コンパクトシティを考える(2)住民の合意形成には時間 2018/06/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「コンパクトシティを考える(2)住民の合意形成には時間」です。





都市の縮退化が必要だとしても、具体的にどうすればよいのでしょうか。典型的には、人口が減少する撤退地区の住民に、中心部に移転してもらうケースが考えられます。実際にドイツでは、旧東独の郊外公営住宅とインフラの撤去を決定し、住民を中心部に集団移転させた事例があります。

しかし、集団移転には住民同意に加え、中心部に代替地と住宅を用意し、移転費用を補償する必要があります。地域に愛着を持ち、私有財産の自宅を持つ住民から移転同意を得ることは極めて困難で、旧東独の事例を一般化はできません。財源と人員の不足に悩む自治体が、集団移転に十分な資源を投入できるとも思えません。トップダウン型の移転策が、住民に不安と反発を巻き起こすのは必至であり、典型的な縮退政策はほぼ失敗が見えています。

コンパクト化が困難な理由は他にもあります。土地利用や都市空間は容赦なく市場経済の論理に貫かれます。自治体は都市計画で対抗しますが、戦後の都市計画史が示すように「計画の論理」は「市場の論理」に敗北してきました。郊外の緑豊かな環境で広い住宅に住みたいとの希望、不動産価格上昇への根強い期待、これらを計画で抑え込むのは困難です。厳格な法律をつくっても抜け穴や例外が設けられ、実効性が失われることの繰り返しでした。

経済的利害の相違も、縮退化への不安と反発をかき立てます。都市の中心部へ向けて人・企業・施設を集積させる政策は、周辺部に対し、資産価値の下落、社会資本整備の遅れ、公共交通の利便性低下など、大きな不利益をもたらすと受け取られるでしょう。それが中心部一極集中をもたらす場合には、なおさら反発は大きくなります。

すべての縮退化政策は、こうした市民の不安と反発に真摯に向き合う必要があり、時間をかけて合意形成を図るほかありません。加えて都市のインフラや建築物の更新には大変長い時間がかかります。現時点で決めても、それが形になるのは30年後でしょう。その頃には人口減少が相当進行しています。まちづくりは長期課題だからこそ先送りではなく、いま方向性を定めることが肝要です。



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