「強い元」修正、実は3月から デフレ懸念が流れ変える 2015/08/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「「強い元」修正、実は3月から デフレ懸念が流れ変える」です。





 中国経済の先行きが混沌としてきた。投資や生産、消費、貿易などの指標は軒並み悪化。中国人民銀行(中央銀行)はたまらず人民元レートを下げ、世界の市場を動揺させた。中国経済で何が起きているのか。

 中国政府は、物価の影響を除いた実質ベースの経済成長率を7%前後に保つことを目標にしている。だが、いつ潮目の変化が起きたのかは実質ベースの成長率だけでは見えにくい。直近の4~6月期は前年同期比で目標ちょうどの7%。1年前と比べ0.5ポイントの低下と、ゆるやかに鈍化してきたように見える。

 ところが企業や消費者の景気の実感により近い名目ベースの成長率を見ると様子が一変する。2013年7~9月期に11.2%をつけてから急落し始め、今年1~3月期は5.8%と実質の7%を下回った。製品価格の下落が長引いたためで、名実が逆転するのは6年ぶり。この状態がずっと続けばデフレの懸念が頭をもたげる。

 為替政策も今春が節目になった。人民銀が人民元相場で重視しているのは、総合的な実力を示す実効為替レート。国際決済銀行(BIS)の試算によると、人民元の実質実効為替レートは昨年5月を底に、今年3月まで約18ポイント急上昇した。

 人民元相場は人民銀の管理下にある。相場の切り上げは国際通貨基金(IMF)の準備通貨入りを目指し、人民元の存在感を高める思惑などが背景にあったとみられるが、これも3月まででストップ。実効レートの下落が始まっていた。

 今月11日に突如、人民元相場を切り下げたのはこの延長だ。実効レートではなく対ドルという分かりやすいレートを引き下げることで、元高の流れを修正したことを国内外にはっきり伝える狙いがあったとみられる。

 これから中国経済はどうなるのか。公共事業の認可を増やすなど手を打ったことで、名目の成長率が実質を下回る事態は4~6月にひとまず解消した。だが7月の経済指標は消費の伸びが鈍り、自動車生産が落ち込むなど景気の減速に歯止めはかかっていない。

 みずほ銀行(中国)の細川美穂子主任研究員は「社会不安を避けるため、景気の底割れ防止に全力をあげるだろう」と指摘する。当面、主要銀行に貸し出しを増やさせ、鉄道や空港などのインフラ投資を増やすといった従来の手法で景気刺激を続ける公算が大きい。

 一方、改革のペースは落ちる可能性がある。政府系シンクタンク、中国社会科学院の研究者は最近、「元をIMFの準備通貨に入れるのを急ぐべきではない」とする論文を発表した。資本移動の自由化を求める国際的な圧力が高まるのを警戒しているためだ。

 競争力のない企業や過剰設備を抱えた企業をいつ淘汰するかという課題ものしかかる。企業再編は雇用情勢を悪化させる恐れがある半面、それを避ければ経済の効率化は遠のく。

 当面の景気対策と安定成長の実現という2つの目的のはざまで、中国政府は厳しい政策運営を強いられている。

(編集委員 吉田忠則)



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