ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(3)単身世帯 貯蓄ゼロ4割 2018/06/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(3)単身世帯 貯蓄ゼロ4割」です。





「いつでも現金が引き出せるという安心感があるのはありがたい」。警備大手のきたむら(東京・杉並)で働く警備員の中村紀久さん(仮名、42)には、給与随時払いサービス「キュリカ」が欠かせない。給料日前でも、働いた分の最大7割をコンビニエンスストアのATMなどで引き出せる。「親族の葬儀で新幹線代が必要になったときは、本当に助かった」

(画像:遺品整理で思わぬ所から現金が見つかることは多い=ワンズライフ提供)

キュリカを運営するヒューマントラスト(東京・千代田)は2017年に現在のサービスを始めた。現在の導入企業は100社、利用者は11万人に達したという。阪本昌之社長はこのサービスの引き合いが増えている一因として「貯蓄のない非正規雇用者が増えていることがあるのではないか」と推察する。

日銀の異次元緩和が始まり、6年めに入った。株価や不動産価格の上昇に比べて、賃金は伸び悩んでいる。この間に企業は景気の波に応じて雇用の調整をしやすい非正規社員を増やした。非正規社員と正社員の賃金格差は依然として大きい。資産を持たない層は緩和の恩恵にあずかりにくい。

金融広報中央委員会の調査によると、17年の単身世帯の平均貯蓄額は942万円だった。異次元緩和前の12年に比べて242万円増えて一見、豊かになっているように映る。だが単身世帯全体を貯蓄の残高順に並べたとき、中央に位置する中央値世帯の貯蓄額は32万円で、5年前の100万円から大幅に減った。金融資産ゼロ世帯が4割超と増えているためだ。

1万円札を1万3000円で出品――。フリマアプリの「メルカリ」で額面を超える額で現金を販売したとして17年11月、男女4人が逮捕された。実質的に超高金利での貸し出しだったとの疑いだ。

運営するメルカリ(東京・港)は4月、現金出品を原則禁止したが、その後も紙幣を加工した「オブジェ」などの出品が後を絶たなかった。多重債務者などお金に困った人々が買ったとの見方がもっぱらだ。

一方で2月に兵庫県で合計1000万円が見つかるなど多額の現金がゴミ処理場から発見されている。警察庁によると拾得物として届けられた現金は16年に全国で177億円とこの10年間で3割ほど増えた。

「タンス預金」が誤って捨てられてしまうケースも少なくない。遺品整理のワンズライフ(東京・世田谷)の上野貴子社長は「靴箱や冷蔵庫など思わぬ場所から現金がでてくる」と話す。「高齢者は銀行に行くのも大変だし、金融機関が破綻した記憶が強く、手元に現金を置きたがる」と上野社長はいう。

日銀はお金を市中に潤沢に流して景気をよくしようとしてきた。しかし家庭にためこまれ、物価に影響しないまま、捨てられるケースもでてきている。第一生命経済研究所の熊野英生氏は、タンス預金の額を47兆円と試算する。行き場をなくしたマネーの膨張は、金融緩和が物価上昇に直結しない現実の一面を映している。



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