すれ違う米中(上) ほころぶ「ディール」北朝鮮暴走で溝広がる 2017/7/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「すれ違う米中(上) ほころぶ「ディール」北朝鮮暴走で溝広がる」です。





 米中関係がにわかにきしみ始めた。核・ミサイル開発をやめない北朝鮮への対応をめぐり、それぞれの思惑がすれ違う。安全保障と経済がからみ合う両大国の結束が乱れれば、世界はいっそう不安定になる。

わずか3カ月で米中を取り巻く風景は一変した(8日、独ハンブルクでの首脳会談)=ロイター

会談前日に緊迫

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席の会談を翌日に控えた7日、米国はあえて中国を刺激する行動に出た。

 「航行の自由を確保する」。米軍は中国が主権を主張する南シナ海の上空に、2機のB1B爆撃機を派遣した。中国がすぐに「わが国の主権と安全を損なう行為に断固反対する」と反発したのは言うまでもない。

 4月にトランプ氏が米フロリダ州の別荘に習氏を招き「われわれの相性はすごくいい」と結束を誇ってからわずか3カ月。8日に再会したトランプ氏と習氏は北朝鮮への対応をめぐる溝を埋められず、ぎこちない笑顔をみせるだけだった。

 中国が北朝鮮への圧力を強める代わりに、米国は中国に経済面で手心を加える――。4月のトランプ氏と習氏の会談では、こんなディール(取引)が交わされたとされる。米国は約束どおり、中国を為替操作国に指定するのを見送った。

 しかし、中国は米国が期待していた石油供給の停止といった厳しい措置に踏み込まない。北朝鮮は4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の成功を宣言した。

 「中国と北朝鮮の貿易は今年の第1四半期に40%も増えた。米中の連携なんてこんなもんさ!」。翌5日、トランプ氏はツイッター上で中国に矛先を向けた。

 中国は国連決議に基づいて2月に北朝鮮から石炭の輸入を禁じる一方、4月には鉄鉱石の輸入を前年同月比で4.4倍の約2千万ドルに増やした。北朝鮮がのどから手が出るほど欲しい外貨をいまも供給している。

 米国は6月、北朝鮮の核・ミサイル開発にかかわった企業と取引したとして、中国の丹東銀行を制裁対象にした。北朝鮮の取引を助ける中国の銀行はほかにもある、と疑いの目を向ける。

 米国には苦い記憶がある。習氏が国家主席に就いたばかりの2013年春、国有の中国銀行は北朝鮮の貿易決済を一手に担う朝鮮貿易銀行との取引を停止した。

 だが、抜け穴だらけで北朝鮮に流れる外貨が止まった形跡はない。北朝鮮がその後も核・ミサイル開発を続けられたのは事実だ。国際金融筋は「中国の銀行は米国の市場から締め出されないように北朝鮮との取引を隠している」と話す。

 米国が軍事行動に踏み込めないと見透かす中国は、北朝鮮との対話路線を掲げてロシアに接近する。在韓米軍への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の導入で関係が冷え込んだ韓国との連携も探る。

対抗策は経済?

 米国に打つ手はないのか。「あなたがしてくれたことに感謝する」。トランプ氏は8日、習氏に対北朝鮮での協力を改めて求め、中国への不満は口にしなかった。

 だが、いつまでもがまんし続ける保証はない。安全保障と経済をディールするというかつてない賭けに出たトランプ氏が、中国から北朝鮮問題でなにも得られなかったときの対抗手段は残されている。経済だ。

 世界1、2位の経済大国がいがみ合えば、グローバルに広がる影響は計り知れない。

(中国総局長 高橋哲史)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です