インバウンド 変わる風景(下)訪日客消費 GDP1%の壁 おもてなし 工夫の余地 2016/06/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「インバウンド 変わる風景(下)訪日客消費 GDP1%の壁 おもてなし 工夫の余地」です。





 家電量販店のビックカメラに台湾からの訪日客の「指名買い」を受ける店員がいる。新宿東口駅前店(東京・新宿)で働く台湾出身の永井恵美さんだ。「すごく親切だった」という交流サイト(SNS)への書き込みが拡散し、ちょっとした有名人になった。

 「日本に行くので商品を取っておいて」。SNSを通じ、こんなメッセージが頻繁に届く。買い物の後は店内で一緒に記念撮影。その写真がまた投稿される。

数はあるのに…

 「おもてなし日本」を海外に発信するSNS。しかし、買い物の様子をアップしようとしても、通信環境が整っていないとの不満が訪日客には根強い。観光庁の調査によると、旅行中に最も困ったことの1位は無料公衆無線LANの30.2%。2位の「言葉が通じない」(21.1%)を大きく引き離す。

 約100万カ所と推計される日本の公衆無線LANは海外と比べても遜色ないという。問題は使い勝手の悪さだ。各地の公衆無線LANは通信会社や自治体が整備し、訪日客は移動のたびに名前や国籍、性別などを登録する必要がある。総務省は一度の登録で異なる公衆無線LANを使えるようにする検討に入った。

 日本独特のルールへの戸惑いも多い。例えば、食券による前払いや現金対応のみという飲食店に訪日客はなじみがない。

 松屋フーズは2017年3月末までに全約1000店の食券販売機を外国語表示が可能な新型に切り替える。英語、中国語、韓国語に対応。外国人が好むメニューを分析し、新商品開発に生かす思惑もある。

 外国人が日本で使ったお金から日本人が海外で使ったお金を引く旅行収支は15年、53年ぶりに黒字に転換した。アジアを中心とする海外の成長が国内に流れ込む。その恩恵に浴するためには飲食店など典型的な内需産業もグローバル化が求められている。

規制緩和が不可欠

 政府は6月2日、20年に訪日客数を4000万人にする成長戦略を閣議決定した。ビザの緩和や円安を原動力に当初の「20年に年間2000万人」を前倒しで達成し、大幅に目標を引き上げた。このためもう一段の規制緩和が欠かせない。

 最大の課題は宿泊施設の整備だ。主要都市のホテルではすでに高水準の稼働が続く。新たな受け皿と期待される民泊のルールづくりはこれから具体化する。

 焦点の一つは営業日数の上限だ。180日以下が一般的な海外に対し、日本の旅館業界は30日以下を強硬に主張する。エアビーアンドビーの共同創設者、ジョー・ゲビア氏は「最終的には国や自治体が決めることだが、規制が多いほど、その経済効果は限られる」と懸念を示す。

 3兆4000億円に膨らんだ訪日客の消費額も対国内総生産(GDP)でみれば0.5%にすぎない。2%に届くイタリアやフランスとの差は大きく、米国やカナダの1%と比べても見劣りする。20年に政府が目標とする8兆円になれば、GDP600兆円経済でも1%の壁を突き破ることができる。そのためには官民で工夫しなければならない課題はまだまだ多い。

 新沼大、藤川衛、伊藤大輔、小高航、原島大介が担当しました。



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