エネルギー日本の選択(1) 思考停止が招く危機 2018/06/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「エネルギー日本の選択(1) 思考停止が招く危機」です。





日本のエネルギー政策が滞っている。原子力、再生可能エネルギー、火力とそれぞれが大きな課題に直面しているが、政府は近く閣議決定するエネルギー基本計画(総合・経済面きょうのことば)でも十分な具体案を打ち出せない。迫る電力危機を回避するため、いま日本がとるべき選択肢を探る。

エネルギー基本計画(総合・経済面きょうのことば

(画像:原発の新設が途絶えている(工事が中断しているJパワーの大間原発))

「もっと議論しないとまずい」「核心に触れてないじゃないか」――。

70年までにゼロ

5月16日、経済産業省の審議会。日本のエネルギーの将来像を決める場のはずなのに、事務方は「日本にとって重要な電源」と公言してきた原子力で踏み込んだ議論を避けた。

コマツの坂根正弘相談役や福井県の西川一誠知事など委員から相次ぎ批判の声が上がったが、結局、経産省が基本計画案に盛り込んだ「最適な電源構成」の原発比率は2030年に20~22%。2015年に決めた前回の数値のままだった。

この「20~22%」はこの3年間、「どう実現するのか」と批判され続けてきた数字だ。現時点では絵空事に近い。

達成には計算上、少なくとも30年に30基を動かす必要がある。だが11年の東京電力・福島第1原発事故の後、再稼働にこぎ着けた原発は9基だけ。今後も大幅に増える見通しは立たない。

しかも原発には寿命がある。運転期間は原則40年で、最長でも60年で廃炉にする必要がある。仮に今あるすべてが60年を認められたとしても、50年末には18基、70年までにゼロになる見通しだ。

官邸への配慮

「原発を活用し続けるなら新設や建て替えが欠かせない」(東京理科大の橘川武郎教授)のは明らかだが経産省は新増設に関する言及を避けた。

同省は基本計画の策定に向け首相官邸と擦り合わせた。「安倍政権はエネルギー問題でリスクをとるつもりはない」(政府関係者)。官邸の意向をくみ取り、原発を争点にするのは避ける方が賢明という過度な配慮が働いたとの見方もある。

エネルギーミックスでは再生可能エネルギーを全体の22~24%、石炭や天然ガスなどによる火力は56%とする目標値も据え置いた。原発で20~22%を達成できなければエネルギー供給が不安定になるが、そうしたリスクへの言及もない。

原発の本格的な再稼働が困難な状況に加え、地球温暖化対策で日本が責任を果たすためにも、もっと再エネを伸ばし火力を縮小すべきだとの指摘がある。経産省も再エネを「主力電源化する」としたが、その覚悟を示すほどの具体案は乏しい。

国が議論を避けている問題がもう一つある。原発のコストだ。

火力は石炭や天然ガスといった燃料が必要で、再エネの技術は発展途上といった理由から、国は「原発がもっとも安い」と言い続けてきた。従来の国内設備の試算では原発の発電コストは1キロワット時あたり約10円、火力は12~13円、太陽光や風力発電は20円以上だった。

だが常識は変わりつつある。ある米投資銀行の試算によると、安全対策費用がかさむ原発は約15セント(約16円)に上昇しているが、急速な普及と技術革新が進む風力や太陽光は世界で5セント程度。すでに原発を逆転した。

経産省は計画策定の過程でこうした外部の試算を使わなかった。原発への逆風がさらに高まることを避けているようだ。

資源に乏しい日本が安全確保を大前提として原発を活用できれば、エネルギー安全保障の上で期待できる役割は大きい。問題は、その意義や課題、実現への工程表を説明できていないことだ。

再エネが急速に普及する欧州も電源構成は火力の48%、再エネの26%に対し、原発も26%を占める。原発を多く抱えるフランスが他国で電気が足りなくなった際に供給するなど欧州全体の安定に一役買っている。

島国の日本が隣国から電力をもらうのは現時点では難しく、いかに自国内で安定電源を確保するかが課題だ。原発にその役割の一端を担わせるとしても、計画から完成までには20~30年という長い時間がかかる。早く具体的な実行計画を決めないと間に合わない。

国策の具体化を民間に委ねる「国策民営」は限界にきている。原発には1兆円単位の巨額の投資がかかるだけでなく、地元の地方自治体から同意を得ることも不可欠だ。

さらに使用済み核燃料の処理の問題は、もはや民間企業が個別に対応できる範囲を超えている。もっと国が前面に立つ必要がある。

原発の活用策を示せないなら、再エネの拡大へ大きくかじを切らないと電力供給に支障が出る。天候によって発電量が変動する再エネを使いこなすには、電気をためておく蓄電池の普及や、電力を融通し合う送電網の整備が欠かせない。

大きな投資を伴う作業の実行には、明確な針路と相当な努力が求められる。早急に思考停止から脱しないと、次世代に大きなツケを残すことになる。



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