「私」が奪われる(4) 2018/07/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「「私」が奪われる(4)」です。





「40歳代男性、立ち上がっている」

(画像:「女性」「老人」など通行人の属性を瞬時に判別する(センスタイムの顔認識技術))

「ここから先が車線、横断歩道はこの範囲」

数億人の顔学習

中国・瀋陽近郊のオフィスビル。300人近い若手社員がパソコンに向かい、画面上の映像をマウスでなぞり続ける。

香港発の人工知能(AI)スタートアップ、センスタイムの「データ工場」だ。街頭カメラの動画1秒を24~30枚に分割し、人海戦術で意味をAIに教え込んでいく。すでに「数億人単位」(同社)の顔データを学習。そのデータに多くの企業が吸い寄せられている。

2017年11月、ホンダは自動運転分野でセンスタイムと提携した。申し入れたのはホンダ側。体の向きや足取りから、歩行者の動きを予測する技術が決め手だった。100以上の車や人を同時識別するセンスタイムのAIを使えば、状況が複雑な市街地でも3~5秒先まで予測できる。

ホンダの杉本洋一上席研究員は「他にない高精度な技術だ」と話す。自動車産業の合従連衡はかつてメーカー同士の提携が主流だった。だが「データエコノミー」の時代はデータを牛耳る企業を無視できない。

センスタイムとは米半導体大手のエヌビディアやクアルコム、中国・アリババ集団も相次ぎ提携。設立4年で企業価値はすでに5千億円を超す。業種を超えてデータ資産をかけ合わせれば、自動運転など新ビジネスの土壌も生み出せる。

トヨタ自動車も東南アジアの配車サービス最大手、グラブなどとの関係づくりに奔走。データを軸にした事業提携は勢いを増しているが、データ資源の囲い込みでは米中が大きく先行する。追い上げるのは容易でない。

「データの記載法やファイル形式が違いすぎる」。NTTの担当者は頭を抱える。1月、札幌市と組んで始めた訪日客開拓プロジェクト。イオン北海道や札幌丸井三越など異業種30社と顧客データの共用に乗り出したが、統合作業は難航する。

スピード感課題

分析できるはずのデータは計100万人分。つなげて集客や店舗開発に生かすには、異なる形式のデータを手入力で記録していくしかない。

スピード感も課題だ。6月、セブン&アイ・ホールディングスが呼びかけ、NTTドコモや東京急行電鉄、三井物産など大手10社が連合を組んだ。互いのデータを組み合わせ、宅配網の整備や新商品開発につなげる。だが本格的なデータ共用はまだ先だ。「まず1年間は何ができるか、研究しましょう」

世界は待ってくれない。米アマゾン・ドット・コムは6月、米処方薬販売のピルパックを買収すると発表した。狙いはピルパックが持つ高齢者の購買データ。手薄だった領域を広げるため、ピルパックの売上高の10倍に当たる約1千億円を投じる。保険や通信機器への参入もにらみ、業種を超えた膨張は止まらない。

データの巨人に対抗する合従連衡は始まっている。個人情報を安全にやり取りする「情報銀行」創設の動きも広がる。利用者の納得を得つつ、いかに迅速にデータのかけ算を進めるか。データの世紀は企業の競争軸を大きく変えていく。

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