こころの健康学 車いすの96歳 動かす夢 2017/11/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「こころの健康学 車いすの96歳 動かす夢」です。





 10月初めに久しぶりに米国フィラデルフィアに出かけた。私が専門にする認知行動療法を提唱したアーロン・ベック先生にゆかりのある人の集まりに招待されたためだ。

 私が米国留学中に初めてベック先生に会ってからもう30年になる。ベック先生は96歳になったが2日間の会議にずっと出席していた。だからといって、決して体が健康というわけではない。目の病気で視力はほとんど失われているし、脚も弱くなって車椅子の生活だ。会議前に「懐かしいからといってハグをしないように」というメールが参加者に届いたほどだ。

 しかし、ベック先生に会うと、体が不自由だからといって、こころまで不自由になるわけではないことがよくわかる。精神的にはまったく元気で発言は相変わらずシャープで、その内容はユーモアに富んでいた。

 じつは会議の少し前に、全世界400万人が登録するMedscapeという医療サイトが20世紀に最も影響を与えた医療者のランキングを発表し、ベック先生が4位になったことが仲間内で話題になった。先生は今では世界的に認められているが、それまでの道のりは平たんではなかった。自分の考えに誰も耳を傾けてくれないので、当時13歳の娘に話して聞かせていたと、会議の席でも笑いながら話していた。

 そのように苦しい体験をしていても、自分にとって大切な夢を大事にしてきたからこそ頑張り抜けたのだろうし、体が不自由になっている今でも頑張っていられるのだろう。その様子を見て、私も大きな力をもらうことができた。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



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