アジアの振り子、米に戻るか トランプ氏、関与継続表明中国の影響力 拡大に不安 2017/11/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「アジアの振り子、米に戻るか トランプ氏、関与継続表明中国の影響力拡大に不安 」です。





 トランプ米大統領は10日、訪問先のベトナム・ダナンで演説し「我々はインド太平洋地域のパートナーであり、同盟国だ」と訴え、アジアへの関与を続ける姿勢を鮮明にした。だが「米国第一」は譲らず、多国間交渉を通じて地域全体に自由貿易のルールと理念を広げる先導者の役割には背を向ける。代わりに台頭してきた中国は、大国としての影響力の一段の拡大に余念がない。アジアの主導権を巡る振り子は米に戻るのか。(関連記事総合2、国際面に)

 「全てのインド太平洋諸国との友情の絆と貿易関係の強化に向けて協力するためにここにきた」。アジア政策を初めて包括的に表明したトランプ氏は「『自由で開かれたインド太平洋』というビジョンを共有するのは誇らしい」と、アジアに関与し続ける姿勢を明確にした。

貿易協定、2国間で

 もっとも「全ての国が自国を第一に考えるように、私は米国を第一に考える」とクギを刺した。自身による環太平洋経済連携協定(TPP)離脱の決断を正当化し、「公正で互恵的な貿易という原則を守る国とは2国間の貿易協定を結んでいく」と強調。多国間の枠組みによる国際協調を重視したオバマ前政権との違いを改めて印象付けた。

 自国優先に傾く米国のスキを突き、地域の盟主の座をうかがうのが中国だ。トランプ氏の直後に演説に立った習近平(シー・ジンピン)国家主席は「アジア太平洋の平和と安定、繁栄はアジアの人々に属する」と語った。独自の勢力圏づくりを急ぐ。米中が太平洋を挟んでせめぎ合う構図が深まっている。

 むろん、安全保障面ではなお米国の軍事的な実力が中国を圧倒している。トランプ氏も「力による平和」に大きく傾き、強力な米軍の存在を誇示する。自身のアジア歴訪に合わせ、西太平洋に米空母3隻を同時に展開させる異例の軍事訓練の実施を決め、北朝鮮をけん制した。南シナ海では中国の動きに目を光らせ、「航行の自由」作戦は政権発足から4回を重ねる。

 「戦略的忍耐」と称して北朝鮮の核・ミサイル開発を事実上放置し、「航行の自由」作戦の提案を何度も退けたオバマ前政権との違いがここでも際立つ。

 だが安全保障と両輪であるべき経済外交戦略は乏しい。

 2008年のリーマン・ショック以降、世界経済における米国の存在感は低下し、中国が躍進した。東南アジア主要国をみると、07年にフィリピンやタイの最大の輸入相手は米国や日本だったが、いまや軒並み中国がトップ。中国マネーもアジアに押し寄せる。だがトランプ政権はアジアの「中国化」に歯止めをかけるTPPからの離脱を決め、貿易や投資のルールづくりを主導する座を自ら捨てた。

 米国が中国への警戒感を緩めたわけではない。「『略奪経済』がはびこる無秩序な地域にしてはならない」。ティラーソン米国務長官はこう話す。念頭にあるのは、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」だ。途上国に多額の資金を貸し、返済が滞れば経済権益を得る手法と警戒する。米外交問題評議会のシーラ・スミス氏は「米国はTPPなしで、どうやって経済秩序をつくるのか」と指摘する。

主導権争い激しく

 中国経済は年7%近い成長を続けており、30年代に米国を抜いて世界一の経済大国になるとの見方もある。アジアの中国依存が強まるのは自然な流れだ。だが強引な海洋進出が象徴するように中国はアジア諸国との摩擦をいとわず、アジアでは「中国化」の加速への不安も根強い。タイの英字紙「ネーション」は9日の社説で「トランプ氏は米国第一の立場を緩和しなければならない」と呼びかけた。

 本来なら地域の安定を守るべき米国が秩序を揺さぶるリスクにどう対応するか。ヒントはある。

 トランプ氏はアジア歴訪中に何度も「自由で開かれたインド太平洋地域をめざす」と口にした。法の支配など価値観を共有するオーストラリアやインドを巻き込み、自由貿易や海洋安全保障の枠組みづくりをめざす構想だ。もともと日本が提唱した戦略で、米側が賛同した。日本の外務省幹部は「トランプ政権を多国間の枠組みに引き込んだ意味は大きい」と語る。

 トランプ政権のアジア戦略はいまだ具体策に欠けるだけに、日本やアジアが知恵を絞る余地がある。中国の経済力に期待する半面、「中国化」が歯止めなく進むことに不安を覚えるアジア。トランプ氏はその現実を的確にくみ取れるか。米国がアジアの経済、外交を巡る主導権を今後も握り続けることができるかどうかのカギとなる。

(ダナン=永沢毅、張勇祥、富山篤)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です