インド中銀総裁退任表明 与党支持団体が圧力 金融政策意思決定巡り政権と溝 2016/06/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「インド中銀総裁退任表明 与党支持団体が圧力 金融政策意思決定巡り政権と溝」です。





 【ムンバイ=堀田隆文】インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁は18日、総裁職を退任すると表明した。任期満了となる9月以降も期間を延長するとみられていた中での退任表明は、同氏に不快感を示すヒンズー教至上主義団体の声に同団体を支持基盤とするモディ政権が突き上げられたことが背景にある。宗教に基づく政治団体の意向が経済政策にまで及んだことは、成長路線を掲げる政権の今後の運営に暗い影を投げかける。

ラジャン総裁の退任表明は、政権との溝を浮かび上がらせた

 ラジャン氏は総裁の1期3年の任期が満了する9月4日に退任すると表明した。同氏以前の中銀総裁は過去4代にわたり、任期延長などで5年前後務めてきた。ラジャン氏も6月上旬に準備銀が開いた政策決定会合後の記者会見で「皆さんから臆測する楽しみを奪いたくない」と冗談を述べつつ、去就は政府との協議後に決まるとした。余裕のある表情は「任期延長」という印象を与えた。

 だが一転、18日に準備銀職員向けに出した声明では「熟慮し政府と協議した結果、学術界に戻る」と退任へ強い意志を示した。声明は政府のある外務官僚が数日前に「延長以外、選択肢はない」と述べるなど周囲の見通しを覆し驚きを呼んだ。

 今回の「異例」の流れの背景には、政権与党インド人民党(BJP)の支持基盤であるヒンズー教至上主義団体、民族義勇団(RSS)がラジャン氏の任期延長に強硬に反対したことがある。

 発端は2015年10月のラジャン氏のデリーでの講演に遡る。「経済発展のためには(他者に対する)寛容さと敬意が欠かせない」と同氏はRSSによる多数派ヒンズー教徒の価値観の押しつけを批判した。同教徒が神聖視する牛の肉の販売を禁止するといった動きが広がり、少数派のイスラム教徒などを脅かすとして社会問題化していた。

 「通貨や物価の番人」である中銀総裁の立場を超えた内容にRSSから批判が出た。RSSはBJPに多大な影響力を持つ。BJP幹部、スブラマニアン・スワミー氏は「モディはラジャンを辞めさせるべきだ」と表明した。今回、18日時点でRSSがモディ氏に任期延長を拒否する公式見解を送ったとされる。

 ラジャン氏はBJPと対立するシン前首相など前政権下で総裁に指名され、モディ氏と歩調をあわせられるか危惧されていた。だが、ラジャン氏は15年1月に金融緩和姿勢に転換、度重なる利下げでモディ政権の成長路線を支えてきた。同年3月には政府と物価抑制目標の共有で合意した。

 しかし意見対立もあった。今後の金融政策の意思決定を巡る方針の違いで、今回の退任理由の一つとみられる。ラジャン氏は政策の透明性を高めるため、総裁1人が金融政策を決める方式を改め委員会での合議制導入を提唱。委員会の過半を準備銀が出し残りを外部から招くとした。一方、政府は15年夏、委員会の過半数を政府指名とする案を公表。政府が政策決定に関与を強めれば中銀の独立性は損なわれる。この対立は、着地点が見えぬまま現在に至っていた。

 ラジャン氏の実績から任期延長を望む声はビジネス界を中心に多い。外資誘致など開かれた経済改革路線を掲げながらヒンズー教至上主義の内向的な政治信条を持つ点が発足直後から懸念されていただけに、今回の「退任劇」でモディ政権の経済政策への信認は国内外で大幅に低下しそうだ。



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