そこが知りたい 戦略2017(4) 鉄冷え、局面は変わった か?新日鉄住金社長 進藤孝生氏 完全復活は5年かかる 2016/12/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「そこが知りたい 戦略2017(4) 鉄冷え、局面は変わったか?新日鉄住金社長 進藤孝生氏 完全復活は5年かかる」です。





 中国発の供給過剰に苦しめられてきた鉄鋼業界に変化の兆しが出てきた。今年半ばから市況は回復傾向にあり、中国の安値鋼材は鳴りを潜め世界では値上げの機運が高まる。一方で保護貿易主義への懸念は消えない。市場は上昇トレンドに入るのか。新日鉄住金の進藤孝生社長に聞いた。

 ――鋼材市況は緩やかに回復しています。鉄冷えの局面は変わりますか。

 「昨年は中国の過剰生産、過剰輸出から市況は大幅に悪化し12月が大底だった。ただコスト割れして生産するという中国企業の姿勢は変わってきた。中国は自動車販売やインフラ投資などが鉄の内需をけん引しており、輸出は落ち着いている。原料炭高騰を価格転嫁する機運も世界的に出ており、2017年は見える景色は違ってくる」

 「ただ完全復活には5年ほどかかるだろう。中国は今後5年で1億5千万トンの能力削減を表明したが、本当に実行されるか2年目の17年が正念場だ。1億5千万トンで十分かと言われれば、(12億トンといわれる)能力全体のうち2割の削減が必要という指摘や、削減には10~30年かかるという見方もある。いずれにせよ中国の能力削減抜きに鉄鋼業の将来はない」

 ――反自由貿易などを訴える米トランプ次期大統領の言動も気がかりです。

 「鉄鋼は反ダンピング(AD、不当廉価)の頻発など保護貿易が強まった1年だった。米国ではADを連発し国内鉄鋼業を守ったことでニューコアなど不振だった企業の業績が上向いているが、長続きしない」

 「トランプ氏は(鉄鋼業が栄えた)『ラストベルト(さび付いた工業地帯)』の復活を唱えるが、再投資しても(老朽化設備やコスト高から)競争力にはつながらないはずだ。ただ北米自由貿易協定の見直しになれば、自動車鋼板を手がけるメキシコの合弁工場への影響は避けられない」

 ――反自由貿易のなかで海外の収益力をどう安定させますか。

 「輸出はADで高関税を課されても、輸出先の現地顧客がほしい技術と品質に優れた製品に集中していく。当社レベルの電磁鋼板や超ハイテン(高張力鋼板)は海外現地メーカーにはできない。自由貿易を訴えていくが、グローバル市場に対応した製品の競争力は維持し続ける」

 ――原料炭高騰に伴い価格転嫁を進めています。

 「このままでは赤字に陥り製品を再生産できないと顧客に説明し、理解を求めるしかない。東京五輪関連など需要は底堅く、17年は16年を上回るとみている。アジアの熱延コイルの市況も回復しており、値上げの環境は悪くない」

 しんどう・こうせい 73年(昭48年)一橋大経卒、新日本製鉄(現新日鉄住金)入社。82年米ハーバード大院修了。人事、経営企画畑が長い。14年から現職。秋田県出身。67歳

中国国有大手の設備統廃合カギ

 鉄鋼の構造不況は国際政治の議題になるほど深刻だ。民間企業の自助努力ではなすすべがない中国の過剰能力問題は今年、日米欧や新興国の20カ国・地域首脳会議などでようやくメスが入った。

 能力削減をめざす「グローバル・フォーラム」は12月に第1回会合があり、出席した政府担当者は「中国がどこまで本気か判然としなかった」と明かす。2017年の注目は国有大手宝鋼集団と武漢鋼鉄集団の合併完了後に出る設備の統廃合計画だ。大胆な製鉄所の廃棄を打ち出せば投資家は前向きな評価を下し市場は動くだろう。(上阪欣史)



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