グローバル・オピニオン 南米諸国、さらなる改革を マイ ケル・シフター氏 インターアメリカン・ダイアログ代表 2017/1/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバル・オピニオン 南米諸国、さらなる改革を マイケル・シフター氏 インターアメリカン・ダイアログ代表」です。





 南米大陸で左派勢力の退潮が鮮明だ。資源価格の高騰に支えられたばらまき的な政策は持続不可能になり、はびこる汚職に市民は怒っている。アルゼンチンやブラジルでは政権交代が起き、保護主義から脱して海外投資を呼び込もうとしている。この1年間で大胆な政策シフトが起きていることは明らかだが、再び成長軌道に戻すためにはさらなる改革が不可欠だ。

マイケル・シフター氏

 2015年末に発足したアルゼンチンのマクリ政権は1年間で驚嘆すべき改革をなし遂げた。左派政権時代の政策を大転換し、経済を最優先とした。債務不履行(デフォルト)を巡る問題も解決し、国際金融市場に復帰した。

 順調に見えるマクリ政権だが、対内直接投資の増加や経済成長率の向上などの目に見える成果は出ていない。10月には議会選挙がある。議会では少数与党にとどまり、国民が彼をどう評価するかで今後の改革の進捗ぶりは変わる。海外の投資家や企業は、改革で変更した法制度が将来にわたり信頼できるものかどうかを見極めようとしている。

 ブラジルの事情はより複雑だ。昨年8月に誕生したテメル政権も同じく経済を最優先にした改革に取り組むが、テメル大統領は国民に人気がない。閣内に汚職スキャンダルも抱えており、国民の支持を得られないまま年金削減など痛みを伴う改革を本当に実行できるのか不透明だ。

 アルゼンチン、ブラジルとも自由貿易への復帰を掲げており、現在は機能していない南米の関税同盟メルコスル(南部共同市場)を活性化させようと動いている。反米左派であるベネズエラの加盟資格を停止し、政治的なイデオロギーによるつながりではなく、本来の趣旨である経済共同体へと戻そうとしている。さらにマクリ大統領は将来的にメキシコやチリなどが加盟する中南米の経済共同体「太平洋同盟」とメルコスルを結びつけ、中南米に一大経済圏を誕生させる構想を持つ。

 非常に興味深いが、現時点では時期尚早だと言わざるを得ない。アルゼンチン、ブラジルともまずは自国内の改革を断行し、経済を強くする必要がある。太平洋同盟の加盟国は長い時間をかけて改革に取り組んでおり、現時点ではメルコスルとの差は大きい。

 私は今後10年の南米経済の行方には楽観的だ。多くの国で汚職撲滅と透明性向上に向けた取り組みが進み、政府はポピュリズム(大衆迎合策)のための財政支出を見直そうとしている。政治的なイデオロギーよりも経済を優先する動きは近年なかったものだ。資源ブームが終息してからも、海外企業のこの地域への投資意欲は残っている。この期待に応えられるかどうかは、政治にかかっている。(談)

 Michael Shifter 米ハーバード大院修了。ジョージタウン大教授などを経て、10年より米最大の中南米専門シンクタンク代表として活動を続ける。61歳。

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■長期的展望 必要に

 2000年代初頭、新興国ブームや資源高で高成長を謳歌する南米諸国へ世界から投資が相次いだ。しかし近年の景気減速で痛手を負った企業も多く、足元の政策転換へも懐疑的な見方が根強く残る。アルゼンチン、ブラジルとも改革は前進しつつあるが、複雑な税制や過度な労働者保護策など課題はなお多い。将来の選挙の際、国民からの反発を覚悟のうえで、ばらまき的な政策とは一線を画し続けられるか。長期の展望下で改革に取り組む覚悟が問われている。(国際アジア部 外山尚之)



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