけて2.8%増に鈍化する見通しだ。過剰設備の調整が進み、投資の減速で資本ストックの増加に歯止めがかかると予測した。人口増の一服で、労働投入による成長の押し上げ効果も薄らぐとみている。

 一方、中国では都市化の進展に伴い、通信インフラの整備や教育水準の改善などにより生産性が高い伸びを示す見通し。経済規模の拡大で成長率は減速するものの、30年時点では米国の名目GDPの8割超の規模となり、アジアや世界での影響力が高まるもようだ。

 各国の豊かさの目安となる1人あたりの名目GDPでは、23年にマレーシアが1万2千ドル以上の高所得国に仲間入りし、25年には中国も同水準を上回る見通し。タイも高所得国入りが目前に迫る。また、インドネシアやフィリピン、ベトナムが30年までに高位中所得国(4千ドル以上)に加わると予測した。



モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る 危機は一瞬 で広がる日本郵政社長 長門正貢氏 2017/12/5 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る 危機は一瞬で広がる日本郵政社長 長門正貢氏」です。





 ――米リーマン危機から来年で10年になります。金融緩和で世界の風景はどう変わりましたか。

 「成長速度もようやく元のトレンドに戻ってきた。力強さには欠けるが、どこの地域も金融緩和政策によってなんとか成長路線につなげることができている」

 ――巨額のマネーが市場にあふれていることに恐怖を感じませんか。

 「先が読みきれないリスクが生まれた。いま何が起こっていて、そこにリスクはないのか。日本銀行は440兆円もの国債を抱え、さらに上場投資信託(ETF)、要は株も買っている。いつどのように売るのか。そのペースはどのくらいかといった問題意識が市場関係者の間に明らかに芽生えている」

 ――バブルを指摘する声も増えています。

 「現象として、バブルのような状況は起きている。例えばアルゼンチンが100年債を発行したら募集額を上回る申し込みがあった。20世紀に6回デフォルトを起こしたのに、だ。イラクが発行した6年債にも応募が殺到。お金が有り余り、モノを買いたがっている人が増えている。バブル崩壊前夜との見方もある」

 ――1997年のアジア通貨危機の時は日本興業銀行(当時)にいました。

 「タイに赴任中だった。7月2日の早朝、タイの中央銀行に外銀支店長とタイの銀行頭取全員が集められ、大蔵大臣と中央銀行総裁がフロート(管理変動相場制)に移行すると宣言したことを今でも鮮明に覚えている。たった1~2週間で380億ドルの外貨準備が吹っ飛んだ。問題は一瞬にして広がると学んだ」

 ――米国が当時のように利上げし始めました。

 「アジア危機のきっかけは米国の投資家の動きだった。米国の動向には非常に注意している。欧州も日本もまだ動いておらず、何が起こるかわからない」

 ――世界の勢力図で重要な役割を担い始めた中国をどうみていますか。

 「1929年から始まった大恐慌は英国の時代だった19世紀から米国の時代に移る過渡期に起きたという分析がある。自らがリーダーだと英国は錯覚し米国は自覚していなかった。まさに今の米国と中国。当時と同じ問題が顕在化する可能性がある」

 ――日本郵政グループは総資産300兆円近い巨大金融機関です。

 「郵便と金融の2つを併せ持つ。政府系で業務上足かせが多かったため、今は突然死するリスクが相対的に少ない半面、収益力が高くない。国債の保有割合が高く、国債投資の縮小や保有資産の分散が課題だ」

 「恐れているのは合成の誤謬(ごびゅう)に陥ることだ。ゆうちょ銀行、かんぽ生命など各社はもちろんグループ全体で大丈夫か。問題が噴き出すときは一瞬。思わぬミスがないか、殺気にも似た緊張感を常にもっている」(聞き手は玉木淳)

=随時掲載

 ながと・まさつぐ 1972年旧日本興業銀行入行。国際通として知られ、シティバンク銀行会長、ゆうちょ銀社長を経て2016年から現職。69歳。



迫真 もう「メガ」じゃない(1)「1.9万人では足りない 」 2017/12/5 本日の日本経済新聞より

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 「リストラ?」。業界最大手、三菱UFJフィナンシャル・グループ社長の平野信行(66)と9月に面談した大手上場企業首脳は、3メガバンクで最も財務に余裕があるはずの「王者」の意外な一言に胸騒ぎがした。

 「9500人相当の労働量の削減を実現したい。銀行だけとると、国内スタッフの30%になる」。面談からほどない9月19日、東京駅前の丸ビル。平野は講演会の最後に、決して小さくない数字をさらりと持ち出した。オープンな場で数値目標ともいえる計画を打ち出したのは初めて。「このことが頭にあったのか」。企業首脳は合点がいった。

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 突然のリストラ旋風の震源は日銀のマイナス金利発動だ。グループ中核の銀行部門の本業のもうけ(実質業務純益)が急減。民間企業が軒並み最高益というこの時期に、三菱UFJは前年同期比マイナス13%だ。みずほフィナンシャルグループは同41%、特殊要因とはいえ、営業に強い三井住友も同40%という構造不況を体現するかのような減益幅となった。

 折しも金融とITを融合したフィンテック風が強まって金融ビジネスの地平が広がる一方、融資から決済まで取りそろえる商業銀行の収益モデルは将来性があやぶまれる。「リストラ祭り」(大手銀関係者)の号砲を鳴らしたのが、もっとも安泰とされる三菱UFJだったことが険しい環境の象徴だ。

 「配置転換ではなく、実数でこの数を減らしていきたい」。11月13日、東京・日本橋の日銀本店。中間決算の記者会見に臨んだみずほ社長の佐藤康博(65)は「2026年度末までに1.9万人を減らす」と表明。表情からは、ライバル三菱UFJに負けたくないとの思いがうかがえた。

 この発言の含意は3つだ。まず三菱UFJが示した「23年度」よりも期間が長い点。2つ目はあえて三菱UFJの2倍の目標を打ち出したこと。そして人数が曖昧な業務量を採用せず実数にこだわった点だ。3メガでつねに株価が最も低いみずほは、厳しい株主の視線を意識し一歩も二歩も先を走らざるを得ない台所事情がある。

 もっとも今回の構造改革案に株価は大きく反応せずじまい。株主には「物足りない」と映った可能性もある。みずほの株価は発表の翌14日終値が14営業日ぶりに200円を割り、今もさえない。

 ライバル行の目にも状況はシリアスに映る。「厳しい決算に驚いた」。みずほの中間決算を見たライバル行の首脳は一時的に計上された利益額の大きさに目を見張った。

 純利益3166億円のうち3分の2は一回限りの益出しに依存したもので、多くは持ち合い株の売却益などだ。他行も似たり寄ったりだが、利益に占めるかさ上げ分の割合は三菱UFJの3分の1、三井住友フィナンシャルグループの5分の1と比べ突出して高い。

 期限が来れば融資は低い金利に置き換わり、マイナス金利の国債を買うケースも出てくる。固定費を削らなければ、経営に黄信号がともりかねないところまできている。

 監督する側の金融庁は大手行の危機意識がまだホンモノでないとみる。「単なる自然減だろ?」。金融庁幹部はみずほの説明を受けた後、説明しに来た幹部に「1.9万人では足りないんじゃない?」と嫌みを言った。記者会見で希望退職の選択肢はあるのかとの質問に「ない」と明言した社長の佐藤。三菱UFJも希望退職は念頭になく、4000人分の業務量を減らす三井住友も同様だ。

 バブル期に大量採用した世代の退職を待つ一方で新卒の大量採用を抑えれば達成は難しくない。そうではなくあらゆるサービスを用意するフルバンキングの看板を下ろしてスリム化に踏み込まないと、字句通りのリストラクチャリング(事業の再構築)には値しない。金融庁幹部の本音だ。

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 「健全なる危機感」。みずほ銀行頭取の藤原弘治(56)は10月開いた部店長会議でこう表現した。不良債権処理で生死の際をさまよっていた1990年代後半~2000年代前半。崖っぷちの時代と異なり今は自己資本も潤沢で突然死の危険は小さい。「健全」のよりどころではあるが、まだまだぬるま湯といえなくもない。

(敬称略)

 超低金利にフィンテックや人工知能(AI)の発達。環境激変で、安定した職業の象徴だったメガバンクですら生き残りへ尻に火が付いた。



日本経済新聞の本日の記事から