スクランブル 伸び悩む「解散価値」 PBRでも測れぬ底値 2016/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合1面にある「スクランブル 伸び悩む「解散価値」 PBRでも測れぬ底値」です。





 15日の株式市場では目先の反発を期待した買いが先行した。だが前日までの4日間で日経平均株価が971円も下げたのに、この日の上昇幅はわずか60円。欧州連合(EU)離脱を巡る英国の国民投票が近づき、市場は警戒感を緩めていない。仮に離脱となれば影響は大きく、平時なら下値のメドとされる「企業の解散価値」すらあてにならない可能性がある。

 「割安銘柄はずいぶん増えた。だけど積極的に買いが入る雰囲気はない」(アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之取締役)。様子見気分が市場を覆う最大の要因は、やはり23日の英国民投票。「離脱派が勝ったら株価はどこまで下がるのか」(外資系証券)と市場関係者の悩みは深い。

 多くの投資家は通常、株価を1株純資産で割って求めるPBR(株価純資産倍率)で1倍を下値のメドにする。1倍は株主の持ち分である純資産と株価が同額になる水準で、1倍割れは理論上、会社を買収して解散したほうが株主の得になる。純資産が「解散価値」と呼ばれるゆえんだ。

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 2月中旬の株価下落局面で日経平均はPBR1倍近辺で下げ止まった。今の相場では1万4600円程度が下値のメドになる。

 だが「今はPBRの有効性が下がっている」(大和証券の吉野貴晶チーフクオンツアナリスト)。2001年の米同時テロのような想定外のリスクに見舞われると不安心理が過度に高まるからだ。英のEU離脱問題も前例が乏しい例で市場の悲観が高まりやすい。

 それだけではない。そもそも企業の純資産が急速に伸び悩んでいるのもある。ニッセイ基礎研究所の前山裕亮研究員が試算したところ、金融危機以降に着実に伸びていた日本企業の純資産は、16年3月期に横ばいにとどまった。

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 前期の上場企業の業績は伸び悩んだとはいえ、利益は過去最高水準だった。これまでなら利益剰余金として蓄積され純資産を膨らますのに前期は違った。グラフのように東証株価指数を構成する企業の1株純資産の増減度合いを分解すると要因は明らか。円高で外貨建て資産の評価額が目減りし、利益の蓄積分を帳消しにしたのだ。

 前山氏の分析では「1ドル=100円になれば、それだけで純資産が3~5%減る」。そうなるとPBR1倍に相当する日経平均の水準は500~600円切り下がる。英がEU離脱を決め「安全資産」の円にマネーが向かえば、同氏の分析は現実味を帯びる。

 こうした状況では「純資産を着実に増やす銘柄に投資家の関心が向かう」(岡三証券の阿部健児チーフストラテジスト)。阿部氏は利益を着実に稼ぎ、かつ外貨建て資産の変動の影響が小さい企業、例えばキユーピー、伊藤園などを「防波堤」の役割をする銘柄に挙げる。海外発の嵐がやむまで、業績だけでなく資産価値の面からも内需株優位の状況が続かざるを得ない。

(菊地毅)



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