けいざい解読 英、EU「強硬離脱」へ移行期間のルール焦点 201 7/1/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「けいざい解読 英、EU「強硬離脱」へ移行期間のルール焦点」です。





 英政府が3月末までに欧州連合(EU)に離脱の意思を伝え、原則2年の交渉が動きだす。メイ英首相はEUの単一市場から完全に撤退する「強硬離脱」を表明した。先行きは険しい。

 EU欧州委員長の経済アドバイザーをつとめた英国人、フィリップ・レグレイン氏。昨年12月にロンドンで会ったときに「英国は強硬離脱に向かう」と予言していた。

 人、モノ、カネ、サービスの4つが域内を自由に移動できるのがEUの単一市場。英政府は離脱後、移民対策として「人」の流入を規制しつつ、それ以外の分野はできるだけ単一市場に残る意向だったとされる。

 これに対し、4つの移動の自由は不可分として「いいとこ取りは許さない」(メルケル独首相)のが英国以外の加盟27カ国の立場。その壁を崩せないとメイ氏は判断したとみられる。なぜか。

 まず27カ国にはEU離脱の連鎖を防ぐという強い目標がある。「EU離脱は損」と企業や市民に示すには、英国に厳しくあたらざるを得ない。さらに27カ国の経済規模は英国の約6倍と圧倒。英政府内には通商交渉を担える人材が不足している現実もあり、力関係は最初から明らかだった。

 EUと英国は、英国の債務返済や英国人EU職員の年金・退職金の取り決めなどを中心とする離脱協定と、EUと英国の貿易・投資関係を定める「将来協定」の2段階で交渉を進める見通しだ。

 将来協定の締結には10年前後かかるとの見方があり、英国がEUを離脱してから協定発効までを埋める「移行期間」の設定が大きな論点として浮かんでいる。実はEU内で話題になっているのが日産自動車の扱いだ。

 日産は昨年10月に英北部で次期モデルを生産すると発表したが、それに先立ちメイ氏と会談した同社のカルロス・ゴーン社長は「英国は離脱後も競争的な場所になると確信した」と発言した。

 焦点は移行期間に今のEUルールが英国に適用されるか否かだ。適用される場合、仮に英政府が日産に補助金や税優遇を与えれば、EU競争法違反で訴えられる可能性が出てくる。

 日本の金融機関も無関係ではない。昨秋に来日した英当局者は「移行期間のルールは今と同じ」と説明したが、大陸欧州の当局者は「離脱は離脱」と暗に英国からの拠点移転を促したという。駆け引きは始まっている。

 EUは対英国で貿易黒字を抱え、交渉の最終盤で対英国の関税をゼロにするカードは切りやすいだろう。しかし当面は関税よりルールを重視する。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのポール・デフラウェ教授は「選手(英国)が試合(EU市場)の審判役(EU司法裁判所)の判断を無視したら試合は成立しないからだ」という。

 英国は2020年に総選挙を控える。移行期間が長引き、EUへの資金拠出の継続を迫られるのを避けようと、英保守党の強硬派主導で「移行期間を伴わない無秩序な離脱となる公算も大きい」とはレグレイン氏。日本企業に備えはあるか。

(編集委員 瀬能繁)



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