アジアひと未来 呪縛を超える(2) 新産業創造自らの手 で テンセントCEO・馬化騰氏 2017/4/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「新産業創造自らの手で テンセントCEO・馬化騰氏 呪縛を超える(2)」です。





 「中国のシリコンバレー」の異名をとる1千万人都市、深?。その中心にそびえる騰訊控股(テンセント)本社ビルで、2週間に1度の幹部会議は、朝10時から始まる。

 会議が最高経営責任者の馬化騰(45)の「独壇場」(出席幹部)と化すのは夜も更け、日付が変わる頃からだ。

 「我々の世界では1秒で形勢が一変する」。事業アイデアや経過報告の聞き役に徹していた馬が童顔を真っ赤にして危機感を訴える。

 愛称はポニー・マー(小馬)。天体観測を好んだ内気な少年はのちに「中国IT(情報技術)の新星」と称される。テンセントが運営するSNS(交流サイト)「微信(ウィーチャット)」の登録者は9億人に迫る。「微信があれば何でもできる」。中国人の生活の新たな常識だ。

 対話機能や世界最大手のスマホゲームに強みはとどまらない。中国の買い物の風景がここ数年で劇的に変わっている。

 決済アプリ「微信支付(ペイ)」。人海戦術で広い中国のあらゆる街のあらゆるタイプのお店のレジに専用のQRコードを貼り付けた。スマホをかざせば数秒で支払いができる。現金やクレジットカードを不要にした。

 創業20年足らずでテンセントの時価総額は30兆円に膨らんだ。ライバルのアリババ集団などを抜き去り、アジア企業首位に浮上した。

 「李先生のような影響力の強い人になってほしい」(親戚の馬鎮城、71)。馬の故郷は広東省潮汕。香港で最大財閥を築いた李嘉誠(88)ら多くの起業家を輩出した土地柄だ。馬にとっての飛躍の舞台は、国有企業に勤めた父の転勤で移った深?だった。

 香港の繁栄に隠れた一地方都市が変貌するきっかけは、馬が深?大学の学生だった1992年、時の最高実力者、鄧小平がこの地で発した「南巡講話」だ。停滞する中国の「経済改革・開放の再加速」を呼びかけ、深?はその前線基地となる。

 友人4人と立ち上げた小さな携帯メッセージ会社から始まったテンセントの軌跡は深?の勃興と重なる。「先に豊かになれる者から豊かになりなさい」。3兆円近い資産を築いた馬は鄧の「先富論」の申し子でもある。

 だが海外の技術を取り込む一方、自国市場は閉ざす。そんな中国流の「改革・開放」は世界市場が国境をこえて一体化するネット時代に修正を迫られる。微信を武器に海外展開を加速する馬は言う。「模倣は限界。将来は技術が勝負を決める」

 中国のスマホ決済額は昨年倍増し、米国の50倍の600兆円に膨らんだ。銀行なしにお金のやり取りを完結する圧倒的な利便性は、もはや模倣の次元を超え、これまでの金融の姿を根底から変革する潜在力を示す。

 自動車のヘンリー・フォード、スマホを世に送り出したスティーブ・ジョブズら米国が先導してきた新産業の創造をアジアが担う日が来るのか。馬の挑戦はそんなイノベーションの主役交代の行方を占う。(敬称略)



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