グローバルオピニオン 欧州は構造改革加速を クレディスイスプライベートバンキング最高責任者 ハンス・ウルリッヒ・マイスター氏 2015/06/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 欧州は構造改革加速を クレディスイスプライベートバンキング最高責任者 ハンス・ウルリッヒ・マイスター氏」です。

通貨ユーロが急落した先々月からものすごいスピードで相場を回復させたのは、公表される指標が良かったためですが、今後、政治的な問題により、揺れ動く可能性があります。どのような可能性があるのか記載された秀逸な記事です。





 欧州では欧州中央銀行(ECB)が3月に量的金融緩和(QE)を始めた。日本同様に経済の輸出依存度が高いため、ユーロを安くして輸出を促す狙いだ。ユーロは対ドルで下落し、プラスの効果も見え始めている。

 QEは時間を稼げる手法だ。米国はQEを実施しながら改革に取り組み成果を上げてきたし、日本でも前向きの動きが広がっている。欧州もQEを実施しているあいだに経済構造の改革を加速し、成長軌道に乗せる必要がある。

 一方でQEは金利を押し下げることで、資産バブルを招いたり、価格変動を大きくしたりする恐れがある。現状は株価と実体経済のあいだに開きが生じているのは確かだ。しかし投資先を求める巨額のキャッシュがあり、それを考えればバブルが起きているとみるのは早計だ。

 個別問題では欧州連合(EU)によるギリシャ支援が焦点になっている。同国の国際通貨基金(IMF)からの借り入れの返済や同国国債の利払いが危ぶまれている。支援条件として(年金減額など)厳しい条件がつけられているため、交渉が感情的になっている面もある。

 本質はよく見極める必要がある。ギリシャの国内総生産(GDP)はEUの2%にも満たない。(返済などで)多少問題が起きても、それだけで欧州経済に大きな影響が及ぶわけではない。

 注目すべきは政治的側面だと見ている。ギリシャがユーロから離脱するようなことになると、ポルトガルやスペインへの波及が懸念される。より大きいのはギリシャが(中東やロシアに近く)地政学的に極めて重要なことだ。誰もその不安定化は望んでおらず、中期的な解決策の模索が続けられるだろう。

 欧州では改革の過程で国によりばらつきが生じ、ドイツの力が強まっている。欧州最大の経済大国で、輸出大国でもあるだけに、ユーロ安から最も大きな利益を得ている。構造改革も他の国より進んでいる。

 ただ改革に成功したドイツが、南欧に財政問題などで厳しいリストラ要求を突きつけている。歴史的な経緯もあって、ドイツ主導に対する警戒感が強まっているのは事実だ。個人的にはメルケル独首相は他に対して力を持ちすぎない配慮をしてきたし、同氏が首相のあいだはうまくバランスを取ると見ている。

 気になるのはロシアとの関係だ。ウクライナ問題の影響でEUとロシアの関係が悪化している。

 欧州とロシアの経済的な結びつきは強い。経済制裁がより厳しい次の段階になれば、国によってはGDPが0.5~1%程度押し下げられかねない。対立がエスカレートすることは誰にとっても悪い結果しかもたらさない。

(談)

Hans Ulrich Meister 1959年生まれ。UBSを経て2008年クレディスイスへ。富裕層向けプライベートバンキング部門のほかスイス地域最高責任者も兼務。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です