サイト上のプライバシー「消して!」 削除どこまで、運営者悩む 表現の自由と綱引き 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「サイト上のプライバシー「消して!」 削除どこまで、運営者悩む 表現の自由と綱引き」です。





 自分の名前をインターネットで検索したら、隠したい過去について書かれたサイトの情報が提示された――。誰でも検索結果を消してほしいと思うだろう。だが、検索事業者に簡単に削除してもらえるとは限らない。安易に応じれば憲法上の「表現の自由」を侵しかねないためだ。

 ヤフーは昨年3月、削除対応の基準を公表。検索結果について、プライバシー侵害かどうかを判断する要素などを例示した。以前も自社の判断で削除してきたが、今回は有識者会議を開き基準を明文化した。「社会的関心の高まりに対応した」とネットセーフティ企画部の吉川徳明マネージャー。だが公表後も運用は手探りが続いている。

 最も対応が難しい削除依頼は犯罪歴に関するもの。同社の基準は「過去の違法行為の情報は公益性が高い」と分類し慎重に構える。だが依頼者側の削除への要望は強い。

 吉川氏は「迷う案件は社内で合議する」と話す。考慮要素は「犯罪の内容、時間の経過、立場」など。だが「とらえ方は人により異なり、合意を形成しづらい」(吉川氏)。判断が難しい場合は削除しないという。

 プライバシー権は秘密をみだりに公開されず自己の情報を制御できる権利だ。判例の蓄積で認められている。憲法の幸福追求権などが根拠とされる。何を隠したいかは人それぞれで一律の判断にそぐわない面も大きい。

 検索事業者が自主的に削除しない場合、依頼者は地方裁判所に削除を求める仮処分を申し立てることが多い。グーグルやヤフーは日本各地の裁判所で対応をしている。

 2014年10月、東京地裁がグーグルに対し削除を命じる決定を出したことを皮切りに、犯罪から一定期間経過したことなどを理由に裁判所が削除を求める案件が相次ぐようになった。だが犯罪歴を消すことについては検索事業者も慎重で、争いは長引くこともある。

 係争では「検索結果画面の情報の、どの部分まで削除すべきか」が新たな争点となっている。検索結果は当該サイトに接続する「リンク(タイトル)」や「スニペット」と呼ぶ数行のサイト内容の抜粋で構成される。

 ヤフーは「スニペットが権利侵害しているなら、そこだけを削除すればいい」と主張する。リンクまで消すと侵害情報だけでなく、ページ内の適法な情報にもたどり着けなくなってしまうことを懸念するためだ。表現の自由や知る権利を守るためには、対症療法にならざるを得ないという。

 一方、依頼者の代理人を務める神田知宏弁護士は「スニペットだけが消えた状態はむしろ目を引く。リンクをクリックすればすぐページが読めるようでは、削除の意味がない」と批判する。

 さいたま地裁が今年2月に出した決定は「忘れられる権利」に言及し、犯罪歴の削除を認めた。欧州ではネット上の個人情報を消す際の根拠とされる権利だ。ただ、新しい権利のため「内容や必要性も含め議論を醸成すべきだ」と神田弁護士は指摘する。

 検索事業者と依頼者の表現の自由とプライバシー権をめぐる綱引きは、まだ一例も最高裁での決着をみていない。明確な法的規範がないなか、事業者は「難しいものはその都度、裁判所の判断に委ねていく」という対応を続けていくことになりそうだ。

(児玉小百合)



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