けいざい解読 欧州で拠点招致合戦 激化日本企業も標的に 2016/12/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「けいざい解読 欧州で拠点招致合戦 激化日本企業も標的に」です。





 欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国から企業を誘致しようとする欧州各国の動きが活発になってきた。ロンドンに拠点を置く金融機関ばかりでなく、日本企業や国際機関も標的だ。背後には様々な思惑がある。

 異例の配慮だった。ドイツ社会民主党(SPD)の女性実力者で「ポスト・メルケル」との呼び声もあるクラフト副党首が11月上旬、日本企業の幹部を公邸に呼んだ。

 三井物産、富士フイルム、三菱電機――。集まったのはドイツ現法のトップら約20人だった。「なにか困ったことはありますか」。一度も訪日したことはなく知日派でもないが、夕食を囲みながら深夜まで耳を傾けた。

 ルール工業地帯を抱えるノルトライン・ウェストファーレン州の首相でもあるクラフト氏は来春、州議会選に臨む。国政に響くドイツ最重要の地方選だ。内向き志向が強まってもおかしくない時期なのに、なぜ突然の「日本配慮」なのか。単刀直入に聞くとほほ笑んだ。「ここは(日本の)製造業が投資するのに最適な場所だと思います」

 技術立国のドイツはモノ作りのインフラが整う。同州には約600社の日系企業が進出し、州都デュッセルドルフは日本食材店が軒を連ねる。「日本人には住みやすい」とクラフト氏は営業トークに余念がない。

 自信の裏にあるのは、日本企業が欧州戦略を見直すとの見立てだ。日本の対欧直接投資のうち、英国向けは4割前後。独仏を大きく引き離す。

 英国を「EUの玄関」と位置付けてきた日本のメーカーが経営資源を欧州各地に分散するかもしれない。仮に誘致に成功すれば「経済に強い州政府」との印象が強まり、選挙戦にプラスとなる。

 一方、ウィーンやアムステルダムが誘い水をかけるのは国際機関だ。欧州医薬品庁(EMA)や欧州銀行監督機構(EBA)が転入すれば「国際都市」として箔が付く。

 誘致合戦が勢いづくのはEUが英国に厳しい条件を突き付ける「ハードブレグジット」の懸念が高まったためだ。

 英国は中・東欧からの移民を制限する一方でEU市場へのアクセスを求めるが、多くの国が難色を示す。「いいとこ取りは許されない」。ポーランドのシマンスキー外務副大臣(EU担当)は英国案を切って捨てた。

 欧州景気は底堅く、交渉当事者の危機感は働きにくい。来春に始まる離脱交渉は難航するとの不安が在英企業に広がる。そこに欧州諸国はつけ込む。誘致合戦は駆け引きのひとつなのである。

 不動産市況は「EU有利」の判断を示しつつある。これまで高収入を求めて多くの医者やバンカーが欧州大陸から英国に移った。人材が逆流するとの期待から欧州大陸のオフィス賃料が上昇するとの見方が出始めた。

 ただ浮かれているのは北部欧州に限られる。国際機関や非欧州系企業を誘致するには柔軟な労働市場に加え、英語が通用することが条件。それを満たすのはオランダ、ルクセンブルク、ドイツなどだ。ここでもEUのアキレスけんである南北格差が浮き彫りになる。

(ベルリン=赤川省吾)



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