「コーヒーに健康効果」の裏側は 疫学、病気予防に生かす 信頼度は手法ごとに差 2015/06/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「「コーヒーに健康効果」の裏側は 疫学、病気予防に生かす 信頼度は手法ごとに差」です。

コーヒーが毎日の習慣になっている人にとって、このニュースは朗報だと思います。がんと因子の相関性なども表にまとめられており、その中でコーヒーがどのような関連性を持っているのかについても明らかにされています。

喫煙、飲酒、どれも習慣ですが、その代償はとても大きく、運動、野菜や果物の摂取などを心がけても補えないことが表から分かります。つまり、ストレスなどの発散をするためにそのような習慣に手を染めるのではなく、いかにしてストレスを抱え込まないようにするか、これが大切だということを示しているように思います。





日本経済新聞_20150628_「コーヒーに健康効果」の裏側は

 コーヒーを1日にたくさん飲む人は、飲まない人に比べて心臓病や脳卒中などで死亡するリスクが大きく下がることがわかった。研究をしたのは日本を代表する国立がん研究センターや東京大学などだ。コーヒーの愛飲者にとっては朗報だが、実はこの結果は疫学研究という手法で出てきた。コーヒーは本当に体にいいのか。疫学研究のカラクリを探ってみた。

 とりまとめたのは東大の井上真奈美特任教授らだ。1990年代から40~69歳の約9万人を対象に追跡調査され、生活習慣のアンケート結果などとともに得られたデータをもとに、今回はコーヒーを飲む量と死因との関係について調べた。地域社会など特定集団の中で、病気の発生などの頻度や分布を調べ、その要因を明らかにする疫学研究の一種だ。その結果、コーヒーを1日3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて心疾患や脳卒中による死亡の危険性が4割減った。肺炎などの呼吸器疾患も低かったという。緑茶でもほぼ同じ結果が出た。「コーヒーや緑茶が健康を害するということはなさそうだ」――。井上特任教授はこう解説する。

 今回の結果では、コーヒーではクロロゲン酸、緑茶ではカテキンといった含有成分が有効に働いたのではとも推察できるが、井上特任教授は「含有成分が効いたかどうか、その点は分からない」と言う。疫学研究では、何がどのように結果に結びついたか詳細なメカニズムなどまでつかみ取ることができないからだ。

 例えば野菜を摂取する人の方が、がんになりにくいという疫学研究の結果がある。ここからニンジンなどに含まれるベータカロテンだけを抽出して喫煙者に摂取を勧めれば、肺がんになりにくいのではないかと考え実施した海外の研究グループがある。しかし、結果はむしろ肺がんになる確率が上がってしまったという。一般の人が疫学研究の結果を自己流に解釈して特定の成分だけをサプリメントなどで摂取するのは危険と専門家は指摘する。

 「○○が△△の予防に効く」とする結果を導き出す疫学だが、「手法によって結果の信頼度が違う」(国立がん研究センターの岩崎基疫学研究部長)という点にも注意が必要になる。

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 結果の信頼度が最も高いのは、ある仮説を検証するために治療法や予防法を実際に試す介入研究だ。新薬の開発で薬の有効性を調べるのに実施する臨床試験などが代表例。新薬候補の物質を服用するグループと偽薬(プラセボ)を服用するグループに分けて、効果に差が出るか調べる。参加した本人や効果を判定する医師にも、どちらのグループに所属しているのかわからないようにするなど厳密なルールのもとで実施する。

 この手法は、調べたいものの有効性についてはっきりと出やすい。しかし、参加者にとって明らかに有害になりそうなたばこの影響などを調べることは難しい。そこで将来にわたって観察を続ける前向きコホート研究という手法が使われることがある。

 健康な大勢の集団を10年以上追跡して、各種がんなどの病気の発症を見る。アンケート結果から得た生活習慣別に比べて、その集団の中での発症の割合などを調べるわけだ。数千~10万人規模で見るため、信頼度は比較的高いとされるが、対象集団の中の傾向をみているにすぎない。コーヒーと心疾患などの関係を調べた今回の研究もこの手法。結果から「飲みたい人は辞める必要はないし、飲めない人が無理に飲む必要もない」(井上特任教授)。

 国立がん研究センターなどは、日本人の死因トップのがんの発症についても、たばこや食事内容などとの関係を調べるためにこの手法で研究を実施し、結果を公表している。ただ、前向きコホート研究は、結果が出るまでに長い年月がかかり、費用も必要だ。

 がんになった人に集まってもらい、自身の生活習慣を振り返ってもらい、予防法を見つけるという手法もある。症例対照研究というタイプだ。一見すると合理的だが、「過去の経験の思い出し方には個人差があり、バイアスがかかってしまう」(岩崎部長)といい、信頼性はコホート研究より低く見るのが一般的だ。

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 疫学研究の結果を利用する際、どういったデータからどういった結論を導き出しているかという点に注目してほしいと指摘するのは、新潟大学の岡田正彦名誉教授だ。例えば多くの新薬では「死亡率が減っているかが重要になる」という。

 血圧や血糖値を下げる薬が血圧や血糖値を正常値にしたとしても、長期間の服用による副作用で寿命が短くなったら意味がない。血圧も下げた上で、寿命が延びるのかどうかを調べるには、現在のところ疫学研究をするしか方法がない。

 疫学は、自身の生活習慣の見直しの参考になるだけではなく、次世代に残す共有財産にもなる。多くの一般の人の協力があって初めて成り立つ研究という側面も理解しておきたい。

(新井重徳)



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