グローバルオピニオン 中国「共産資本主義」の矛盾 米カリフォルニア大バークレー校教授 プラナブ・バーダン氏 2015/07/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 中国「共産資本主義」の矛盾 米カリフォルニア大バークレー校教授 プラナブ・バーダン氏」です。





 最近の上海・深圳株式市場の乱高下は、中国共産党の指導層にとって試練となった。世界最大で最強の共産党が監督する資本主義の力強い発展という逆説に当惑していたのは、株価が上昇を続ける限り、学者と旧弊なマルクス主義者だけだった。しかし今や、当局はぎこちない措置で株価を制御しようと必死だ。

 新規株式公開(IPO)は全て停止された。中央銀行は、中国証券金融公社が市場安定化のため投資家に株式購入を促すのを支援するよう求められた。政府系ファンドさえも株価支援に乗り出した。

 中国の証券会社が株式売却を顧客に勧める場合、うわさを広めているとみなされると処罰の対象となる。大量に株式を売却すると当局から調査される可能性があるとの報道もある。外国人が中国経済に損害を与えようとしているという陰謀説が飛び交う中、金融の不安定を招く行為は深刻な犯罪とされる場合がある。

 中国政府が求めているのは、共産党支配への信任を揺るがすような大規模な損失発生の可能性がない株式市場だ。しかし、そんな市場はまだだれも発明していない。

 これは中国の経済や政治の至る所で蓄積されている多くの矛盾の一つにすぎない。

 中国共産党はかつて小作農と労働者の革命党だったが、今では実業家、大学生、専門職に支配されている。中国の富豪ランキングを発表している胡潤百富(Hurun Report)によると、ランク入りしている富豪のうち3分の1は共産党員だ。全国人民代表大会(全人代)の代表のうち最も資産が多い70人の平均資産は10億ドルを優に超えている(インド議会や米議会で上位70人の平均資産は遠く及ばない)。

 もちろん、習近平国家主席の最近の反腐敗運動に多くの金権政治家は神経をとがらせている。しかしそれは、汚職撲滅の名のもとに政敵を追い落とすのが目的ではないかという疑問がつきまとう。

 一般の中国人は、おおむね反腐敗運動を支持している。抗議行動を始め、不正直な政府高官を最初に糾弾するのは一般市民だ。ところが、こうした抗議活動があまりに注目を集めると、取り締まりの対象となり、弾圧される可能性の方が高くなる。共産党が認めたがらないのは、共産党の一党独裁体制が続く限り、汚職は根絶やしにできないということだ。

 同様の観察は、法の支配と立憲主義にもあてはまる。共産党は法の支配が「社会主義の核心的な価値観」であり、憲法の権威を推進すると約束した。しかし言論、出版、集会、結社などの自由を保障する憲法第35条や立憲主義全般に中国市民が言及すれば、定期的に検閲され、法廷で憲法を引用する弁護士はしばしば身柄を拘束されるのである。

((C)Project Syndicate)

Pranab Bardhan インド・コルカタ生まれ、英ケンブリッジ大博士。専門は開発経済学。共著書に「開発のミクロ経済学」など。75歳。



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