グローバルオピニオン 米、真の脅威は貯蓄不足 米エール大シニアフェロー スティーブン・ローチ氏 2016/06/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 米、真の脅威は貯蓄不足 米エール大シニアフェロー スティーブン・ローチ氏」です。





 米国の政治家は貿易が中間層の雇用や賃金に対する不安の主因だと口をそろえる。現在の大統領選も例外ではない。共和党も民主党も中国と環太平洋経済連携協定(TPP)が米労働者の災いの種と非難する。この説明は政治的には好都合かもしれないが、真実は別のところにある。

 貿易に起因する問題の責任は米国にある。元凶は大幅な貯蓄不足だ。米国は何十年にもわたり身の丈以上の生活をし、貯蓄過剰の国からカネを引き出し、度を超した消費を続けてきた。政治家は有権者の浪費癖を責めるわけにはいかない。他者をやり玉に挙げるほうが簡単だ。

 貯蓄の不均衡は経済を不安定化させる海外への資本流出や資産バブル、金融危機につながる。2008~09年の金融危機以前もそうだった。

 赤字国は世界の金融市場で高い利回りを求める「過剰貯蓄」を責める傾向がある。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ前議長が指摘したように、中国のような国がもっと消費をすれば、米国を破綻の瀬戸際に追い込んだバブルは生じなかっただろう。ただ、その一方で米国の成長は、黒字国からの資本提供がなければ実現しなかったという反論があるのも事実だ。

 貯蓄と支出のバランスをとることが必要だ。特に不均衡の度合いが大きい米国と中国で重要だ。米国はもっと貯蓄し消費を控え、中国は貯蓄を控えもっと支出すべきだ。

 中国は5年前に消費主導による不均衡是正を目指す戦略を導入し、実行してきた。しかし、米国は逆の方向に動いている。米国は個人退職勘定(IRA)や確定拠出年金(401K)の拡大、税制改革、金利の正常化を通じ貯蓄拡大を図るべきだが、政治家は消費ブームを続けることに焦点を合わせている。

 経済規模で世界1位と2位の国の貯蓄への非対称的な対応は幅広い影響を及ぼす。中国の消費主導型経済への移行は、経常黒字と貿易黒字の縮小のほか、外貨準備高と米国債のようなドル建て資産に流入する資金の減少を伴う。

 米国が国内貯蓄を増やさなければ、中国資本の不足によって、米国の海外からの資金調達コストは、ドル安か高い実質金利、あるいは両方を通して上昇する。

 貯蓄せずに無限に繁栄できる国はない。世界の準備通貨を持つ米国がこれまでそうしてこれたのは、他の地域がそれを許してきたからだ。

 しかし、そうした日々は終わりつつある。米政治家は有権者の怒りを外に向けようと、貿易が経済成長を促してきたことを無視している。政治家が居心地の悪い真実を認めるべき時がやってきた。アメリカンドリームの最大の脅威は貯蓄不足なのだ。

((C)Project Syndicate)

Stephen Roach 香港駐在のモルガン・スタンレー・アジア会長などを経て現職。著書に「アメリカと中国 もたれ合う大国」。70歳。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です