グローバルオピニオン 新興国、隠れ債務に問題 米ハーバード大教授 カーメン・ラインハート氏 2015/10/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 新興国、隠れ債務に問題 米ハーバード大教授 カーメン・ラインハート氏」です。





 新興国には多くの経済的な脆弱性の兆候がみられる。経済成長と輸出の大幅な減速、資産価格の巻き戻し、経常収支と財政収支の赤字拡大、債務の増大、資本流入の減少や反転といった症状だ。

 転換点になったのは、米金利上昇の見通しと世界的な商品価格の下落によって、新興国への資本流入に終止符が打たれた13年だった。世界資本市場の混乱に拍車をかけ、商品価格の一段の下落を招いた最近の中国の景気減速が、新興国全体の景気をさらに悪化させた。それでもこれらの課題は、少なくともその存在を認識できる。問題なのは、認識や計測がはるかに難しい「隠れ債務」だ。

 汚職と関連している場合もある隠れ債務は、通常はバランスシートや標準のデータベースに表れない。債務の特徴も、関与している人物も、危機のたびに次々と姿を変えるため、手遅れになるまで気づかれないことが多い。

 実際、1994~95年のペソ危機発生まで、メキシコの民間銀行が簿外の借り入れでかなりの為替リスクをとっていたことを世界は知らなかった。97年のアジア金融危機の前に、国際通貨基金(IMF)と金融市場はタイの外貨準備が底をつきかけていたことを認識していなかった。10年のギリシャ危機まで、同国の財政赤字と債務は実際よりずっと少ないと考えられていた。

 重要なのは、新興国の債務がどこに隠されているかだ。残念ながら、これを明らかにするためには、ここ10年間の中国と他の新興国との金融取引の不透明さをはじめとして、重大な障害がある。中国による他の新興国への貸し出しは主に米ドル建てだったため為替リスクを伴い、新興国のバランスシートに脆弱性の次元がもう一つ加わった。

 その貸し出し規模は一般に知られていない。国際決済銀行(BIS)のデータに含まれていないからだ。債権が国際資本市場で証券化されることはまれなため、世界銀行のデータベースにも含まれていない。

 データが存在するケースでも、数字は慎重に解釈する必要がある。ある調査によれば、09~14年の中国のベネズエラへの融資総額は同国の国内総生産(GDP)の18%に当たり、ブラジルへはGDPの1%に近い。しかし、一部のプロジェクトや貸し手、借り手がデータに含まれていない可能性が高い。つまり債務はもっと多い可能性がある。

 要約すれば、新興国の債務は著しく過小評価されているかもしれない。もしそうだとすれば、新興国からの資本流出の規模は一般に考えられているより大きく、危機の引き金になる可能性がある。不透明で変化を続ける金融面のつながりを追跡することが極めて重要になっている。

((C)Project Syndicate)

Carmen M. Reinhart 1955年キューバ生まれ、66年渡米。コロンビア大博士。専門は国際経済学。投資銀行のエコノミストやIMF副理事などを経て現職。



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