ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(4) 低金利競争 悩む地銀 2018/06/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(4) 低金利競争 悩む地銀」です。





「今年度の設備投資額は前年度の2倍」(前橋の生産用機械)、「新規店舗開設や既存店の改装を積極化している」(沖縄の小売り)――。日銀が全国の各支店で集めた地域経済報告には、前向きな情報が目立つ。

(画像:広島市中心部には、地元金融機関と並びメガバンクや近隣県の地銀が店舗を置く)

2017年度の日本の設備投資額は87兆円弱と、バブル期に迫る25年ぶりの高水準になった。日銀幹部は「金融緩和によって、設備投資には大きな効果が表れた」とみる。

「最近は支払利息が気にならない」と信越地方のある運輸会社社長はいう。メガバンクも含む計7行と取引している。各行が競って金利を下げるため、かつて1%台だった借入金利は今では0.5%前後まで下がっているという。

対照的に銀行の表情はさえない。ある地方の金融機関の融資担当者は最近、取引先の企業から同社の新規融資の借入先を決める入札に参加するよう一方的に言い渡された。「10年以上メインバンクとして付き合ってきたのに」と肩を落とす。

金融緩和により金利は下がり、企業は資金を調達しやすくなる一方、金融機関は収益を圧迫されている。国内銀行による新規貸し出しの平均利回りは異次元緩和前の12年末の1.1%に対し、直近は0.6%にまで落ち込んでいる。

貸出金利の引き下げ競争が特に激しさを増しているのが、人口や企業が集積する地方の中核都市だ。

「『ヒロシマ金利』ですよ」。ある地銀関係者はこう話す。他県の地銀を含む競合行が、企業や個人に今の借り入れよりも低い貸出金利を示し、借り換えさせるケースが増えている。広島には資金需要の強さを映し、広島銀行やもみじ銀行など地元に本店を置く銀行に加え、島根や岡山、愛媛といった周辺地域の地銀も支店を構え、融資の争奪戦を繰り広げる。

全国平均を下回る低金利地域といえば、地元の金融機関数が多く、競争の激しい「ナゴヤ金利」が有名だ。今や名古屋特有の現象ではなく、競争が激しくなった地方中核都市では地元のトップ行でさえ貸出金利を決める主導権を握れない。

低金利競争から抜け出したい地銀の多くは、財務体質がやや脆弱な企業への融資に向かう。リスクを取る分、健全な企業よりも高めの金利で融資できるからだ。だが日銀はそれがリスクに見合わない低採算融資になっていないかと警鐘を鳴らす。

低採算先が中小企業向け貸し出しに占める割合は16年時点で25%と、金融危機後の不良債権処理問題に直面していた00年代初めと同水準まで上昇した。

日銀で審議委員を10年つとめた須田美矢子氏は「長引く金融緩和で世の中はお金にコストがかかることを意識しなくなった」と話す。超低金利でお金を調達できるために、本来なら市場から退去を迫られるような企業も生きながらえてしまう。緩和のゆるみが企業の新陳代謝を阻み、生産性を悪化させ、超低金利のゆがみが地銀を圧迫する。

金融緩和が金融不安を招きかねないという皮肉な日本の姿がそこにある。

後藤達也、福岡幸太郎、浜美佐、今堀祥和、馬場燃が担当しました。



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