「インド太平洋軍」視線は対中・南シナ海 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「「インド太平洋軍」視線は対中・南シナ海」です。





米太平洋軍が名称を「インド太平洋軍」に変更した。米国は日本などと「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進している。同戦略に基づき、太平洋からインド洋に関わる軍だ、と明確にした。対象地域には中国が進出する南シナ海があり、同国をけん制する狙いが見え隠れする。改称に伴い、日本が関与拡大を求められる可能性もある。

(画像:デービッドソン米インド太平洋軍司令官(左)と握手する安倍首相(6月21日、首相官邸))

改称の発表は、5月30日にハワイで開いた米太平洋軍司令官の交代式の場だった。マティス国防長官が式典で公表し、インド太平洋戦略との連動性をアピールした。

活動地域は不変

太平洋軍は東は米西海岸の沖から西はインド洋まで、北は北極から南は南極までを管轄。地球の表面積の半分以上を占める広大な地域に、約37万5千人の軍人・軍属を擁する。日本や韓国に駐留する在日・在韓米軍もその傘下で活動している。

改称しても活動地域は同じ。「インド」の冠が加わったが、もともとインド洋も担当していた。名を変えるだけで実質も変わるのだろうか。

ハワイのシンクタンク、東西センターのロイ上席研究員は変更の狙いを「米軍が太平洋とインド洋で協力しながら影響力を行使することを強調するためだ」と解説する。「他国は名称変更の背景を推しはかる必要に迫られた」と、副次的な効果も期待できると話す。

インド太平洋戦略は、太平洋からインド洋にまたがる地域で、自由、法の支配、市場経済などの価値を共有する国が協力する構想だ。軍の名称に冠することで、軍事戦略も構想と連動すると考える国も出てくるだろう。

警戒感を隠さないのは中国だ。外務省の華春瑩副報道局長は記者会見で「名前をどう変えようが、米国は責任ある態度でアジア太平洋地域に存在し、地域の平和安定のために建設的な役割を果たすべきだ」と述べた。

中国は南シナ海の軍事拠点化など、海洋進出に積極的だ。インド太平洋地域では、習近平(シー・ジンピン)国家主席が唱える広域経済構想「一帯一路」もある。米国が名称変更を発表した際のマティス氏の演説では「インド太平洋地域には多くの帯、路がある」とのフレーズがあった。対中国の意識は明確だ。

演習に招待せず

名に実が伴う雰囲気もある。米海軍が主催し、日豪英仏など20カ国以上がハワイ沖で隔年実施する環太平洋合同演習(リムパック、6月27日~8月2日)だ。今回、2014年から続く中国の招待を取りやめた。米側は中国の南シナ海での軍事拠点化を理由に挙げる。

米軍が中国の演習参加拒否を発表したのは5月下旬。中国が南シナ海で初めて長距離爆撃機の離着陸訓練をした直後だ。米軍は矢継ぎ早に南シナ海周辺で「航行の自由」作戦も実施。軍艦2隻を西沙(英語名パラセル)諸島の12カイリ(約22キロ)内に向かわせ、複数の島の近くを航行させた。

米国の一連の対応に、日本は歓迎の立場を示す。そもそもインド太平洋戦略は安倍晋三首相が16年に提起した構想だ。首相は6月21日、司令官に就任したデービッドソン氏と首相官邸で会談し「戦略をともに進めていきたい」と呼びかけた。

小野寺五典防衛相は「インド洋と太平洋の間に南シナ海もある。米国が高い関心を持っている表れだ」と対中国の狙いを説く。会談出席者によると、デービッドソン氏は首相に「航行の自由」作戦の継続を強調した。

日本にも不安がある。米海軍第7艦隊の前司令官は、かつて自衛隊に「『航行の自由』作戦に参加できないか」と求めた。日本は南シナ海で直接、領有権問題はなく、断っていた。安全保障で同盟国に応分の負担を求めるのがトランプ米大統領の持論。政府関係者は「南シナ海の安定は日本のシーレーン(海上交通路)の確保に直結する。トランプ氏はただ乗りを許さないだろう」と語る。

日本が作戦に加われば対中関係は難しくなる。参加を断れば米国は代わりに防衛装備品の購入拡大を求めるかもしれない。明海大の小谷哲男准教授は「インド太平洋戦略は米国が域内の同盟国と良好な関係を築いて初めて機能する」と話す。

(地曳航也)



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