エネルギー 日本の選択(5)電力自由化なお未完 2018/06/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「エネルギー 日本の選択(5)電力自由化なお未完」です。





「行列ができているそば屋の中をのぞくとガラガラ。いつ来店するかもわからない予約客の席を空けている」。送電線網をそば屋に例え、接続ができず多くの風力発電事業者が新設計画を保留する現状を、京都大の安田陽特任教授はこう表現する。背景には原子力発電所など「予約客」の既得権益があるとの指摘だ。

(画像:送電線利用などに電力大手の既得権はなお残る)

先着優先で計算

年間を通じて強い風が吹く東北地方では風力発電の新設計画が相次ぐ。送電線を運営する東北電力が容量不足を理由に接続を断るケースも増えている。問題は、再稼働のめどがない原発の使用枠も確保したうえで空きをはじく「先着優先」の計算方式だ。

東北電は今春、送電線の運用方法を一部変更した。すべての発電所が同時にフル出力になるケースを想定して余裕を確保していたが、実際にはあり得ないため現実的な水準に修正した。これだけで活用できる発電容量が最大6割増えるエリアもある。

こうした運用ルールの見直しは経済産業省も進めているが「先着優先」を抜本的に見直す機運はない。「政府にも電力大手にも改革姿勢はあるとはいえ、既得権の一掃にはまだ遠い」と風力発電事業者の幹部は指摘する。

自ら電線敷設を目指した企業もある。自治体や地銀が共同出資する新電力会社、みやまスマートエネルギー(福岡県みやま市)だ。電力大手に頼らず太陽光発電所や企業、家庭などを結んで再生エネを積極活用する狙いだった。経産省が「既存の送電網と二重投資になる」として補助金を出さず、実現はしなかった。

自由化で先行するドイツは発電と送配電、小売りなどを分離済みだ。日本でも電力自由化の一環で2020年度までに電力大手は送配電部門を分社するが、資本関係は維持できる。独占を維持するなら公平性を高めないと新規事業者は育たない。

ガスや石油といった1次エネルギー全体の消費量はピークの2000年代半ばに比べ1割少ない。電力の場合は東日本大震災前からの6年間で約900億キロワット時の需要が消えた。九州電力の年間販売量に相当する量だ。人口減や省エネの定着により今後も反転は見込みにくい。

時代遅れの体制

大量の安定した電力が必要な高度成長期は、電力会社が収益を確保しやすい独占体制にも一定の合理性はあった。だが、今や需要が縮んでいるだけではない。米国のグーグルやアップルなど、社会の目や投資家を意識して再生エネ由来の電力だけの使用を目指すグローバル企業が増えている。こうした需要に応えられない日本の電力供給体制は時代に合わなくなっているのではないか。

再生エネを本格活用する方針は政府も既に打ち出している。だが、太陽光や風力による発電量やコストは海外に比べると大きく見劣りする。

中国は習近平政権の旗振りで太陽光発電の容量が17年までの5年で36倍に増えた。サウジアラビアは潤沢なオイルマネーで再生エネの導入に動く。米国はシェールガスの活用でエネルギー価格の低下と温暖化ガスの排出削減を両立させている。日本には強権も、資金も、資源もないが、健全な競争の徹底という選択肢はある。

竹下敦宣、西岡貴司、小倉健太郎、竹内康雄、塙和也、飯山順、深尾幸生、辻隆史が担当しました。



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