すれ違う米中(下)虚構の「100日計画」懸案棚上げ、紛争の芽に 2017/ 7/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「すれ違う米中(下)虚構の「100日計画」懸案棚上げ、紛争の芽に」です。





 米東部ニュージャージー州の中心部で、建設費10億ドル弱(約1100億円)という巨大施設開発が進む。事業主はトランプ米大統領の娘婿クシュナー氏の一族企業だ。

中国マネー台頭

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 5月初旬の北京。中国人実業家を集めた会合に現れたのはクシュナー氏の妹だ。一族企業は米国への大型出資で永住権が得られる「投資家ビザ」を紹介し、自らの事業へ1億5千万ドルもの資金を求めた。投資家ビザの取得者の9割は中国人。米国の大型開発は今や中国マネーなしで動かない。

 「中国製品に45%の関税をかける」。トランプ氏は大統領選で声高に唱えた。選挙後、中国側が摩擦回避へ頼ったのがクシュナー氏。同氏はトランプ氏の信頼が厚く、4月7日の首脳会談では貿易不均衡を正す「100日計画」で合意。トランプ氏は持論の対中強硬論を一転して封印した。

 米調査機関によると2016年の中国による対米直接投資は約500億ドルと、前年比3倍に膨らんだ。米中の貿易量も中国の世界貿易機関(WTO)加盟後に急増し、両国経済の相互依存は強まる。トランプ氏の対中政策は「過激策から現実路線へ転換した」と受け止められ、米株価の上昇要因にもなった。

 「あなたも分かっているように、米国にとって中国貿易は非常に非常に大きな問題だ」。100日計画の期限を控えた今月8日、トランプ氏は融和路線を翻し、ドイツで習近平・中国国家主席に詰め寄った。北朝鮮問題での米中協力が行き詰まったためと解説されるが、それだけではない。

 中国が100日計画で合意した米国産牛肉の輸入再開。実は昨秋に禁輸措置を解禁済みで、首脳会談まで温存していただけだ。食品安全面の制約も厳しく、輸出可能な米国産牛肉は全体の10~15%どまりとされる。

 米系カード会社の中国でのネット通販決済も解禁するが「中国では現地カード会社が市場を押さえて参入余地がない」(金融当局関係者)。懸案である鉄鋼の過剰生産問題は棚上げしたままだ。

制裁合戦の恐れ

 「そもそも100日計画は中国側が持ちかけた」。米中外交筋はそう打ち明ける。政治任用が遅れ人材不足の米国。中国の責任者は09年から長く米中経済対話を仕切る朱光耀財政次官だ。米産業界には中国ペースの経済外交にいらだちが募る。

 「中国を為替操作国に指定する大統領令は既に用意してある。トランプ氏がポケットから出さないだけだ」。政権移行チームで通貨政策を担当した著名エコノミストのジュディ・シェルトン氏は日本経済新聞の取材にそう明かす。トランプ政権は新たな鉄鋼の輸入制限も検討しており、貿易摩擦の懸念が再び強まる。

 17年の米新車販売は8年ぶりの前年割れが濃厚。米景気は盤石ではなく国内世論は一段と保護主義に傾きやすい。トランプ政権が中国製品に45%の関税を課せば、中国の国内総生産(GDP)は年3%弱も下振れするとの試算がある。一方で中国は米国債の巨額保有国。米中が制裁合戦をちらつかせるだけで、世界市場は動揺しかねない。

 米中摩擦の激化は米国の対日圧力が弱まることを意味しない。支持率低下に苦しむトランプ氏は8日の日米首脳会談で、対日貿易赤字の是正に言及した。地理的にも経済的にも米中の横に立つ日本は、対立が起こす混乱の影響を最初に受ける。

(ワシントン=河浪武史)



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