「顧問」でスキル生かし働く 中小企業にシニアが知恵 数値化営業伝える/研修の意義提案 2016/04/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「」です。





 「積み重ねたスキルを自分でも思ってみなかった企業で活用できる」「会社に雇われない働き方がいい」。現役時代に身に付けた能力を生かし、複数の中小企業のプロジェクトの「顧問」として働くシニアが目立つ。営業、生産の管理、企業風土の改革など、半年から2年ほどの単位で課題解決に知恵を出し、成果が出たら契約は終わり。新たな働き方として人材サービス会社が後押しに乗り出している。

打ち合わせに熱が入る宮崎博さん(左)

 宮崎博さん(60)は昨年から「顧問」という働き方をしている。「大手が出てくる前に、短期で新事業を始めたい。どうすればいいかアドバイスをしてほしい」「製品はいいと信じているのだが、売り上げが伸びない」。そんな悩みを抱える中小企業の相談を受けている。

 まずは営業の会議に立ち会い、何を話し合っているか確かめる。営業マンに「売り上げ目標は達成できそうか」と聞いて「まずまずです」などとあいまいな答えが返ってきたら、「まったく営業体制が整備されていない」と判断する。なぜか。

 目標達成が「まずまず」では現状把握が甘いからだ。現役時代は外資系パソコンメーカーのゼネラルマネジャーを務めた。たたき込まれたのは「営業を数値化、見える化して分析する手法」だ。取引先に何回電話し、中心人物にどれくらい接触したのか。日報を部内のメールで共有、ライバル企業になぜ勝てたか、なぜ負けたかを明らかにする。「この手法がどんな分野でも通用すると気づいたから自信を持って勧められる」

 宮崎さんが登録するのはリクルートキャリア(東京・千代田)のサービスだ。現在契約先は3社で、1社を訪ねるのは週に1回、2~4時間ほど。スキル、取り組む仕事の内容次第で、紹介企業から1日数万円の報酬が出る。宮崎さんの今の報酬は年収換算で約900万円。定年後同じ会社に再雇用されても転職を選んでも、収入は半分以下に減ることが多いだけに、破格といえる条件だ。

 外部人材の提案がすんなり受け入れられることはまれだ。「そんな提案は実現できない」という抵抗勢力は多い。しかし社員として転職するのでなく、独立した立場で意見を言う顧問だから、正しいと思ったことは主張できる。「業務が改善するまでしっかりお世話し、結果、すべての会社で売り上げの成果が上がっている。うれしい」

 ◇  ◇

 平林明夫さん(66)はプラスチック加工企業の工場で生産技術を高め、生産管理を効率化する仕事を長年してきた。顧問という働き方により自分の専門技術を他の会社でどれだけ生かせるのか。当初は疑問に思っていた。ところが実際に契約先に行くと、異業種でも自分の様々な経験を活用できることを知った。

 ある中小企業の場合、社員の多くが創業社長からの指示待ちに慣れ、二代目に代わっても命令がないと動かないのが悩みになっていた。「まず幹部が積極的に意見を出すための勉強会を開こう」「社員研修で前向きな姿勢を引き出しては」と提案した。工場の技術力向上、効率化で慣れ親しんだ手法だ。じわじわと成果が出始めている。

 平林さんは退職後に一度、転職活動をしたが、返ってきたのは「化学系は就職先がほとんどありません」との言葉ばかり。しかし顧問サービスに出合った。サーキュレーション(東京・千代田)など4社と契約している。面談では生産管理でどんなことをしたのか、見かけの職歴だけでなく詳細に質問を受けた。潜在的なスキルに着目したのだろう、想定外の業種の企業を紹介されることが多く、面白いという。

 ◇  ◇

 柴田実さん(61)は転職を重ね、業種の違う4社の社員として働いてきた。人事、総務畑が長い。そこで人材大手、インテリジェンスの顧問サービスを知った。「幅広い人脈を利用して、各企業の新製品を売り込むきっかけとなるよう、知り合いに連絡をとる営業の発掘役になってはどうか」。思ってもみない提案だった。「今は夜が完全に自由なのがうれしい。勉強会や飲み会に現役時代よりもよく出られ、さらに人脈が広がっている」と柴田さんは話す。

 シニア人材には経験やスキルがある。だが、転職では収入や働く時間の長さ、新たな企業文化に溶け込めるかなどに悩む人は多い。自分のスキルを意外な形で生かす「顧問」が、シニアの無理のない働き方として広がりそうだ。

(相川浩之)



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