イノベーションとルール(3)主戦場はアジア法「輸出」で市場取り込む 2017/8/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「イノベーションとルール(3)主戦場はアジア法「輸出」で市場取り込む」です。





 今年、会社法を約100年ぶりに大改正するミャンマー。法整備支援に携わった日本の官僚の1人は今も首をかしげる。「どうしてこんなことになったのか……」

ヤマトホールディングスは小口保冷輸送の国際規格作りを進める(シンガポールの拠点)

主導したはずが

 政権への長年のパイプを生かし、日本は同国証券取引所の開設を主導するなどルール作りでリードしてきた。だが、ビジネスに影響の大きい会社法と倒産法でできた法案は、オーストラリア法を基礎にしたものだった。

 「アジア最後のフロンティア」の同国で、各国が法支援合戦を繰り広げる。成長市場に、自国企業がビジネスしやすい環境を移植する狙いだ。

 会社法では、アジア開発銀行に助言する豪州人弁護士らがミャンマー政府に食い込んでいた。日本企業には「慣れない法体系が欧米企業との競争で不利に働きかねない」(日本政府関係者)。

 会社法の世界にとどまる話ではない。スマートフォンが象徴するように新技術は瞬時に世界へ広がる。イノベーションとルールは同時に広めないと勝負で負けかねない。

 タイで昨年、欧州が得意とするディーゼル車の弱みが薄まった。同国は従来、エンジン排気量に応じて課税していた。だがドイツ自動車工業会が、二酸化炭素(CO2)排出量に応じた税率に改めれば税収全体も増えるとの試算を提示。税制が改正され、ディーゼル車とハイブリッド車との税率格差は縮小した。

 “法の輸出”の主戦場のアジア。守勢の日本も、相手国にも利益になる「ウィンウィン」の関係を訴え、反攻に出る。

 スリランカのコロンボで3月、日本製の医療機器の展示会に長蛇の列ができた。仕掛けたのは日本貿易振興機構(JETRO)。日本では法律が義務付ける社員の健康診断を根付かせる試みだ。制度が根付けば現地で社会問題化する生活習慣病の予防に役立つ一方、日本の高性能機器の需要が増えるとの読みがある。

地デジで存在感

 地上デジタルテレビ放送の規格では日本が一定の存在感を示す。米国に先行されたが、一つの送信機からテレビと携帯電話の両方への放送が可能で、災害時の情報発信機能に強い点をアピール。ブラジルなど中南米のほかフィリピンやスリランカへの導入に成功した。

 ヤマト運輸の「クール宅急便」が国際標準になる日が来るかもしれない。ヤマトホールディングスは自社サービスを基にした小口保冷輸送の国際規格作りに着手。まず今年2月、英国の標準化機関での規格化に成功した。国土交通省などの支援も受けながら、今後はより影響力のある国際標準化機構(ISO)の規格策定も視野に入れる。

 アジアではネット通販の普及で生鮮品の宅配が急増。ヤマトも進出先を広げるが、現地では温度管理がずさんな業者も増えた。日本主導のルールで市場を固めれば、保冷宅配の信頼を高められるうえ日本にも追い風だ。

 東京大学の柏木昇名誉教授は日本の法支援について「国際貢献主眼で、ビジネスに役立てる発想が乏しかった」と話す。発想の転換が必要だ。



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