アジアひと未来(5)ネットの扉 世界に開くか 2015/01/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「アジアひと未来(5)ネットの扉 世界に開くか」です。





 昨年11月11日。米東部時間の午前9時半、通信回線を介してニューヨーク証券取引所の取引開始を告げる鐘を鳴らしたのは、約1万1千キロメートル離れた北京にいたアリババ集団会長、馬雲(ジャック・マー、51)だった。

 「100年後にまた鐘を鳴らしてほしい」。NY証取社長のトーマス・ファーリー(40)の激励に馬が応じた。「我々のサービスを通じて世界の変革に貢献したい」

 数字の「1」が並ぶこの日を中国では「独身の日」と呼び、一大商戦となる。当日のアリババの電子商取引(EC)サイトの取引額は912億元(約1兆7千億円)。カンボジアの国内総生産(GDP)に匹敵する。

 インターネットで取引相手を見つけたい企業・個人を吸い寄せ、創業16年で年4億人が利用する仕組みをつくり上げた馬。英語教師から身を起こした姿は「チャイナ・ドリーム」を体現する。14年9月のNY上場では史上最大の250億ドル(約3兆円)を資金調達した。

 「中国株式会社」の顔となった馬に米市場は洗礼を浴びせた。上場後に1株119ドルをつけた株価は1年後、一時60ドル台まで下落。米投資情報誌バロンズは「さらに5割下がる可能性がある」と警告し、アリババは「根拠がない」と抗議した。

 背景にあるのは中国勢への異端視だ。閉鎖的な13億人市場でアマゾン・ドット・コムのような米国のサービスをまねただけ――。売上高の9割が国内という内弁慶ぶりこそが中国経済の減速で株が売られた原因だった。

 馬は反論する。「会社が大きくなるとイノベーション(技術革新)は生まれにくくなるが、我々は違う」。取り出したスマートフォン上のチャット(会話)アプリには経営会議メンバー約30人がずらり。「月に1回の取締役会ではなく、1日に何度でも意思決定する」

 革新性は利用者が評価する。「アリババなしに事業は成り立たない」。ネット家電のCerevo(セレボ、東京・千代田)は少量製造の委託先工場をECサイトで見つける。社長の岩佐琢磨(37)は「数万の工場をネットで結ぶ仕組みは世界で他にない。間違いなく技術革新だ」と言う。

 「周囲が思うほど我々が悪くないのは革新力、逆に良くないのが投資家との対話力」と馬は認める。米株主の大半は自社のサイトを使ったことがない現実がもどかしい。

 布石は打つ。米の技術ベンチャー、シンガポールポスト、インドの電子決済企業……。即断即決で大小の海外企業へ出資しつつ、ビッグデータ解析も急ぐ馬。「いずれ世界20億人が我々のサービスを使う時代が来る」と世界進出を誓う。

 中国のネット利用者は6億5千万人と米国人口の2倍に達する。巨大な母国市場を背に、規模だけみれば世界上位に食い込む中国企業だが、閉じた市場で培った技術や戦略が世界で通用するかは分からない。馬が背負うのは中国産業界の課題そのものだ。

(敬称略)



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