けいざい解読 ドイツ、難民受け入れで失業増に 欧州の経済・社会に影 2015/11/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「けいざい解読 ドイツ、難民受け入れで失業増に 欧州の経済・社会に影」です。





 ドイツは欧州入りした難民のほぼ半分を引き受けたが、それが災いして欧州で最低水準の失業率が悪化に転じそうだ。ドイツ企業は人手不足に悩むものの難民の多くは即戦力とはならず、「雇用のミスマッチ」が起きている。

 ドイツ銀行は難民問題について恐ろしい試算をまとめた。ドイツが今後10年間で450万人の難民・移民を受け入れて政策対応に失敗した場合、治安の悪化を防ぐために毎年100億ユーロ(1兆3000億円)を超えるコストがかかる。

 難民が社会に溶け込めずに失業率がいまの2倍の10%まで跳ね上がり、失業給付が増えて財政を圧迫する。その不満から反難民感情がさらに高まり、社会不安が深まるという悪循環――。パリで13日に起こった同時テロと照らし合わせると、背筋が凍るようなシナリオだ。

 予兆はある。ドイツはこの1年間で100万人の難民を受け入れた。審査をパスした30万人が来年中に職探しを始めると主要経済研究所は試算するが結論は悲観的だ。「多くが失業者になる」。独政府は来年の失業率が0.1~0.3ポイント悪化するとみる。

 少しでも雇用が悪くなれば、欧州景気の大黒柱であるドイツの景況感を冷やすリスクになる。パリの同時テロも重なり、欧州経済の先行きは不透明感が一段と強まる。

 ドイツは人材不足が深刻にもかかわらず難民を雇わないのはなぜか。

 需給がかみあわない。求人広告に並ぶのは機関車の運転士、情報処理技師、それに冷蔵空調技師といった専門職。ドイツでは大学院卒か高度な職業訓練を終えないと就職が難しく、外国人への差別もある。難民にとってのハードルは高い。

 そこで多くの難民が条件の緩い低賃金業種で職を探すが、これが問題解決にならないのは隣国オーストリアを見れば明らかだ。1990年代から大勢の難民・移民を受け入れたオーストリアは「非熟練労働者の賃金低下が目立った」とWIFO研究所のマルクス・シュライブレッカー副所長は指摘する。

 ドイツで低賃金労働に就いているのは以前から住むトルコ系などの移民や白人の貧困層。新しくやってきた難民が加わって職を奪い合えば、いずれもが生活水準の低下に直面する。社会保障費がかさみ、過激思想が入り込む隙も生まれる。

 残された道は、難民の職業スキルを引き上げ、高収入の熟練労働者に育てることしかない。教育と職業訓練を組み合わせた手厚い支援がいる。

 準備は始めた。独政府は来年だけで総額200億ユーロもの巨費を注ぎ込む。こうした難民対策は「景気刺激」の効果をもたらし、成長率を0.2~0.3%押し上げる。ドイツ銀行も職業訓練に成功すれば将来の潜在成長率を年0.5%底上げできると読む。

 景気の不透明感を打ち消すことのできる好材料だが、十数年後をにらんだ息の長い政策対応となる。ドイツが異文化への警戒感を抑え込んで将来への投資と割り切ることができるのか。そうでないと人道主義と経済成長の両立は難しい。

(ベルリン=赤川省吾)



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