グローバル・オピニオン 英、単一市場残留へ譲歩を ニッ ク・クレッグ氏 前英副首相 2017/1/9 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバル・オピニオン 英、単一市場残留へ譲歩を ニック・クレッグ氏 前英副首相」です。





 英国の欧州連合(EU)からの離脱をめぐり、英国政府と他のEU加盟国はEUの単一市場にアクセスできなくなる「強硬離脱」か、「離脱なし」のいずれかにカジを切ろうとしているようにみえる。

ニック・クレッグ氏

 メイ英首相に助言するならば、欧州全体での解決策をあきらめるな、ということだ。欧州全体で移民の緊急受け入れ制限措置を導入するとともに、英国は離脱後もEUの単一市場に参加することにセットで合意する案だ。

 独仏伊には、中東・北アフリカからの移民・難民への懸念があり、英国との協力は可能だ。まずEU域外の国境管理を強化する。次に移民・難民が大量に入ってきた国が一時的に(単一市場の柱である)「人の移動の自由」を停止し、移民の受け入れ制限をできるようにする。

 同時に、英国が単一市場の一部にとどまりたいならば、単一市場のルールや司法判断を受け入れなくてはならない。妥協案の半分はEUが譲歩し、残りの半分は英国が譲歩する内容で、実行可能だ。

 だが、メイ政権は強硬離脱か、ばかげた離脱の方法をめざそうとしている。「製薬業界は(単一市場に)特権的にアクセスできるが、電機はできない」といったやり方なら経済を複雑にさせる。さらに問題なのは、メイ首相が(EUの)司法裁判所のいかなる判断にも従いたくないと、妥協を許さない態度を貫いていることだ。

 英国内の移民の問題が、EUと関係のない「統合の不足」を理由に起きているのは皮肉だ。例えば、イングランド北西部のパキスタン系英国人は英語を話せないのに、英国の査証を持つ。もしも互いに共通の言語で話ができなければ、社会が統合されるとは思えない。言葉はとても重要だ。

 大衆迎合主義(ポピュリズム)に対抗するには3つのことが必要だ。第1に、ポピュリストに失敗させることだ。大衆迎合の政治家にとって最悪なのは、実際に責任を引き受け、様々な代替案から物事を決めねばならないことだ。

 第2に、主流派の政治家は自由民主主義の価値をあきらめてはいけない。第3に、最近の経済環境になぜ市民が怒り、幻滅を抱いているかを真剣に考える必要がある。賃金はおそらく前世紀のいつの時代よりも長く停滞している。賃金制度や労働法、税制を通じて解決策を見つけないと、ポピュリストが得をする。

 2017年も極端な主張をする政治勢力がますます強くなるリスクがある。しかし、自由民主主義の価値観が衰退し、権威主義者の手にゆだねられることを若者は望んでいない。若い世代は直感的に国際派であり、寛容で、異なる文化に慣れ親しみ、新たなテクノロジーに強い。次世代を混乱させてはならない。(談)

 Nick Clegg 2007年に自由民主党の党首に就任し、10年にキャメロン連立政権に副首相として入閣したが、15年の総選挙で惨敗し党首を辞任。50歳。

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■いいとこ取りに警鐘

 クレッグ氏が提案する緊急時の移民受け入れ制限案は昨年、キャメロン前首相が他のEU首脳に却下されたものだ。それを承知でクレッグ氏が再び持ち出すのはなぜか。ポイントは、英国がEUの単一市場のルールを全面的に受け入れるという譲歩だ。クレッグ氏は大陸欧州で学び、欧州議会議員も務めた英政界きってのEU通。だからこそEUと英国が折り合えるギリギリの部分を瀬踏みしたといえる。裏返せば、いまのメイ政権の「いいとこ取り」路線に厳しい警鐘を鳴らしている。(編集委員 瀬能繁)



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