「4島一括」で事態動かず 元外務省欧州局長 東郷和彦氏 2016/06/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「「4島一括」で事態動かず 元外務省欧州局長 東郷和彦氏」です。





 ――北方領土問題の解決はなぜ難しいのですか。

 「国家同士が領土の主張をする時は大きく2つの理由がある。天然資源や漁業権など計量できる利益とナショナリズムだ。その組み合わせで、どちらが中心になるかで処理の難しさが変わってくるが、北方領土は主としてそれを奪われた日本国民の名誉と正義の問題になっている。日本からするとなかなか譲れない」

 ――解決に近づいた時は。

 「一番可能性があったのは1992年だ。コズイレフ外相(当時)の来日時に『秘密提案』があった。56年の日ソ共同宣言でうたった歯舞・色丹の引き渡しに関する交渉を始め、合意したら協定を結ぶ。これにならって国後・択捉の交渉をし、合意に至れば4島の問題を解決する平和条約を締結する内容だ」

 「ソ連崩壊でロシアは人口が半分、面積は4分の3に減った時期だ。日本はバブル絶頂期だった。領土交渉は国の力関係の反映だ。日本が一番強くて、ロシアが一番弱い時に、向こうが真剣に出してきた提案をうまく生かさなければ、この先はないと判断すべきだった。しかし4島一括への思いがあり提案には乗らず、もう少し押せばもっと出るのではないかと、間合いの判断を間違えてしまった」

 ――安倍晋三首相は「新たなアプローチ」で交渉を進める方針です。

 「今までの交渉の詰め方を見ると、4島一括の立場から譲歩する手法があった。一直線上にある究極の案が『川奈提案』だ。もう一つは歯舞・色丹は引き渡すが、国後・択捉は何も決まっていないという日ソ共同宣言時にできた『段差』を認めるやり方だ。2001年のイルクーツク会談が好例で、私の考える新アプローチはこの流れに沿ったものだ」

 ――13年にパノフ元駐日大使と解決に向けた共同提案をしました。

 「段差を認めて『2+α』を本質とする。歯舞・色丹の引き渡し交渉をするとともに、国後・択捉は両国が法的に位置づけた共同経済特区とする交渉も始める提案だ。過去の日ロ交渉の歴史上でお互い出した文書の中からαをひねりだした。政府に直接伝えていないが、外務省の情報収集の中にはしかるべく入っていると思う」

 ――日本の世論に求めることは何ですか。

 「安倍首相が何らかの形での中間的な解決をした時は支持してほしい。4島一括以外の選択肢を許さないのであれば、ほとんど間違いなく何も動かない」

 とうごう・かずひこ 京都産業大教授・世界問題研究所所長。1968年に外務省に入省し、ソ連課長、欧州局長など主にロシア担当部署で北方領土交渉の最前線に立った。終戦時の東郷茂徳外相は祖父。71歳。



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