グローバルオピニオン 対テロ、「開かれた社会」維持を 米ソロス・ファンド・マネジメント会長 ジョージ・ソロス氏 2016/01/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 対テロ、「開かれた社会」維持を 米ソロス・ファンド・マネジメント会長 ジョージ・ソロス氏」です。





 開かれた社会は常に危険を伴う。パリをはじめとする一連のテロ攻撃と、これを受けた米国と欧州、特にフランスの対応によって、今の米国と欧州は特にそうした状況になってしまった。

 過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)やアルカイダのようなジハード(聖戦)主義のテロリストは、欧米社会のアキレスけんを発見した。それは死に対する恐怖心だ。ぞっとするような攻撃や身の毛もよだつような映像を通して、死に対する恐怖を呼び起こし、増幅する。これによって、通常は分別のある開かれた社会の人々が理性を失ってしまう。

 テロリストの究極の目標は、世界中のイスラム教徒の若者に「テロ以外の選択肢はない」と確信させることだ。死の恐怖が、欧州や米国における潜在的な反イスラム感情を呼び覚まし、増幅し、非イスラム教徒がすべてのイスラム教徒を攻撃してくる可能性があると思わせるようになる。

 テロに対するヒステリックな反イスラム的反応は、欧米に暮らすイスラム教徒の間に恐怖や怨嗟(えんさ)を呼び起こしている。その結果、テロリストが生まれる。これは互いに強化し合い、反応し合うプロセスだ。

 こうした状況に歯止めをかけ、反転させるにはどうしたらいいのだろうか。開かれた社会の根底にある価値観や原則を放棄し、恐怖が主導する反イスラム的衝動に敗れてしまうことが答えでないのは確かだ。ただその誘惑にあらがうのは難しいかもしれない。

 聖戦主義者のテロによる危険を取り除くには、これを打ち破るための戦略が必要だ。シリアの紛争を考えてほしい。これは欧州連合(EU)の存亡の危機を引き起こしている移民問題の根本的な原因だ。この問題が解決されれば、世界情勢は改善するだろう。

 ISが弱い立場に置かれていることを認識することが重要だ。世界に恐怖を広げているものの、その本拠地における立場は危うくなっている。国連安全保障理事会が資金源遮断を目指す決議を全会一致で採択し、ISの指導者は、イラクとシリアにおける自らの日々が終わりに近づいていることを認識している。

 もちろんシリアの見通しは極めて不透明だ。ただ一つだけはっきりしていることがある。テロリストが我々にしてほしいと思っていることをするのは誤りだ。

 だからこそ、2016年が始まる中で、われわれは開かれた社会の原則への支持を確認し、(イスラム教徒の米国への入国禁止を主張する)ドナルド・トランプ氏らのような人物による呼びかけに抵抗しなければならない。たとえそれがどんなに難しいとしてもだ。

((C)Project Syndicate)

George Soros ハンガリー生まれのユダヤ系米国人。世界で最も著名な投資家の一人であり、慈善活動家や政治運動家としても知られる。85歳。



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