クルマ異次元攻防(1) 握手か対決か? 攻めるIT、トヨタ動く 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「クルマ異次元攻防(1) 握手か対決か? 攻めるIT、トヨタ動く」です。





 自動車産業に大きな変革の波が押し寄せている。環境規制の強化に加え、人工知能(AI)を駆使した自動運転車の開発や相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透など、IT(情報技術)業界も入り交じった主導権争いが激しさを増す。次世代のクルマを巡る異次元攻防の前線を追う。

 「彼らはデータを欲しがっているが、そこは譲れない一線だ」。トヨタ自動車が5年ほど前から米グーグルと断続的に続けてきた協議。車載情報端末での協力などがテーブルの上に載っているもようだが、21世紀の「巨人たちの握手」はなかなか実現しない。

「つながる」がカギ

 車とIT業界の盟主による“異業種連携”。背景には車を取り巻く構造変化がある。「走る、曲がる、止まる機能に『つながる』が加わる」(豊田章男社長)。半導体の性能向上やコスト低下でデータの収集と活用が本格的に始まった。あらゆる情報を集め、新サービスを生み出そうとするグーグルにとって車から集まる膨大な情報は魅力だ。

 「全ての車のワイパーの状況が分かれば、各地の詳細な気象情報が把握できる」「最近あの通りでオープンした店は行列ができている」――。日米の乗用車に通信機能を標準搭載するトヨタ社内ではこんな会話が交わされている。世界で数千万台が走るトヨタ車がセンサーになり様々なデータを取れれば、無限のビジネスが生まれる。

 「トヨタは5、10年後に振り返ったら違う会社になっているかもしれない」(内山田竹志会長)。約90年前に織機メーカーとして出発したトヨタはその後、車メーカーに変身した。競争軸が車単品の性能からデータへと変わるなか、生産技術の「カイゼン」や部品の「擦り合わせ」などアナログともいえる技術で頂点に上り詰めたトヨタは大転換を迫られている。

 動きは速い。昨年11月に三井住友銀行などと共同で新技術に投資するファンドを設立。2カ月後には「日本では必要な人材を確保できない」(内山田氏)として、米シリコンバレーにAIの研究開発子会社を設けるなど、これまで貫いてきた自前主義と決別した。

人材引き抜き

 AI新拠点のトップにこの分野の第一人者、ギル・プラット氏を招くと、同氏を慕う技術者約10人が、車で15分ほどのグーグル本社から移ってきた。「AIは自動運転に加え、ロボットやトヨタ生産方式にも応用可能だ」(プラット氏)。表向きはグーグルとの協力を模索する一方、机の下では次世代の車開発の主導権争いでしのぎを削る。

 トヨタの挑戦が成功する保証はない。グーグルは、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズと自動運転車の開発で提携。アウディ、BMW、ダイムラーの独3社は通信機器大手ノキア(フィンランド)の地図・位置情報子会社を買収。かつての「台数」ではなく、データを目的とした提携が相次ぐ。

 「ソフトも大切だが、最後は車という製品にする能力が要る。総合力で競争に勝つ」。トヨタの技術開発部隊を率いる伊勢清貴専務役員は強気だが、焦りも感じている。4月の先端技術の社内カンパニー発足の際にこう訴えた。「トヨタは今、変化に対応できた富士フイルムになるか、経営破綻したコダックになるか、岐路に立っている」

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