「逃避先」の座 明け渡す円 ユーロ、欧州緩和で存在感 低金利調達、非常時に逆流 2015/08/201 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「「逃避先」の座 明け渡す円 ユーロ、欧州緩和で存在感 低金利調達、非常時に逆流」です。





 市場の混乱時などに資金逃避先になってきた円の性質が徐々に弱まってきた。代わりにその役割を担い始めたのがユーロだ。先週、中国人民元の切り下げで市場が混乱した際にも、円よりユーロの方が買われた。円の変質は米国の利上げ後に市場が混乱した場合に、円上昇の勢いを和らげるかもしれない。

 円が市場混乱時に買われる通貨としての性質を持ってきたことは、2008年秋の金融危機以降に円が大きく上昇したことからもわかる。リーマン・ショック前に1ドル=106~107円程度だった円相場は、その後急上昇。11年には一時75円台を付け、日本経済を苦しめた。「弱い日本の強い円」(佐々木融・JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長)と言われた逆説的な現象だ。

 背景には、長年のデフレで円が超低金利通貨としての地位を確立してきた点がある。超低金利で借りた円で高金利の通貨を買う円キャリー取引が広まったのだ。

 市場環境が好転し、投資家がリスクをとることに積極的になると、キャリー取引の活発化で円は売られる。反対にリスク回避的な空気が広がる局面では、キャリー取引の手じまいで円が買い戻される。このパターンで円は資金逃避通貨としてのイメージを強めた。

 ただ最近はユーロが超低金利通貨としての存在感を高めている。代表的な短期金利、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3カ月物をみても既にユーロの方が円より低い。欧州中央銀行(ECB)が思い切った緩和策を進めてきたからだ。14年6月にマイナス金利政策を導入。15年には量的緩和政策も始めた。

 投機筋はキャリー取引で資金を借りる通貨としてユーロを使い始めた。ユーロ・キャリー取引の増加で、市場混乱時には買い戻しによるユーロ上昇が起きやすくなってきた。ユーロと比べて円上昇の勢いが鈍い例も出ている。最近では11日の人民元切り下げで市場が荒れたケース。円は上下に大きく振れたが、明確な方向感は出なかった。

 円の変質をより明確に映すのが「人民元ショック」の週に、円とユーロの対豪ドル相場がどう動いたかの比較だ。金利が相対的に高い豪ドルはキャリー取引の投資先に使われやすいが、グラフのように円よりユーロの上昇の方が目立った。ユーロの方がキャリー取引で使われているため、その分大きく買い戻されたようにみえる。

 今の市場で最大の関心事は米利上げの時期だ。「白黒でいえば、依然として9月の方がメーンシナリオ」(米金融情報コンサルタント会社オブザーバトリー・グループ)との声は根強い。焦点の一つは米利上げが新興市場からの資金引き揚げを通じてマーケットを混乱させることへの懸念だ。円が資金逃避先としての性格を弱めていくなら、その際の円高リスクは従来より低下していくかもしれない。

 もちろん日銀が追加緩和を決め、円金利がさらに低下していくなら、円が資金逃避先としての性質を取り戻す可能性がある。

 いずれにせよ、円の変質がどれだけ進むかは円相場を見ていくうえで重要なポイントだ。

(編集委員 清水功哉)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です