一目均衡 「破壊者」が消える市場 米州総局 山下晃 2017/11/21 本日の日本経済新聞より

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 今年6月、米アマゾン・ドット・コムが生鮮小売りホールフーズ・マーケットの買収を発表すると、世界中の生鮮食品を扱う小売り株が一斉に売られた。

 アマゾンに買収を助言した米金融大手ゴールドマン・サックスの投資部門責任者、グレッグ・レムカウ氏が、こんな小話を披露してくれた。

 「アマゾンが入ってきたらすぐ逃げろ。そのビジネスは崩壊する」

 落ちはこう続く。「だけどアマゾンが狙わないなら逃げ出した方がいい。そのビジネスは、もうからないに違いないからだ」

 アマゾンにアップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブックを加えたIT(情報技術)の「ビッグ5」の株価は、破竹の勢いを続けている。

 IT5社合計の時価総額は、2017年に入って1兆ドル(約113兆円)増えた。主要500社合計の増加額は2.8兆ドルだから、5社だけで3分の1を占める。

 これと裏腹に、ゼネラル・エレクトリックやIBMといったかつての代表銘柄はさえない。企業や産業の新陳代謝が経済と株価をけん引する米国のダイナミズムは、なお健在のようにみえる。

 だが目を凝らすと不安の種もある。一つは、IT企業の新規株式公開が低調なことだ。

 米データトレック・リサーチによると、17年1~9月に米国で株式を新たに上場したIT企業は15社。アマゾンがサービスを始めた95年から2000年までは年平均で200社超あったのに、15年は35社、16年は25社と新顔の登場ペースは年々鈍っている。

 背景には長引く低金利とカネ余りがある。行き場をなくした投資マネーは未公開株市場へ流れ込み、企業はわざわざ上場しなくても事業資金を集めやすくなった。クラウドサービスなどの技術の進化で、事業を軌道に乗せるまでのコストが小さくなった面もある。

 また、成長のために市場を使いこなそうとする意欲が企業に薄れているようにも見える。

 音楽配信のスポティファイは新株発行も売り出しもせずに新規上場する「ダイレクトリスティング」を検討し、民泊仲介のエアビーアンドビーも同じ手法を研究しているという。

 これがまかり通れば、株式市場は創業者らの初期投資を回収するだけの場となり、投資家から広く集めたお金を成長のエンジンに変える機能は弱まる。

 もしアマゾンをはじめとするビッグ5が未上場だったら、米市場はビジネスモデルの行き詰まった企業ばかりとなり、今の活況はなかっただろう。

 データトレック創業者で、長く投資分析に携わるニック・コラス氏はこう警告する。「投資家が常に探しているのはディスラプター(創造的破壊者)だ。それが市場の外側だけに存在するのなら、株価には悪い影響しか残らない」



中央アジア諸国結束へ人口最大ウズベク、孤立主義転換中ロ抜き、首脳会 議主導 2017/11/21 本日の日本経済新聞より

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 中央アジア・ウズベキスタンが孤立路線を敷いたカリモフ前大統領の死を受け、外交を大きく転換させている。周辺国と関係を強化し、地域協力を主導する動きも見せる。最大の人口を抱える同国の転換により中央アジア諸国が結束するようになれば、地域で影響力を拡大する中国やロシアとの力関係も変わる可能性がある。 

ミルジヨエフ大統領は孤立路線からの脱却を図る(9月、国連本部)=ロイター

地域関係を改善

 ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は10日、同国南部サマルカンドで安全保障会議を開き、中央アジア5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)による定期的な首脳会議の開催を提案した。

 ウズベキスタン政府によると、提案にはすべての国が同意したとしており、2018年にも初の5カ国首脳会議が開かれる見通しとなった。旧ソ連崩壊後に独立した中央アジア各国は上海協力機構など中ロ主導の組織に参加するが、大国抜きで地域の問題を話しあう枠組みはなかった。

 16年9月に死去するまで四半世紀にわたり君臨したカリモフ前大統領は国内で絶対的な権力を握る一方、他国との協力に懐疑的だった。特にキルギス、タジキスタンとは国境や水資源を巡って長年争っており、地域協力の障害になっていた。

 同年12月に就任したミルジヨエフ大統領は前任のカリモフ氏の路線を修正し、周辺国との関係改善を最大の課題に据えた。就任後にまずトルクメニスタンとカザフスタンを訪問し、9月には大統領として17年ぶりに2国間首脳会談のためにキルギスを訪れた。タジキスタンへも外交攻勢を掛けている。 

「一帯一路」機に

 カミロフ外相は「国境紛争から輸送インフラの整備、安全保障の問題までの課題に取り組むには周辺国との協調が欠かせない」と説明する。経済発展の前提となる海外からの投資誘致の環境を整える狙いと見られる。

 経済改革にも取り組み、9月には外国為替取引を自由化した。中国が掲げる現代版シルクロード構想「一帯一路」を好機と捉え、インフラ整備を巡る周辺国との協力を模索する。 

 人権問題を批判する欧米との関係強化も意識し、投獄していた政治犯の一部を釈放した。欧州の外交官は「民主・自由化がどこまで進むかは不透明だが、ウズベキスタンの変化は地域情勢にプラス」と指摘する。

 周辺国への外交と並行してミルジヨエフ大統領はロシアと中国を順番に訪問したあと、9月に訪米した。全方位外交で大国のバランスを取り、独立性を維持する思惑が透ける。カミロフ外相は取材に対し、中央アジアの3カ国も加盟するロシア主導のユーラシア経済同盟と集団安全保障条約機構(CSTO)に加盟する考えはないと明言した。

(サマルカンドで、

古川英治)



心の健康学 希望でつらさ和らぐことも 2017/11/20 本日の 日本経済新聞より

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 うつ病などの精神疾患は、こころの病といわれることもある。こうした精神的変調は体にも変調を引き起こす。精神面のバランスが崩れることで、ホルモンや自律神経のバランス、免疫の働きが崩れるからだ。

 逆に、身体面の不調が精神的な変調を引き起こすこともよく知られている。風邪をひくと気分が沈みやすくなるのは、そのよい例だ。このように精神状態と身体の状態が影響し合うことを心身相関と呼ぶが、それは痛みにも当てはまる。

 痛みに個人差があることはよく知られていて、同じ病変でも人によって痛みの感じ方は違う。私たちが痛みを感じるときには「苦痛」という言葉で表す身体的な痛みと「苦悩」という言葉で表す精神的な痛みの2つを感じているからだ。

 同じ身体的な痛みを感じていても、その痛みのためにどの程度悩むかによって、感じる痛みの程度は違ってくる。だからといって、こころをしっかり持てば痛みが弱まるというわけではない。無理にこころをコントロールしようとすると、かえってつらくなる。

 そうしたとき、痛みは痛みとして受け止めながら、先への希望がみえればつらさが和らぐ可能性がある。このことを考えたのは、生まれてくる子にどのように育ってほしいか、将来の希望について妊娠中に話し合うことで、出産時の痛みを軽くする工夫をしている産科医と話す機会があったからだ。

 将来の夢や希望を自覚することはもちろん、そのような話ができる医療者や家族がいる安心感も痛みに影響するのだろう。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



月曜経済観測 世界景気の死角は 潜在成長率は低いまま 農林中央金庫理事長 河野良雄氏 2017/11/20 本日の日本経済新聞より

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 日米欧をはじめとして世界経済の見通しが好転している。好調な経済に死角はないのか。機関投資家である農林中央金庫の河野良雄理事長に聞いた。

リーマン後最高

 ――世界経済の動向をどう見ますか。

 「2008年のリーマン・ショック以降で、世界経済は最もいい状態にある。米国は絶好調で、日本もいい。欧州や中国も悪くない。ただ過去の景気拡大局面と比べると、潜在成長率はかなり低い。日本は1.5~1.6%、米国は2%程度が普通になっている。来年を含め、この状態はずっと続くだろう」

 「過去の景気拡大局面ともう一つ違う点は、物価や賃金が上がらないことだ。日本では団塊の世代が大量に退職しているので、生産年齢人口はどうしても足りなくなる。彼らを再雇用することでそれを補っているので賃金は安い」

 ――成長率を高めるにはどうすべきでしょう。

 「生産年齢人口の不足は構造的な問題なので、生産性を上げるしかない。日本では働き方改革が一番大きなポイントになるだろうが、簡単ではない」

 ――海外も同じですか。

 「違う。最近、米国のシリコンバレーを訪ねたが、これから革命が起きると感じた。IT(情報技術)がビジネスの基本をがらりと変える。金融では店舗が要らなくなり、モバイルで済むようになる。圧倒的にコストが安くなる」

 「有力ベンチャーキャピタル(VC)のプラグ・アンド・プレイで話を聞いた。日本の大企業は『あなたの提案に興味を持てば、お金を出そう』という姿勢でスタートアップと接するが、それでは組む対象にならないと言われた」

 「選ぶのはスタートアップの側。彼らが大企業のことを『資金を持ってるだけ』『鋭い思考がない』と判断すれば、もう相手にしないと言われた。本当に驚きだった。日本の大手企業で話題に上ったのはトヨタ自動車だけだった」

米利上げに懸念

 ――世界経済にリスクはありませんか。

 「中国はハードランディングはしないだろう。習近平(シー・ジンピン)国家主席は権力を掌握したようだし、優秀な官僚が支えているので、おかしな経済運営はしないと思う」

 「懸念材料は米国の利上げだ。いま世界の景気がいいのは各国の中央銀行が量的緩和でじゃぶじゃぶに資金を供給してきたからで、その潮目が変わろうとしている。ただ米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の発言を聞くと、すごく慎重だと感じる。12月も利上げするだろうが、来年の利上げは2回、多くて3回のペースだろう」

 ――相場への影響は。

 「潮目の変化は投資のチャンスを生む。日銀の黒田東彦総裁は緩和を続けると言っているので相対的に円が安くなり、外国人が日本株を買いやすくなる。日本企業の業績もいいので、中期的に日本の株式相場が落ちる理由がない」

 「最大のリスクは北朝鮮問題だ。米国ではいろんな銀行のトップから一様に『よくのんびりしていられるな』と言われた。日本と違い、戦争を身近に感じているのだろう」

(聞き手は編集委員 吉田忠則)

 こうの・よしお 金融危機で農中が苦境にあった09年に就任した。69歳。



迫真 激震サウジアラビア(1)若さと情熱の闘争 2017/11/20 本日の日本経済新聞より

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 11月4日午後2時前。サウジアラビア内外に衝撃をもたらした長い一日は、同国を訪問中のレバノン首相サード・ハリリ(47)の8分弱の異様なテレビ演説から始まった。「命の危険がある」。外遊先での唐突な辞任表明だった。

10月下旬、リヤドの国際会議パーティーで出席者に囲まれるムハンマド皇太子

 イスラム教スンニ派のハリリはイランや、イランの支援を受けるシーア派勢力を激しく批判した。暗い内戦の過去を引きずり、ガラス細工のような宗派間の均衡のうえに成り立つレバノンの安定を脅かしかねない発言だ。これは彼の本意だったのか。

 カメラは手元の原稿を確認しながら、慎重に言葉を選ぶ様子をとらえていた。いつもは雄弁な政治家らしからぬ姿。「サウジが書いた筋書きに沿って行動した操り人形だったのはあきらか」と関係者は語る。

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 ハリリの演説からおよそ6時間後、首都リヤドに巨大な爆発音が鳴り響いた。「弾道ミサイルを迎撃した」。隣国イエメンからリヤド近郊の国際空港を狙いミサイルが発射されたと地元メディアが報じた。サウジによれば、発射したのはイランを後ろ盾とするシーア派武装組織「フーシ」という。

 住民が爆音の正体を知り、不安を強めていたころ、リヤド各地では有力王子や閣僚らに対する大規模な汚職摘発が始まっていた。「1本だけ(家族に)短い電話をしてよい」。多くはそのままリヤドの高級ホテルに拘束されたままとなった。

 元財政経済相のアサフ(68)は国外に逃げようとしたのか、リヤドの空港で捕まった。アブドラ前国王の息子で国家警備相のムトイブ王子(65)は、ムハンマド皇太子(32)からの呼び出しで家を出たまま戻れなくなった。

 翌5日朝までに判明した拘束の規模は王族や閣僚ら数十人。世界的に著名な投資家のアルワリード王子(62)も含まれた。「われわれの財産はどうなるのか」。王子が率いるキングダムホールディングに資産を預けていた王族は、このニュースに青ざめた。

 その10日あまり前。リヤドでは世界の政財界の大物を集めた「サウジ版ダボス会議」が開かれ、皇太子の改革がもたらすサウジの明るい未来が語られていた。

 皇太子は5000億ドル(約56兆円)の巨額を投じて紅海の沿岸に新しい都市NEOMをつくる事業を自ら発表。隣に座ったソフトバンクグループ社長兼会長の孫正義(60)は「見てください、彼の情熱を。若さとビジョンと、ちょっぴりのお金も助けになっている」と持ち上げ、会場の笑いを誘った。

 「押さないで。殿下が進めるよう道を空けてください」。夕食パーティーで皇太子は、参加者からもみくちゃにされた。あせる警備員を制止し、スマホで記念撮影を求めるひとりひとりに、皇太子は丁寧に対応した。

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 だが、この時点で皇太子の頭のなかには汚職摘発の計画があった。

 話はさらにその数日前に戻る。リヤド在住の投資家は奇妙な電話を受けた。「紅海の土地を買わないか?」。やがて、それはNEOM発表を見越したインサイダー情報による勧誘だったことが明らかになる。

 この話を耳にした皇太子は激怒して担当者に雷を落としたとされる。肝煎りの事業が発表前に漏れたばかりか、それで利益を得ようとする者がいた。とても受け入れられない。皇太子が大規模な汚職摘発に踏み切ることを決断した瞬間だった。

 4日から立て続けに起こったサウジの事件は必ずしもすべてが直接関連しているとは断定できない。しかし、大がかりな汚職摘発による政敵排除や、レバノン政治への介入疑惑は、サウジの内政や外交がはらむリスクの大きさを改めて印象づけた。

 強い危機感を感じているのは、単純労働を一手に担うアジアからの出稼ぎ労働者たちだ。混乱のしわ寄せが真っ先に来ると見抜いている。

 バングラデシュ出身でリヤドに27年暮らすホテル従業員ニジャーム(57)は「大きな権力を握った人間がどういう行動に出るか、自分の国の経験で知っている。サウジの行方はとても危ない」と語る。一歩引いた立場から政治ドラマをながめる彼らの目に映るのは、血みどろの権力闘争の幕開けにほかならない。

 「脱石油」を目指す改革の旗を振る皇太子への権力集中が進むサウジ。石油市場とイスラム世界の盟主を兼ねるサウジはどこへゆくのか。

(敬称略)



風見鶏 PKOの25年と万年野党 風頼みから脱却を 2017/11/19 本日の日本経済新聞より

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 海外を旅行すると日本への思わぬ評価が聞けておもしろい。9月に訪れたカンボジアで、アンコールワットの観光ガイドを務める男性はこう語った。

 「様々な国がカンボジアの遺跡の修復のために来てくれています。他の国の作業はあっという間に終わるけど、日本の協力はとにかく時間がかかる」

 批判なのかと思ったら逆だった。多くの国は崩れた巨石を重機でどんどん積み直し、外観を復元して撤収する。日本は地質調査で遺跡が壊れた原因から突きとめ、緻密に修復するので長期に及ぶのだという。

 日本の協力は国際的に評価が高い。8月には上智大の石沢良昭教授が「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受けた。アンコール遺跡群を研究し「遺跡の保護と修復はカンボジア人の手でなされるべきだ」と25年にわたり人材育成に尽力した。

 両国には友好関係の土台がもう一つある。1992年9月、日本は国連平和維持活動(PKO)として初めてカンボジアに陸上自衛隊を派遣した。内戦で壊れた道路の補修や停戦監視にあたり、現地で「丁寧で心のこもった支援だった」と語り継がれている。

 PKO参加は戦後の日本外交の転換点だ。当時の社会党は「海外派兵法だ」と猛反対。国会で牛歩戦術をとり、所属議員が辞職願を出して抵抗した。

 あれから25年。自衛隊の派遣はモザンビーク、ゴラン高原、東ティモール、ハイチなどへと広がった。PKOへの参加を全否定する声は小さくなったものの、野党には海外派遣への慎重意見がなお強い。

 5月末に南スーダンから陸自の施設部隊が撤収し、PKOへの派遣は司令部要員の4人だけとなった。戦闘に巻き込まれる危険は確かに減った。一方、世界では120を超える国の約11万人の要員が平和構築のために汗を流している。

 自衛隊の元幹部は「日本が国連の旗の下でどんな貢献をすべきかという議論が国会でもっと必要だ。『危ないから行かない』『危なくなったから先に帰る』という姿勢でいいのか」と疑問を投げかける。

 戦後の安保政策の節目は4つ。1954年に自衛隊が発足し、92年にPKO協力法、99年に周辺事態法、そして2015年に安保関連法が成立した。野党第1党はその都度、真っ向から反対した。

 日本の野党は「護憲」と「自衛隊の役割拡大阻止」に多くのエネルギーを費やしてきた。国際情勢の変化をとらえ、政府と外交や安全保障で建設的に議論する機運はいまも乏しい。

 今回の衆院選で安倍晋三首相は北朝鮮の脅威と少子高齢化への対応を争点と位置づけ、自民党が国政選挙5連勝を果たした。首相は防衛力強化と9条への自衛隊明記を柱とする改憲の実現に動き出す構えだ。

 野党が候補者乱立で自ら墓穴を掘った面はある。しかし有権者の多くが野党の政権担当能力に不安を覚えたのも事実だ。外交や安保、税と社会保障改革といった重要課題について、野党は今後も明確な対案を示さないつもりだろうか。

 日本が新たな国際貢献を模索したPKOの25年と、政権交代が可能な野党勢力の結集を目指した25年は重なる。民主党政権の失敗は、掲げた理想と現実の政治の乖離(かいり)に最大の原因があった。

 万年野党でいいなら「一国平和主義」と「財源なき福祉充実」を叫ぶ選択もある。だがそうした時代錯誤の主張こそが、自民党に再び長期政権の座をもたらしつつある現実に野党は早く気づくべきだ。

(編集委員 坂本英二)



地方公務員も副業OK 自治体に後押しの芽 2017/11/18 本 日の日本経済新聞より

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 職員が副業しやすい環境づくりに取り組む自治体が出はじめた。奈良県生駒市は今夏から公共性のある団体での副業を後押しする内部規定を導入。神戸市も地域貢献につながる副業を認める仕組みを設けた。人口減少により人手不足が深刻化するなか、地域活動の担い手などの確保につながる試みといえそうだ。

 国家公務員や地方公務員は法律で営利企業で働いたり、報酬を得る事業などをしたりすることを原則禁じられている。自治体が独自の規定で副業を積極的に認めるのは先駆けといえる試みだ。

 生駒市は8月から公益性が高い地域貢献活動や市の活性化につながる活動を対象に始めた。在職3年以上の職員が対象で、市と利害関係が生まれないといった一定の基準を満たせば報酬の受け取りを認める。これまでも地域活動に参加する職員はいたが、すべて無償で有償の場合は報酬を辞退していたという。

 現場では「報酬への抵抗感や(トラブルになった時に)規則に触れるリスクを心配し活動への参加自体をためらってしまう」との声があった。このため生駒市は有償ボランティアなどへの積極的な参加を促そうと内部規定を整備。3人がサッカーのコーチや子供向け教育講義をしている。

 総務省の就業構造基本調査では副業をしている人は2012年時点で234万人。最近は民間企業で副業OKの動きが目立つ。転職サービスのリクルートキャリアが2月に発表した調査では回答企業約1150社のうち兼業・副業を推進・容認する割合は23%だった。

 自治体でいち早く取り組んだのが神戸市。4月に報酬をともなう地域活動を促す「地域貢献応援制度」を始めた。5年以内に副業先との契約・補助に関する業務に就いていないことなどを審査したうえで後押しする。

 一方で、副業が原因で懲戒処分を受ける地方公務員は後を絶たない。15年度は35人で毎年20~40人の水準で推移する。

 ただ、少子高齢化が進むなか、地方公務員を地域活動の担い手として期待する見方もある。15年の国勢調査によると全国の約8割の市町村で5年前と比べて人口が減少。祭りや地域行事などの担い手不足は深刻だ。

 政府は起業の活性化や働き方改革の観点から副業の普及をめざす。6月にまとめた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)でもガイドラインを策定する方針を示した。

 地方公務員は全国で約274万人で労働力人口の約4%。副業を認める自治体はまだ僅かだが、働き手として潜在的なパワーを秘めている。



民泊の競争激化 背景公取委、エアビー立ち入り 独禁法違 反疑い 2017/11/18 本日の日本経済新聞より

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 民泊仲介サイト世界最大手の米・Airbnb(エアビーアンドビー)の日本法人に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査に入った。宿泊代行業者に、他社のサイトを利用しないよう強要していたとされる。民泊市場は2018年の全面解禁を前に企業が次々参入し、競争は過熱している。

 「なんて排他的な契約条項だ……」。17年6月、エアビーと契約した関東の宿泊代行業者は憤った。送られてきた契約書には、予約状況などを一括して見られる権利の代わりに「他社サイトを利用しない」との趣旨が記されていた。他サイトと契約できない損失も考えたが、管理の負担が増えるため「泣く泣く契約を決めた」。

 仲介サイトは5万室以上登録するエアビーが最大手で、他に10社前後ある。公取委は不当に他社のビジネス機会を奪う契約が独禁法違反にあたるとみるが、エアビー日本法人は「自社サイトへの掲載条件として他のサイトとは取引しないよう要求している事実は一切ない」とする。

 国内の民泊サービスは、訪日客の増加で急速に広がる。観光庁が17年7~9月期に訪日客約1万人の宿泊先を調べたところ、民泊は12.4%だった。ホテル(75.1%)には及ばないが、旅館(18.2%)に迫る。

 18年6月には住宅宿泊事業法(民泊法)が施行され、大阪府や東京都大田区など国家戦略特区に限られていた民泊が全国に広がる。

 近隣住民とのトラブルなどで二の足を踏んでいた大手企業も参入を決めている。JTBが民泊仲介サイト運営、百戦錬磨(仙台市)との提携を発表、楽天も民泊事業への参入を表明。「顧客を囲い込む動きが強まっている」(宿泊代行業者)

 民泊市場調査などを手掛ける「VSbias(ブイエスバイアス)」(東京・新宿)によると、国内市場は20年に2000億円に拡大する。「膨らむパイの奪い合いはますます激しくなる」と関係者は口をそろえる。



建設現場に週休2日制導入、工事原価7%増も 不動産会社は反発 も 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

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 総合建設会社(ゼネコン)でつくる日本建設業連合会(日建連)は2022年3月期までに、施工現場を週休2日制に移行する方針を固めた。工事原価の7%以上の増加につながると見る建設会社が多い。施主側に一定負担を求める考えだが、不動産会社は反発している。建設需要が一段落するとされる東京五輪後をにらみ、両者のさや当てが激しくなりそうだ。

 「週休2日なんて無理と認めてきたタブーに業界の命運をかけてチャレンジする」。建設業界の人手不足を受け、日建連はこのほど「週休2日実現行動計画試案」を取りまとめた。施工現場はこれまで週休1日が多かった。会員各社に週休2日制へ移行を働きかける。

 施工を担う下請け業者は日給制が多い。週休1日から2日に単純に移行すれば実質賃下げとなるが、元請けが人手を確保するには下請けへの支払賃金を維持する必要がある。単純計算で下請け業者の日給は1.2倍となり、工期も長くなる。

 建設会社の労務費は工事原価の4割前後を占めるとされる。さらに工期が延びれば建機リース費や仮設費なども膨らむ。日建連の会員企業への調査では、週休2日へ移行すると延べ52社のうち26社が工事原価で7%以上、17社が5~7%の上昇につながると答えた。

 工事原価が7%上昇すれば影響は大きい。ゼネコン売上高上位10社の2017年3月期連結決算で試算すると、売上高と販管費が変わらず工事原価が7%増えれば7社が営業減益、3社が営業赤字に転落する。日建連の山内隆司会長(大成建設会長)は「生産性向上でコストアップを吸収する努力を重ねていきたい」としつつ、「必要な経費は請負代金に反映させる」と強調する。

 建設業界の動きに発注者側の不動産業界は反発している。不動産協会の菰田正信理事長(三井不動産社長)は「建設業の働き方改革に協力する」としたうえで「生産性向上や重層の下請け構造など、建設業がきちっと取り組みを進めることが大前提」とくぎを刺す。

 建設会社と不動産会社の関係は12年頃から変わった。かつては供給過剰を背景に建設会社が不動産会社に買いたたかれるケースが目立ったが、震災復興や五輪需要などを受けて建設会社が価格交渉で優位に立つ場面が増えた。今回の週休2日制移行を建設業界が持ち出したのもその延長線にあるとの見方もある。

 大和証券の寺岡秀明シニアアナリストは「値上げが始まるのは早くて21年3月期だが、どこまでコストに影響するか不確定要素が多い」と話す。焦点は建設需要の動向だ。東京五輪後に需要をどの程度確保できるかどうかで両者の価格交渉力が変わり、業績にも影響してくる。(大西康平、和田大蔵)



頂は8兆円訪日消費倍増の道(下)「観光公害」乗り越えろ新税、使い道 見えにくく 2017/11/17 本日の日本経済新聞より

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 秋の行楽シーズンまっただ中の街角にため息が漏れた。訪日客急増を受けて、JR京都駅発の市営バスは、乗るまでに時に50人以上の列ができる。「5本見送ることもありますよ」。京都市内に住む40代の男性会社員は話す。混雑の度合いも、東京の通勤ラッシュ時に引けを取らない。

訪日客増のあおりで市営バスには長蛇の列ができる(JR京都駅前)

 京都府を訪れた外国人観光客は2016年時点で661万人となり、15年比で4割増えた。地元経済にとってうれしい悲鳴のはずなのに、日常生活を送る人からはこんなつぶやきも出始めた。「観光公害」――。

 観光地・祇園を含む東山地区で最近、ホテルや旅館、ゲストハウスなど正規の宿泊施設ではなく、ワンルームマンションに消えていく訪日客の姿が大幅に増えた。認証事業者を通さないヤミ民泊。ある旅館の関係者は「数は分からないが、おかげで稼働率が落ち始めた」と漏らす。

 京都市は来秋から宿泊税を導入する。日本人も対象にし1人1泊200~1000円を宿泊代に上乗せする。新税導入でヤミ民泊のあぶり出しや取り締まり強化の効果も狙うが、客足が伸びる中での負担増が観光需要に響きかねない。とかく「税をとって、使い道をどうする」という要の視点が見えにくい。

出国税で負担増

 日本から出国する人に課す新税「観光促進税」(出国税)の早期導入に傾く国も、スタンスは同じだ。

 19年度にも導入し、訪日客だけでなく日本人も対象とし、1人1000円を求めることで固まってきた。ではその先は。400億円ほど税収が増えた分を「地域の文化をいかした観光政策」や「出入国管理の強化」などに振り向けるというが、今のところ、これまでの関係省庁の予算の拡充にしか映らない。

 観光庁の17年度予算は200億円ほど。国全体の観光関連予算は15年度時点で3千億円を超えており、法務省、文化庁、農林水産省などがそれぞれ観光庁と似通った事業を抱える。

 例えば法務省はすでに出入国審査の充実に向けた予算がある。新税が観光を名目にした負担増やバラマキにつながりかねない。14日の自民党の観光立国調査会でも「野放図な歳出(拡大)につなげてはいけない」とクギを刺す声が出た。

予算配分明確に

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの塚田裕昭氏は「20年の旅客目標は射程圏内でも8兆円目標は厳しい」と話し、少なくとも政府は「いろいろな国の人が長く滞在できるような環境整備に予算を回すべきだ」と続ける。厳しい財政事情に考慮しつつ、いまある3千億円ほどのお金に新税の分を加え、目標達成に向けた「最適な配分」の絵を示す必要がある。

 観光業は人口減に直面する日本にあって、数少ない成長産業といえる。国際観光収入が世界で最も多い米国は年間20兆円を稼ぎ、日本の目標の約3倍を手にした。フランスも体験を楽しむ「コト消費」のメニューを充実させ、年8千万人を超える観光客が訪れる。5合目の今、明快で具体的な戦略をもう一度練り上げる時期が来た。

 馬場燃が担当しました。



日本経済新聞の本日の記事から