サウジ改革の行方(下)危うい愛国心醸成強硬路線はトランプ氏頼み 201 7/9/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「サウジ改革の行方(下)危うい愛国心醸成強硬路線はトランプ氏頼み」です。





 「サウジのムハンマド皇太子がイスラエルのネタニヤフ首相と極秘に会談」。今月初め、ネットにこんなニュースが流れた。サウジ政府は偽ニュースだとして否定したが、両国の関係者は「ありうべし」と受け止めた。

 イスラムの盟主であるサウジはイスラエルのパレスチナ占領を強く批判してきた。だがイスラム過激派やイランという共通の敵を抱え、急接近した。米国の影響力が低下する中東でサウジ外交は積極化し、自己主張を強める。イスラエルとの「蜜月」はひとつの例証だ。

 2020年には20カ国・地域(G20)首脳会議を主催する。熱心な誘致活動があったとG20関係者は明かす。

 ジッダで5日開いたサッカーのワールドカップ(W杯)予選でサウジは日本を1―0で破った。観戦者に無料で国旗を配り雰囲気で圧倒した。

 「イスラム聖地の守護者」を自任するサウジは、もともと国家意識が薄い。だが、国民の連帯を演出しようと、05年から9月23日を「国民の日」と定め、愛国意識を盛り上げるようになった。

 愛国主義への傾斜は近隣国との対立と背中合わせで進む。16年に断交したイランとは対立を深め地域を不安定にした。

 皇太子がカタール首長と今月、交わした電話協議は「1時間で終わった雪解け」だった。6月に断交した両首脳による初の接触だったが、サウジは直後に「あらゆる協議を中断」と発表した。

 電話をかけたのはカタール側とみられるが、同国メディアが「米の仲介で協議が実現した」とだけ報じたことにサウジ皇太子が激怒、態度をさらに硬化させた。

 イラン保守派の政治評論家アミル・モヘビアン氏はサウジの外交路線が戦略性を欠いていると指摘する。「友人は千人いても足りないが、敵は1人いれば十分ということわざがある。国内改革という難しい作業があるのに敵をたくさんつくるのは理屈に合わない」という。

 皇太子の強硬路線を支えているのは、初の外遊先に選び、露骨な親サウジ路線を表明したトランプ米大統領の存在だ。

 だが、トランプ氏の立場は、米国の伝統的な中東政策に近いティラーソン国務長官やマティス国防長官と微妙に食い違う。サウジが頼みとするのはトランプ氏の娘婿のクシュナー大統領上級顧問で、皇太子は8月もジッダで歓待した。

 「トランプ流の政策がいつまでも続くと考えるのは危うい」。リヤドに駐在する投資顧問幹部は、サウジの政府関係者にこんな助言をしている。

 今年、20代の若さで駐米大使に就いた皇太子の弟のハリド王子はロッキード・マーチンやボーイングなど米の軍需企業をまわる。狙いはF35など最新鋭武器を売ってもらうことだ。トランプ氏は訪問で多額の武器売却を約束したがF35は含まない。「外交や国防の専門家がサウジを完全には信用していない証拠だろう」と投資顧問幹部はみる。

 これまで極端に変化を嫌った保守的な国が試し始めた新たな外交の行方はみえない。だが、そのリスクは過小にみられている可能性がある。

 岐部秀光が担当しました。



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