けいざい解読 中国と鉄鋼摩擦 トランプ政権は 台頭 抑制へ脱依存論 2017/1/8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「けいざい解読 中国と鉄鋼摩擦 トランプ政権は 台頭抑制へ脱依存論」です。





 「米国に工場を建てろ」。トランプ次期米大統領は、トヨタ自動車がメキシコに新設するのを批判し、計画撤回を求めた。米国の雇用を最優先するトランプ砲の標的は、米企業ばかりでない。

 通商問題は新政権の火薬庫である。なかでも米中の緊張はどのくらい高まるか。世界経済と安全保障にどんな影響を及ぼすか。今年の鬼門だ。

 束縛を受けない米国と中国の過剰反応。国際政治の専門家、イアン・ブレマー氏の率いる米ユーラシア・グループは、今年のリスク予測の冒頭に米国と中国を挙げた。

 「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げる新政権は、2番手の台頭に対して相当にきつく当たる構えを見せている。通商と安全保障はその主舞台である。

 両分野での対中強硬派であるナバロ・カリフォルニア大教授を、新設する「国家通商会議」のトップに据える。米通商代表部(USTR)の代表となるライトハイザー氏も対中強硬派である。

 商務長官となるロス氏も含め、オールドインダストリーの代表である鉄鋼にゆかりの深い閣僚が目立つ。対中ダンピング(不当廉売)訴訟の担い手が、政権の中枢に入ることで、鉄をめぐり米中は火花を散らすはずだ。

 鉄は中国経済のアキレスけんである。年12億トンの生産能力に対し、実際の鉄鋼生産は8億トン。国内需要が7億トンなので、輸出に1億トンを振り向けている。その輸出が摩擦の種となっている。

 問題は過剰生産能力にあるが、その是正は容易でない。肝心の国内需要の減少が見込まれるからだ。みずほ銀行産業調査部によれば、2021年の中国の鉄鋼需要は5.9億トン。15年に比べて年3.2%ずつ減る見通しだ。

 中国の国内総生産(GDP)に占める投資の比率が減りだし、投資の中身も鉄鋼を多く用いる建設・土木から産業機械などにシフトしている。13年までの10年間で鉄鋼需要が年平均で11%伸びたが、それを上回るペースで供給力を拡大してきた。そのツケを輸出に回すことに、トランプ政権はノーを突きつける。

 米中の相互依存の深まりといった一般論は、トランプ政権には通じまい。中国の対米輸出が年50兆円強なのに対し、米国の対中輸出は10兆円余り。大幅な貿易不均衡を是正しようと、対中圧力を強めるはずである。

 ナバロ教授は中国の軍事的台頭を抑えるには「中国製品への依存度を減らすことだ」と唱えている。中国との貿易関係の「リバランス」を図れば、「中国経済とひいてはその軍拡は減速するだろう」ともいう(邦訳「米中もし戦わば」)。

 そういえば、1990年代の前半に日本の名目GDPが米国の6~7割になったとき、クリントン政権による強烈な日本たたきが起きた。いみじくも中国のGDPは米国の6割を超えた。

 日本の製造業は対米輸出の自主規制や米国での現地生産の道を選び、今回もその手法を繰り返そう。だが中国は日本と違って、米国の同盟国ではない。気にかかる。

(編集委員 滝田洋一)



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