いたちごっこ脱せるか 犯罪温床「闇サイト」の世界 米司 法省が閉鎖に追い込むも「氷山の一角」 2017/7/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「いたちごっこ脱せるか 犯罪温床「闇サイト」の世界 米司法省が閉鎖に追い込むも「氷山の一角」」です。





 違法薬物などを扱うインターネット上で最大の闇サイトを米司法省が閉鎖に追い込んだ。頻発するサイバー攻撃のツールを売り買いし、盗んだ個人情報の取引もする犯罪の温床だ。ネット利用者にとって朗報だが、類似サイトは続々と現れる。国境を越えた犯罪を根絶するには各国の捜査当局の協力が欠かせない。

 閉鎖したのはダークウェブと呼ぶ闇サイトで名称は「アルファベイ」。不正に入手した個人情報などの売買を仲介する。同省によると20万人の利用者と4万人の売り手がいて、違法薬物と毒物は計25万件が出品されている。盗難された身分証明書や銃器、各種偽造品、コンピューターウイルスなどの攻撃ソフト、各種不正サービスの出品も計10万件を超える。

 フェイスブックやアマゾンなど一般に利用されるサイトは「サーフェス(表層)ウェブ」と呼ばれる。その下に一般の目に触れることなく広がるのがダークウェブの世界だ。犯罪者やテロリストが闊歩(かっぽ)する。

 ダークウェブのサイトはグーグルなどで検索しても出てこない。利用者の匿名性を担保する特殊な通信技術を使いアクセスする。最も広く利用されるのが「Tor(トーア)」と呼ばれる技術。アルファベイもTorに対応していた。

 Torは米海軍が開発した通信の秘密を守る技術で現在は米非営利団体のTorプロジェクトがブラウザーを提供する。パソコンに導入したブラウザーから世界中の有志が運営するネットワークを経由して闇サイトにアクセスする仕組みだ。

 Torのネットワークでやり取りするデータは経路が分からないように何重にも暗号化される。捜査機関による利用の追跡が難しく犯罪者やテロリストが年を重ねるごとに集まるようになった。

 情報セキュリティー会社、S&Jの三輪信雄社長は「ダークウェブは拡大を続け、アルファベイは氷山の一角」と指摘する。アルファベイが閉鎖されても「すぐに別の闇市場が台頭する」

 米司法省はアルファベイの運営者であるタイ在住のカナダ人を追い詰めた。米政府はこれまでも「シルクロード」などの大規模な闇市場を閉鎖したが入れ替わるように新たなサイトが出現した。いたちごっこを終わらせるにはダークウェブの全容解明が欠かせない。

 運営者を特定した手法は明らかでないが、セッションズ司法長官は「ダークウェブに隠れる場所はない」と技術的に秘匿性が崩れつつあることをにおわせた。司法省は摘発に向け各国当局や欧州警察機構(ユーロポール)と協力しており、当局間の国際捜査共助は円滑に進んでいるようだ。

 一方、Torは自国政府から弾圧を受ける中国などの民主化運動家が仲間と情報をやり取りする手段でもある。米国務省の民主化支援部門が16年までTorプロジェクトのスポンサーに名を連ねるなど、役割が国際的にも認められている。捜査目的で匿名性を破る技術を開発すれば民主化運動が危うくなるという葛藤も生じる。(吉野次郎)



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