こころの健康学 言葉の美 生徒へ伝わる 吃音の国語教員 2015/07/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「こころの健康学 言葉の美 生徒へ伝わる 吃音の国語教員」です。





 自分が置かれている状況を冷静に見直すと、問題解決の手がかりが見えてくる。問題が起きたときには、その問題に目を奪われてしまって、視野が狭くなりがち。だがそうしたときこそ、自分にとって何が大事かを、あらためて考えてみるとよい。

 ずいぶん前になるが、吃音(きつおん)の人たちの全国組織、日本吃音臨床研究会の合宿で、認知行動療法について解説したことがある。その後、参加者の一人とロールプレイをした。

 その人は国語の教員で、授業中に絵本の読み聞かせをしたときの話をした。途中まではスムーズに読めたそうだが、クライマックスでどもって読み進められなくなった。生徒たちはざわついた。動揺して、「こんなことをしなければよかった」と考えたという。

 話を聞いて、わたしもつらくなった。一方で、その人がなぜ国語の教師になり、読み聞かせをしようと考えたのか、疑問に思った。吃音の人にとって最も苦手な職業を選択しているように思えたからだ。たずねてみると、子どもの頃から吃音に苦しむなかで言葉の美しさを感じるようになり、教師として伝えたかったからだと答えた。

 あらためて読み聞かせの現場の話を聞くと、教室は騒がしくなったが、子どもたちがその教師を批判することはなかった。むしろ言葉について考える雰囲気が出ていたことがわかった。スムーズに読み進められなかったという問題はあっても、言葉について考えてほしいという最も大切な思いが、子どもに届いていたことがわかって、その人のこころは軽くなった。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



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