もがく農産物輸出(2) 和牛、引っ張りだこなのに 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「もがく農産物輸出(2) 和牛、引っ張りだこなのに」です。





「ランチは2人を除くと全員外国の方です」。6月26日、ステーキみその神戸本店(神戸市)店長の安藤哲矢(46)は店内を見渡しこう話した。インドネシアから訪れた男性は「これを食べるために日本にきた」とブランド牛の神戸ビーフを使った2万円を超えるコースをぺろりと平らげた。

(画像:神戸ビーフ目当ての訪日客は多いが…(ステーキみその神戸本店))

外国人が多く訪れる神戸発祥の神戸ビーフは海外での知名度が高い。観光客だけではない。6月中旬、白衣を着た約50人の米国人が神戸中央卸売市場を訪れた。米農務省の貿易担当次官をはじめ、畜産が盛んなオレゴン、アイダホ州などの農政担当者と食品企業が過去最大級の編成でそろい踏み、関心の高さをうかがわせた。2017年の和牛輸出額は前年比41%増の192億円で、生鮮品でトップクラスだ。

和牛の輸出先は香港が3分の1を占め、一部地域に偏っているのが現状だ。海外需要増と裏腹に生産現場では需要に応じた供給が進んでいない。「処理場が不足している」。4月、都内の自民党本部で開かれた農産物輸出促進対策委員会で伊藤ハム米久ホールディングス執行役員の野須昭彦(60)は訴えた。同社は南九州子会社の処理場を通じ輸出する。

海外で知名度の高い神戸ビーフも欧米向けには神戸港から直接輸出できず、鹿児島まで輸送して処理している。こうした状況を打開しようと17年に姫路市で開業した食肉処理施設、和牛マスター食肉センターは欧米基準に対応した認証取得を進める。社長の池田政隆(64)は「輸送費だけでなく、長距離移動で肉質が落ちる方法は変えたい」と意気込む。

内向きの規制が輸出を阻む例もある。国内でブランド牛として知られる松阪牛は三重県の一部地域で一定期間育て、地元か東京食肉市場でと畜する決まりだ。ところが東京食肉市場は欧米への輸出認証がない。特例的に群馬の施設を通じて米国などに輸出するが、数量はわずかだ。このため松阪牛でさえ、外国人からは神戸ビーフの一種と間違えられることもあるという。

生産者の落ち込みも拍車をかける。農林水産省によると17年の子牛を育てる繁殖農家の数は10年前から4割減少した。子牛の価格高騰で肥育農家の経営は厳しい。関東で肉用牛を育てる男性は「いつ経営が立ちゆかなくなるか分からない状況で輸出を増やせと言われても現実味がない」とため息をつく。

(敬称略)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です