エネルギー 日本の選択(4) 石炭火力 狭まる包囲網 2018/06/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「エネルギー 日本の選択(4) 石炭火力 狭まる包囲網」です。





「市の指導方針を考慮した判断で高く評価したい」。仙台市の郡和子市長は1日、住友商事が仙台港近くに計画する火力発電所で、石炭を使わず木質バイオマスにする変更計画にこうコメントした。

(画像:関電が石炭への燃料転換を断念した赤穂火力発電所(兵庫県赤穂市))

計画は当初、四国電力も参加して石炭とバイオマスを一緒に燃やす火力発電所を建設する予定だった。ところが同市は昨年12月、環境への懸念から建設を控えるよう要望。四国電は今年4月に撤退し、住商が単独で計画を継続していた。

パリ協定が契機

石炭火力の計画中止が相次いでいる。Jパワーは18年4月に兵庫県高砂市の発電所の建て替えを断念。関西電力も兵庫県赤穂市の石油火力を石炭に変更する計画を諦めた。

脱石炭の潮流が生まれたのは2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」がきっかけ。長期的に温暖化ガスの大幅な削減が求められ、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力が標的になった。英国やフランスなどは20年代から30年代での石炭火力の廃止を打ち出した。世界の投資家や銀行も環境面から採算が合わないと懸念し、資金を引き揚げ始めた。石炭の包囲網は狭まる。

背景に原発事故

日本が石炭火力を推進する背景には、11年の東京電力福島第1原発事故がある。発電の2~3割を占めた原発が止まり安価で発電力も大きい石炭を基幹電源にすえた。今夏に閣議決定するエネルギー基本計画でも石炭火力の割合を30年で26%とした。石炭の発電コストは1キロワット時当たり12.3円と、石油同30.6~43.4円、液化天然ガス(LNG)同13.7円より安い。

石炭は資源量が多く埋蔵地域の偏在も少ない。可採年数は153年と石油51年、天然ガス53年の約3倍。特にアジアに多い。脱石炭をうたう英国やフランスは原発大国。原発の再稼働が進まず再生可能エネルギーの導入で出遅れた日本に脱石炭の選択はとりづらい。

日本は石炭火力の逆風をかわすため、CO2の排出量を抑える技術の導入を進める。その1つが発電効率の高い石炭ガス化複合発電(IGCC)だ。石炭火力を維持しながら原発や再生可能エネルギーの拡大を進める狙い。ただIGCCも建設コストは2割高く、CO2もLNGより多い。

さらに環境面の課題を乗り越えるには、石炭火力から発生するCO2を地中に埋めて排出を抑える技術の確立が欠かせない。経済産業省は11日、二酸化炭素地下貯留(CCS)の実用化に向けた有識者会合を立ち上げた。CCSは発電コストが約5割増えるともされるが、こうした先端技術を持つ日本企業は多い。高村ゆかり名古屋大教授は「石炭火力にはCCSを条件にするのが世界の潮流」と評価するが「日本は安定した地盤が少なく実用化の課題も多い」と指摘する。

日本を尻目に欧米は先に進む。石油メジャーの英BPなどは炭素価格に基づく排出量取引など「カーボンプライシング」の導入を各国に求めた。炭素価格が付けばCO2排出量が多い石炭は発電コストが上振れし、市場から締め出される。日本のエネルギー関係者は「メジャー企業は石炭を捨て石油とガスを守る戦略だ」と分析する。

日本が石炭火力を維持するなら、環境負荷を下げる技術開発を加速する必要がある。残された時間は少ない。



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