スクランブル 中国株の小康、油断大敵 景気対策のいびつさ再び 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合1面にある「スクランブル 中国株の小康、油断大敵 景気対策のいびつさ再び」です。





 東京株式市場が良くも悪くも「安定」している要因の一つに、中国市場の落ち着きがある。約3兆元(約50兆円)の経済対策などで上海株は底入れモードだ。だが油断は大敵。景気後退リスクは遠のいたように見えるが、決して楽観できない。

 「日本独自の株価材料が乏しく、海外勢の大半は模様眺め」(シティグループ証券のアレックス・ミラー氏)。こんな声が聞かれた28日、目を引いたのが3%高となった新日鉄住金など鉄鋼株の堅調ぶりだった。

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 買い材料は中国の鋼材市況の好転だ。先日の全国人民代表大会(全人代)で鉄鋼業の生産能力の削減が決まり、景気対策による需要拡大も期待される。中国勢の安値輸出が止まれば日本勢にはプラスに働く。

 鉄鋼や建機など中国関連株の上昇が目立ち始めたのは、中国の旧正月休み明け(2月15日)以降だ。全人代を前に要人の発言や報道で新たな政策期待が広がり、中国株の小康状態を演出している。

 ここで思い出されるのはリーマン・ショック後の2008年末に決まった4兆元の景気対策だ。結果、投機マネーが乱開発を呼び、中国各地に誰も住まない「鬼城(ゴーストタウン)」を生んだ。

 今回も同じ兆候がある。緩和マネーは不動産に向かい、上海や深圳では不動産価格が急騰中だ。上海市は今月、不動産の取得規制を強化する動きに出た。一方で地方都市では不動産の販売不振が続く。

 景気対策を懐疑的にみる日本企業もある。コマツが25日に上海で開催した中国事業説明会。出席したアナリストの一人は「15年より16年の方が需要環境は悪い」と現地幹部から説明を受けたという。コマツは建機に全地球測位システム(GPS)を取り付け、稼働状況を把握している。がぜん先行きに不安が漂う。

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 中国政府は輸出とインフラ投資中心から消費主体の経済に切り替える方針。だが、生産コストの上昇に耐えかねた広東省は最低賃金の上昇を2年間凍結する方針を打ち出した。給料が上がらず消費を抑えて節約するというデフレにつながる動きが、全土に広がりかねない状況になっている。

 「日本のデフレが起きたのはなぜか」。24日に海南省で開催された経済フォーラムで問われた野村ホールディングスの氏家純一氏はこう答えた。「賃金が下がったから」。中国も急上昇してきた賃金が下落に転じれば、バブル崩壊とデフレに沈んだ日本と同じ道をたどる恐れがある。

 上海総合指数は3000ポイント近辺で一進一退。「景気対策の効果で、夏場にかけて4000ポイントまで上昇する」というSMBC日興証券の肖敏捷氏も、その後は「経済の矛盾が表面化し、株価調整リスクがある」と警戒する。本当に中国でデフレが起きれば、原油や鉄鉱石など国際商品市況を再び冷え込ませ、日本株にも間違いなく波及する。

 この数年で上海総合指数と日経平均株価の連動性は高まった。中国ショックはまた来ると覚悟しておいたほうがいい。(戸田敬久)



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