セクハラ ゼロへの道(下) 罰則なし、世界に遅れ 2018/06/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「セクハラ ゼロへの道(下) 罰則なし、世界に遅れ」です。





「辞めた方があなたのためですよ」。男性事業主のセクハラに苦しんだ四国在住の30代の女性は、相談に乗ってくれた担当者の言葉が耳を離れない。

(画像:アクセンチュアでは「無意識の偏見」を自覚させる研修を重ねる(東京都港区))

事業主は何年にもわたって複数の女性の体を触り、性的なことをしつこく聞いてきた。厚生労働省が各地に設置する労働局に駆け込み、担当者が再三注意。男女雇用機会均等法で事業主にセクハラ防止措置義務があると行政指導をした。それでも止まらなかった。

「我々には強制力がない」。担当者はさじを投げた。女性は転職先を見つけ退社。「加害者が罰せられないのはおかしい」と憤る。

均等法には限界

「『セクハラ罪』という罪はない」。財務省前事務次官の問題で麻生太郎財務相が発した言葉は、図らずも法の不備を露呈した。均等法は企業など事業主に対してセクハラ対策を義務付けるだけ。行為自体を禁じて罰する規定はない。

刑事罰にあたるケースは限られる。民法の不法行為として裁判で訴えようにも、経済的、心理的なハードルは高い。「法律を新たに定め、セクハラを許さない社会規範を生む時期にきている」。中央大学の山田省三教授は強調する。

政府がまとめた緊急対策。中央省庁の幹部職員の研修義務化を打ち出した。野田聖子女性活躍相が「必要なら検討」とした法整備には踏み込まなかった。

高まる国際圧力

海外では罰則が珍しくない。フランスは1992年にセクハラ罪を規定。2012年改正ではセクハラを「性的な言葉や行為で人の尊厳を侵害して屈辱的な状況をつくるもの」と定め、罰則を「2年以下の拘禁刑または3万ユーロの罰金」などと重くした。英国の「平等法」や米国の「公民権法」もセクハラを取り締まる。

国際労働機関(ILO)も動く。6月8日に閉幕した総会では、19年にもセクハラや暴力を防ぐ条約を制定する方針を決めた。拘束力を持つ初の国際基準となる。だが国内法が未整備の日本は慎重姿勢だ。

国際圧力が国内法の契機となった例は過去にもある。国連は79年、女子差別撤廃条約を採択。日本は批准のため均等法を作った。今回の条約をどう受け止めるか。世界が注視している。

「男性は仕事、女性は家庭」など、日本では男女の役割分担意識が根強い。変わらぬ意識が、セクハラ対策の遅れを生む。

「子育て中の女性に出張は無理」「若い男性は家庭より仕事優先」。コンサルティング大手のアクセンチュアでは、こうした「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」を自覚させる研修を行う。

狙いは先入観の存在を認め、偏りを意識して振る舞うこと。「相手を尊重する心があればハラスメントは起きないはず」。講師役の那須もえマネジング・ディレクターは期待する。

長い歴史が育んだ風土を変えるのは容易ではない。女性だけでなく、男性も含めた多様性への目配りも必要だ。一人ひとりが自覚を持ち、一歩を踏み出すこと。ハラスメントのない世界は、誰もが働きやすい社会となる。

天野由輝子、河野俊、井上孝之、松浦奈美、河内真帆が担当しました。

(電子版「被害者の告白、均等法の限界」▼トップ→経済・政治→経済)

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