グローバル オピニオン 似て非なるイラン・ギリシャ 仏国際関係研究所特別顧問 ドミニク・モイジ氏 2015/08/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバル オピニオン 似て非なるイラン・ギリシャ 仏国際関係研究所特別顧問 ドミニク・モイジ氏」です。





 7月はギリシャ危機とイラン核問題について合意が成立した。これが重要な成果であることに疑問の余地はない。

 二つの合意の数少ない共通点の一つは、妥結しなければ事態は一段と悪化するという強力な外部要因に迫られた結果だということである。ギリシャの場合、交渉の促進要因となったのは、ギリシャがロシアに接近するとか、欧州に大量の出稼ぎ労働者を送り込むといった懸念である。一方イランの場合は、過激派組織「イスラム国」(IS)の進撃の方が、イランの核武装という中期的な脅威より差し迫っているという認識だった。

 もう一つの共通点は不完全な合意だということである。どちらも問題解決には至らず、時間稼ぎにすぎない。その結果、どちらも合意というよりは賭けに近いものになっている。ギリシャが約束したきわめて困難な構造改革に着手し、財政を維持できるか、イランが核開発の野心を再び示すかどうか、という賭けだ。

 国際交渉で難しいのは、当事者間で適切な均衡点、すなわち「公平な妥協」点を見いだすことである。この点で、今回の二つの交渉の結果は、正反対といわないまでも大幅にちがう。ギリシャは弱い立場で、同じユーロ加盟国から度を越して屈辱的な扱いを受けた。イランも弱い立場だったが、敵対する欧米から新たに正当な扱いを受ける。仲間の方が部外者より手ひどく処遇されたといえる。

 イランとの交渉妥結は、同国が欧米寄りに軸足を移す根本的な変化の表れだと主張する向きもあろう。だがイランの体制は欧米の価値観を共有しておらず、近い将来にそうなる可能性もない。そして中東では「敵の敵」が必ずしも味方でないことはよく知られている。

 ギリシャから引き出した譲歩は多すぎ、イランからは少なすぎたという指摘は正しいが、これは交渉手腕の優劣というよりは、両国の立場の根本的なちがいを反映したものだろう。イランは、あらゆる中東問題の解決にとって次第に必要不可欠な存在となり、かなりの影響力を持つようになった。これに対してギリシャは、いなくなっても困らないと欧州の多くの国が考えているため、何ら影響力を持たない。

 今回の二つの件でおそらく最も重要な相違点は、ギリシャの運命は世界経済と無関係ではないにしても、主に欧州の問題であるのに対し、イランとの合意は中東の力関係から全世界の核拡散防止にいたるまで、幅広い影響をもたらすことである。

 どちらの合意も不完全な時間稼ぎであり、批判論者の懐疑的な見方は強まる一方だ。とはいえどちらの合意も、交渉当事者が到達し得る最善のものだったと考えられる。

((C)Project Syndicate)



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