スクランブル 動くか「100兆円の山」 マイナス金利が迫る活用 2016/02/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合1面にある「スクランブル 動くか「100兆円の山」 マイナス金利が迫る活用」です。





 16日の日経平均株価は続伸した。株式市場は世界金融危機の再来さえ織り込み始めたかのような底知れぬ恐怖からひとまず解放された。そして日銀はこの日、マイナス金利の実際の適用を開始した。手元のキャッシュが減価していく新たな世界の始まりだ。マイナス金利は投資家のみならず、日本企業が長年築き上げてきた「巨大な山」を動かすよう迫っている。

 「先週、トヨタ自動車の種類株をあと10倍買いたかったという会社の記事を読みましたけど、ちょっとヘンですよね? 株主は会社に有効な資金運用を期待しているわけじゃないのに」

 その男性はにこやかな表情でこう話を切り出した。名は丸木強氏。野村証券出身で、村上世彰氏が率いた「村上ファンド」の中核メンバーだった人だ。村上氏の起訴後は、ファンドの代表として投資家への資金返還の実務を取り仕切った。

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 その後は表舞台から一度身を引いたが2012年に自らのファンド、ストラテジックキャピタルを創設。大和冷機工業、日本デジタル研究所、宝印刷……。約100億円の運用資産をキャッシュリッチで業績が安定した割安株に投じる。

 割安株といっても投資する企業は保有する現金からみると飛び抜けている。業務用冷蔵庫大手の大和冷機は時価総額に匹敵する約460億円の現預金(72億円の長期定期預金を含む)を抱える。日デジタルも時価総額に対するネットキャッシュ比率が指折りの高さだ。

 その大和冷機が3月に開く株主総会が近づき、今月1日に丸木氏は年10円の配当を67円に引き上げる株主提案を提出した。

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 創業一族が約4割の株を握るため提案が賛同を得る可能性は低そうだが、丸木氏は株主提案は成人が選挙で投票するのと同じ義務だという。「アジアに出たりシナジーがある調理器具メーカーを買収したり、まずは成長投資にお金を使ってほしい。それでも使い切れない手元資金は株主に配当で返すべきだ」

 日本ではアクティビストによる余剰資金の還元要求はこれまで、特殊な株主による「強欲な要求」として他の投資家たちの賛同を得にくかったのは確か。ましてや企業をや、だ。

 だがマイナス金利という新たな日本の金融環境ではどうだろうか。かつてドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した「スタンプ貨幣」のように、持っているだけでキャッシュの価値は減価していく。「マイナス金利下では多額の余剰金融資産を保有する企業は罪深い存在になる」。みずほ証券の菊地正俊氏はいう。

 機関投資家も株主価値を向上させるために投資先に積極的に「ものを言う」ことが義務づけられた。資金を寝かせたままの企業に何も言わないとマイナス金利下で受託者責任を果たしていないとみられてしまう。

 上場企業がデフレ経済下でバランスシートに積み上げたキャッシュの山は100兆円の大台が迫る。その山の岩盤を形成するキャッシュリッチ企業が変革の波にさらされつつある。マイナス金利は日本の株式市場の風景を一変させる爆発力を秘めている。

(証券部次長 川崎健)



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