もたつく景気(3) 世界、頼れぬ「米中」エンジン 政治迷走追い打ち 2016/04/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「もたつく景気(3) 世界、頼れぬ「米中」エンジン 政治迷走追い打ち」です。





 「製鉄所を解雇された。なぜ中国のダンピング(不当廉売)を取り締まらない」。米大統領選候補のヒラリー・クリントン前国務長官は、支持者から経済対策の不備を詰問されることが増えた。

 米経済は一見したところ好調だ。3月の新車販売台数は15年ぶりの高水準を記録し「失業率が改善して消費者心理もいい」(フォード・モーターのマーク・フィールズ最高経営責任者)。個人消費に支えられ、米国の景気拡大は6年半を超す。

 その好循環に新興国の景気減速が影を落とす。USスチールの2015年の売上高は前年から3割も減り、建機のキャタピラーも16年の売上高がピークだった4年前より3割少なくなりそうだ。

 全米の雇用者数は月平均20万人強増えて底堅いが、製造業に限れば2カ月連続で減少した。アトランタ連銀は、輸出と設備投資の減少で1~3月の実質成長率が0.1%に急減速したとみる。

余剰人員180万人

 「政策を総動員する」。20カ国・地域(G20)は2月末の財務相・中央銀行総裁会議で宣言し、株安・資源安に歯止めをかけた。だが米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は「海外経済の見通しがさらに弱くなった」と話す。「下振れ圧力が大きい」(李克強首相)という中国経済が米景気の足を引っ張る。

 中国メディアによると国有鉄鋼大手の鞍鋼集団(遼寧省)は16万人いる従業員を3年間で4割減らす。中国は08年のリーマン・ショック後の過剰投資で余剰設備を抱え、余剰人員は石炭・鉄鋼業だけで180万人いる。「20年まで年平均6.5%以上」を掲げた成長目標の達成は視界不良だ。

 国際通貨基金(IMF)は今年の世界成長率見通しを3.2%に下方修正した。6年ぶりの低い伸びだった昨年から底ばいで、米中の二大エンジンの出力が鈍る世界経済は「長期停滞」(サマーズ元米財務長官)、「大低迷」(スティグリッツ・コロンビア大教授)と悲観的に表現され始めた。

 過剰設備の削減や低利益の「ゾンビ企業」の淘汰という構造改革を迫られる今の中国に、リーマン後に4兆元(約70兆円)の財政出動で世界景気を支えた姿の再来は望めない。長期停滞を避けられるかの分水嶺に立つ世界経済に必要なのは、国境を越えて自由貿易やインフラ投資を促し、成長を再点火させる政治の指導力だ。が、その政治は混迷の色を深める。

高まる不信感

 「苦しい数日間だった」。キャメロン英首相はパナマの法律事務所から流出したタックスヘイブン(租税回避地)関連の文書を巡り、亡父が設けたファンドに投資していたと認めた。「無関係」との説明を翻し、激しい非難を浴びる。英は6月に欧州連合(EU)への残留の是非を問う国民投票を控える。もし離脱となれば世界経済の混乱は避けられず、足元の政治不信の高まりは痛恨だ。

 世界景気の頼みの綱である米も「環太平洋経済連携協定(TPP)には賛成できない」(クリントン氏)と内向き姿勢を強める。政治の迷走が世界経済にとって見過ごせないリスクになりつつある。

(景気動向研究班)



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