シンゾウとの距離 世界のリーダー(1)ドナルド・トランプ 打算入り交じる蜜月 2018/1/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「シンゾウとの距離 世界のリーダー(1)ドナルド・トランプ 打算入り交じる蜜月」です。





 「我々には様々なシミュレーションがある」。本題を切り出したのは米大統領、ドナルド・トランプ(71)だった。昨年11月5日の埼玉県川越市のゴルフ場「霞ケ関カンツリー倶楽部」。トランプは首相、安倍晋三(63)とのプレーの合間に歩きながら北朝鮮への軍事的な選択肢を含めた行動計画を明かした。

シンゾウ・ドナルド関係はまもなく2年目に入る=ゲッティ共同

 「率直に聞かせてくれてありがとう」と伝えた安倍にトランプは話を続けた。「北朝鮮情勢のこともある。米国からの防衛装備品の購入を増やしてほしい。現状維持ではなく、さらに、だ」。翌6日の首脳会談後の記者会見で「首相はこれから様々な防衛装備品を米国から購入することになる」と明言した。

2人の電話17回

 「ゴルフは休日の趣味と思われがちだが、私たちは、実は仕事の話ばかりしていた」。トランプは同じ日の夕食会で上機嫌にあいさつした。シンゾウ、ドナルドとファーストネームで呼び合う2人は、過去の日米首脳と比較しても、蜜月ぶりが目立つ。

 日米同盟を基軸に外交方針を組み立てる日本にとって米大統領との関係はその核心だ。こちらの意見を通すにはまずは何でも話せる関係を作らないといけない――。安倍が一昨年11月の大統領選直後にほかの首脳に先駆けて就任前のトランプと会ったのも、そんな冷静な計算からだ。

 トランプの対人関係は明快だ。「私に良くしてくれる人にはきちんと対応するが、扱いがひどかったり、私を利用しようとしたりする人間には激しく反撃する」

 昨年10月末のホワイトハウスの大統領執務室。初の日本訪問を控えて安倍と電話していたトランプは「シンゾウが言うなら考えてみる」と応じた。安倍はフィリピンで11月中旬に開く東アジア首脳会議(EAS)の意義を訴えていた。

 日中韓やベトナムを含め12日間の長丁場となるアジア歴訪で、最終日にあるEASへの出席を当初、見送るつもりだったトランプ。出発直前、一転して出席を決めた。当日の会議の開始時間が大幅に遅れたことで結果的には欠席したが、安倍の助言には耳を傾ける。

 トランプのホワイトハウス入りから1年。2人の電話は表になっているだけで17回を数え、安倍にとって前大統領バラク・オバマ(56)との4年間の回数を超えた。トランプと安倍の相性が合うのは間違いない。

 その逆にトランプは自らに寄り添わない首脳には厳しい態度に出る。就任直後、オーストラリア首相のマルコム・ターンブル(63)と難民受け入れ問題を巡って対立。「不愉快だ」と一方的に電話を切った。

政治は貸し借り

 政治が「貸し」「借り」で成り立つ以上、そこには相性や友情だけでなく、打算も混在する。問題は首脳間の相性や友情、打算が政策まで変えるのかどうか。

 1985年8月15日に靖国神社を公式参拝した当時の首相、中曽根康弘(99)は翌年の参拝を見送った。参拝した場合に良好な関係にあった中国共産党総書記、胡耀邦が国内での権力闘争で足を引っ張られかねないと懸念したとみられた。

 今は蜜月のトランプと安倍の関係もこうした局面が訪れる可能性がある。2018年11月の米中間選挙でトランプ率いる共和党が敗北、20年大統領選の再選に黄色信号がともるとき、安倍は試される。

 核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への対応など日本の安全保障政策は米国に依存する。一方でトランプが求める防衛装備品の買い増しや、米側の一部に根強い日米の自由貿易協定(FTA)の締結は簡単にのめない。

 米中間選挙の情勢や結果次第でトランプが日本側が警戒するFTAを迫る展開もあり得る。友情と打算が入り交じるトランプと安倍の蜜月関係は2年目を迎える。

=敬称略

(ワシントン=永沢毅)

 首脳同士と国家間の関係は連動する。北朝鮮をはじめ激変する国際情勢を見据え、安倍晋三首相と世界のリーダーとの関係を描く。



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