「米、岩礁に主権認めず」米ハーバード大学特別功労教授ジョセフ・ナイ氏 人工島は「動けぬ空母」 2015/10/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「「米、岩礁に主権認めず」米ハーバード大学特別功労教授ジョセフ・ナイ氏 人工島は「動けぬ空母」」です。





 中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロメートル)内の海域で米海軍が駆逐艦による哨戒活動に乗り出し、米中関係は緊迫の度合いを強めている。米国の意図、思惑、狙いは何か。2016年の米大統領選有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官の選対本部でアジア委員会の共同議長に就任したジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授に聞いた。

 ――南シナ海で米中両国による対立の度合いが強まっています。

 「先にワシントンで行われた米中首脳会談で、習近平国家主席はサイバー問題について従来の立場を百八十度転換したが、南シナ海を巡る問題については何の進展も得られなかった。だから、我々は論争の対象となっている(人工の)島々の近辺で、航行の自由が確保されているかどうかを確認する作業に着手した」

 ――米国はどのような立場ですか。

 「我々は岩礁などに主権の存在は認めず、公海は海洋法にのっとって治められるべきだという見解、立場をとっている。海洋法は岩礁や砂を移動させることを認めておらず、それを領土、領海と見なすことも、排他的経済圏と呼ぶことも禁じている」

 ――中国が全ての人工島を完成させれば、南シナ海における米国の制海権は低下し、この地域における米中間のパワー・バランスが崩れるという見方もあります。

 「そうは思わない。実際、人工島はとても脆弱で、『動けない空母』のようなものだとする声も多い。固定された攻撃目標であり、沈めるのは容易だ」

 ――具体的な方策は。

 「ある米軍OBの友人によれば、例えばフィリピンに弾道ロケット施設を新設し、狙いを定めることができる。それによって、(人工島を)軍事的には完全に無意味なものにすることは可能だ」

 「我々が航行の自由を確かなものにすることができれば、(人工島が)情勢を大きく変える『ゲーム・チェンジャー』には成り得ない。そのために(人工島の)12カイリ以内で艦船を航行させ、上空に航空機を送り込んでいる。こうした行動は今後、数週間は続くことになるだろう」

 ――2001年に海南島で発生した米中両国軍機による接触事故のような危機は招きませんか。

 「確かに、EP3(偵察機)事件のような問題が起こる可能性は常にある。ただ、それは首都(政府)の決断にかかっているとも言える。EP3事件もきっかけは、一人の中国人パイロットが(米側に)タフであると見せつけようとしたことにすぎなかった。問題は北京(中国政府)が事態をエスカレートさせたいと思っているかどうかだ」

 「中国では今、経済成長が減速しつつあり、そうした中で米国との紛争は最も望んでいないはずだ。米国との紛争に足を踏み入れるなら、習氏は相当なリスクに手を染めることになる」

 ――習指導部による人民解放軍の統制に疑問符も付き始めています。

 「中国には政争があり、習近平は常に自身の政治的統制力を心配しなければならない。反腐敗のキャンペーンは政敵を追い込む武器であり、実際、多くの人間が『次は自分では』とおびえている。習氏の統制力に問題があることは確かだが、鄧小平氏以来、最も強い権力を握っていることもまた、事実だと思う」

(聞き手は編集委員 

春原剛)

 ジョセフ・ナイ氏 1958年に米プリンストン大学を卒業した後、米ハーバード大学で博士号を取得。国務次官補、国家情報会議(NIC)議長などを経て、クリントン政権で、国防次官補に就任、日米同盟の再強化などに尽力した。



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