スタートアップ大競争 都市は競う(上) 2018/05/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「スタートアップ大競争 都市は競う(上)」です。





電気自動車(EV)やロケットで新境地を切り開いた米国の起業家、イーロン・マスク氏が注目する都市が中東にある。

(画像:昨年、パリに開所したスタートアップ支援施設「ステーションF」)

「石油の次」狙う

「脱石油改革」にまい進するアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。マスク氏は時速千キロメートル超の超高速輸送システム「ハイパーループ」の実証の地の一つに選んだ。

呼び水が2016年にムハンマド首長の肝煎りで生まれた「ドバイ・フューチャー・アクセラレーター」(DFA)だ。新技術に必要な規制緩和や金融支援などを通じ、将来の経済のけん引役になるスタートアップの誘致、育成を狙う。

「イノベーションは競争に勝つカギ。アイデアを持つ者が最大限の力を発揮できる環境を提供する」。DFAを運営するアブドルアジズ・ジャジリ副最高経営責任者(CEO)は語る。

DFA参加企業は112社で4分の3が政府関連組織と事業開始の覚書を交わした。アジア勢も集い、中国のアレスカ・ライフ・テクノロジーズは水や電力の消費量が少ない農業システムを開発中。ドバイは自国発産業の育成、輸出に本気だ。

繊維の英マンチェスター、鉄鋼の米ピッツバーグ――。都市は勃興する産業のゆりかごになり、潮流の変化についていけなければ衰退した。今や新産業の担い手となったスタートアップを呼び込めるかは都市や国家の興亡にかかわる。「鉄は国家なり」から起業を通じた「革新は国家なり」。時代は大きく転回した。

米A・T・カーニーが世界128都市のイノベーションの起こしやすさなど成長性を評価した調査によると、17年の1位はサンフランシスコ、2位がニューヨーク。米国の都市に次いで、前年から10も順位を上げ3位に入ったのがパリだ。

出遅れに危機感

17年夏に市の南東部、セーヌ川近くに世界最大級のスタートアップ育成施設「ステーションF」が開所した。実業家ザビエ・ニエル氏が私財2億5千万ユーロ(約330億円)を投資。エッフェル塔の高さとほぼ同じ全長の巨大な廊下を囲むように企業が入居しカフェや郵便局、シャワーもある。

「この施設がなければ米国に戻って起業していた」。米国出身で難民向けのIT(情報技術)教育プログラムを手がけるビンタ・ジャメさんは語る。毎月の利用料は195ユーロと物価の高いパリでは破格の安さだ。米マイクロソフト、韓国ネイバーなど支援側の大企業も含め約千社が集結。無料プログラムもあり、選ばれた起業家30人は気軽に相談を受けられる。

政府も全面支援の構えだ。「フランスをスタートアップの国にしたい」。マクロン大統領の発言の裏には米国にIT産業で遅れ、隣国ドイツに国内総生産(GDP)で引き離された危機感がある。

仏政府は17年6月、技術革新を促すための100億ユーロ(約1兆3000億円)の基金を発表。自国生まれの企業などを「フレンチテック」とブランド化し、2億ユーロを出す。外国人起業家のビザ発給手続きも簡素にし、優れた才能に門戸を開く。

翻って高齢化が進む日本。スタートアップ支援の機運はあるがライバルに比べ存在感を示せていない。A・T・カーニーの調査では、パリとは対照的に東京は23位と4つも後退した。これ以上遅れるわけにはいかない。



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